第30回 眼科専門医認定試験 一般問題の解説をはじめていきます。
公式解答は発表されておりませんので間違い箇所がございましたらお問い合わせ欄もしくはTwitterのDMより指摘いただければ助かります。
問題については以下↓の眼科学会ホームページよりダウンロード出来ます。
目次
1問:眼瞼・結膜の分泌腺
答えはe
眼瞼の分泌腺についてはこちらを参照ください。
いつも言ってますが、一度は自分で白い紙にシェーマを書き写してみることをお勧めします。
2問:涙液分泌
答えはa, d
涙液分泌は以下の3種類に分けられます。
- 基礎分泌
平常時にも常に涙液が分泌されており、これを基礎分泌と呼びます。
これは交感神経の作用によります。 - 情動性分泌
名前の通り悲しみや感動などに伴う流涙のことです。副交感神経の作用によります。 - 刺激性分泌
三叉神経が眼表面の刺激を感知し、それにより副交感神経を通じて涙液が分泌されます。
三叉神経の受容体は以下の3つが存在します。
3問:シュワルベ線
答えはa
シュワルベ線はちょうどデスメ膜の終端のところにありますので、角膜と線維柱帯の間が正解になります。
4問:虹彩について
答えはd, e
虹彩は実質と、その裏面にある上皮に分けられます。
虹彩上皮は色素上皮で2層にわかれています。
解剖学的には網膜の端がそのまま虹彩上皮に分化しますので上皮は神経外胚葉由来というのも合わせて覚えておいてください。(実質は神経堤由来)。
そして虹彩実質は瞳孔括約筋ですので副交感神経支配、上皮が散大筋なので交感神経支配となります。
血液房水関門を作るのは毛様体筋無色素上皮と虹彩血管内皮細胞です。
5問:垂直眼球運動の中枢
答えはc, e
垂直眼球運動の中枢は内側縦束吻側間質核(riMLF)です。
そして垂直眼球運動の刺激を筋に伝えるのは動眼神経ですのでこれらが答えになります。
6問:調節
答えはd
a. 調節刺激量と反応量は等しくありません。
b. 両眼で測定した時は、通常の調節だけでなく、輻輳性調節がかかりますので片眼より多くなります。斜位近視などを想像するとわかりやすいかと思います。
c. プルキンエサンソン像というのは角膜表面、水晶体表面、水晶体後面から跳ね返った像のことで、角膜表面と水晶体表面からの像は正立で、水晶体後面からの像だけが倒立となります。調節が働くと水晶体からの像は大きさが変わります。
d. 近くを見る時の反応については以下の通りですのでこれが正解です。
- まずはじめに見ようとする物体が近くに来ると、像はぼやけて中心窩からずれます。
- このずれに対してまずはじめに輻輳が起こります。
- そして像のぼやけに対してピント調節が起こり、それに付随して縮瞳が誘発されます。
e. 調節時は水晶体表面の変化が大きいです。
7問:プリズム効果
答えはc
プレンティスの法則より1Dのレンズの中心から1cm上方を視線が通る時、垂直方向のプリズム効果は1Δとなります。
ですので5Dでは5Δとなります。
8問:基底膜
答えはc
基底膜というのは基本的に上皮細胞や内皮細胞が持つものです。
ですので仲間外れは角膜実質細胞になります。
9問:眼圧について
答えはc
a. 角膜が薄いと、眼圧測定時に凹みやすいので低く測定されます。
b. 全身麻酔では一般的に眼圧は下がります。
c. 仰臥位では静脈還流圧が上昇し、それに伴い上強膜静脈圧が上昇して眼圧があがります。逆立ちやヨガのポーズなどではさらなる眼圧上昇を認める事があり要注意です。
d. 緑内障眼では日内変動が大きいと言われます。
e. シュレム管経路(主経路)と経ぶどう膜強膜経路(副経路)は9:1です。
10問:視神経管
答えはe
これは覚えるしかありません。
視神経管だけでなく上眼窩裂を形成する骨や、そこを通る神経なども合わせて覚えておくと良いと思います。
11問目:網膜の解剖
答えはb
アマクリン細胞と神経節細胞のシナプス結合があるのは内網状層になります。
基本的に細胞体が存在するところは、細胞体が顆粒のように見えるので顆粒層と呼ばれます。
内顆粒層には双極細胞などの細胞体がありますし、外顆粒層には視細胞の細胞体があります。
細胞体から伸びる線維が通る層は網のように見えるので網状層と呼ばれます。
内網状層では双極細胞やアマクリン細胞と神経節細胞がシナプス結合していますし、外網状層では視細胞と双極細胞がシナプス結合しています。
12問:視力検査
答えはc
最小分離閾というのは2点または2本の線が分離しているかを見分けられるかどうかを見るものです。
ランドルト環の開いている所がわかるかどうかというのが、この最小分離閾となります。
副尺視力というのは直線のずれがあるかを見分ける能力で、最小視認域というのは点や線があるかどうかを認識できる能力です。
最小視認域を測定する検査としては、森実式ドットカードが有名でうさぎのイラストの眼の大きさが違う指標を見てもらって、眼があるかどうかを識別できるかで視力測定します。
だいたい2歳くらいからの視力検査に使えます。3歳頃からはランドルト環視力ができはじめます。
OKNは視運動性眼振といって、電車が走っているのを見ている時などに見られる眼振です。縞々が回るドラムを見せたりすることで誘発出来て、縞々の幅を調節することで視力を推定できます。
VEPは市松模様を見ながら脳波を取る検査で、模様のサイズを変えて脳波を見ることでどのサイズくらいまで見えているかを推定できます。
OKNやVEPは1歳未満の乳児の視力を推定するのに用いられる検査です。
13問:二重焦点眼鏡の明視域
答えはe
遠用部は完全強制ですので無限遠にピントがあっています。そして調節力が1Dあるので、調節により無限遠〜1mまでを見ることができます。
近用部は完全強制に+1D追加されているため、1mの位置にピントが合っています。そこからさらに1D調節できるので、近用部では1m〜50cmまで見ることができます。
以上のことより明視出来ないのは50cmより近方になります。
14問:静的視野検査について
答えはb
はじめの頃は閾値という言葉がどういう意味で使われているかわからなかったのですが、閾値が高い=明るい光でなければ見えない=網膜感度が悪いと理解すると問題も解きやすいと思います。
閾値が高い部位は変動が大きいのでbが誤りです。
偽陰性応答が多いと、明るい光でも見えないと判定されるので閾値が上昇します。
逆に偽陽性応答が多いと、光っていなくても光ったと認識したということなので閾値は低下します。
15問:乳頭周囲網膜神経線維層厚
答えはb, e
乳頭周囲網膜神経線維層(cpRNFL)の厚さの評価は、緑内障におけるNFLD早期発見に有用です。
測定結果に影響を与える因子としては近視やセグメンテーションエラーなどが挙げられます。
近視の患者では、乳頭が傾斜していたり、乳頭周囲網脈絡膜萎縮があったり、そもそもRNFLが元々薄かったりするので結果の解釈に注意点が必要です。
また白内障などの中間透光体の混濁があり、シグナル強度低下があるとセグメンテーションエラーのもとになります。
16問:カッパ(κ)角異常
答えはa
カッパ角はガンマ角、ラムダ角とほぼ同義と考えて良いと思います(厳密には違いますが)。
そしてこれらの異常をきたすのは黄斑偏位と覚えておくと良いです。
未熟児網膜症やFEVRなどで、黄斑が耳側に引っ張られて偏位すると、黄斑の位置がズレることで見かけ状外斜視に見えます。
しかしキチンと中心窩で見ているのでカバーアンカバーをしても眼位は変化しません。これをカッパ角異常やガンマ角異常と呼びます。
黄斑が耳側に偏位して、見かけ状外斜視となった場合を特に陽性ガンマ角と呼びます。
偏心固視の場合では、黄斑と違うところで固視しており、黄斑がずれた場合と同様に見かけ状は斜視があるけれど、カバーアンカバーをしても眼位がかわらないという状況になります。
しかし、カッパ角は定義上、瞳孔中心線と視軸のなす角度のことを示しており、視軸の定義は中心窩と固視点を結ぶ線となっています。
ですので黄斑がズレた場合のみをカッパ角異常と呼ぶのかな?と思っています。
少し自信が無いので、ご存知の先生はご教示頂けると助かります。
17問:疾患と所見の組み合わせ
答えはb, e
a. 瞳孔膜遺残は特に症状ありません。
b. 眼皮膚白子症では黄斑低形成や眼振などを合併します。
c. ぶどう膜欠損(コロボーマ)は下方が好発です。これは胎生裂の閉鎖不全が原因ですが、胎生裂は最後に下方が閉じます。
d. マルファンの水晶体偏位は上方への変異が多く、ホモシスチン尿症では下方に偏位が多いです。
e. スティックラー症候群は裂孔原性網膜剥離を合併します。
18問:眼底自発蛍光
答えはc
自発蛍光では、網膜色素上皮に溜まったリポフスチンが光って見えます。
つまり、リポフスチンが過剰に沈着するStargardt病のような疾患では全体が過蛍光になりますし、網膜色素上皮裂孔では、穴の中は自発蛍光は低蛍光となります。
網膜色素上皮に異常をきたさない疾患は基本的に自発蛍光で異常がありません。
選択肢ではcの網膜中心動脈閉塞症が答えになります。
網膜は内層が網膜血管、外層が脈絡膜から栄養を受けています。
CRAOでは網膜血管の血流が途絶してしまうので、網膜内層に虚血が起こり浮腫がでます。
網膜色素上皮は特に関係ありません。
19問:細隙灯顕微鏡の観察法
答えはc
強膜散乱法はスクレラルスキャッタリング法ともいい、角膜輪部からスリット光を斜めに入れることで、角膜内の混濁や沈着を観察しやすい方法です。
特にアカントアメーバの放射状角膜炎を見るときなどに使われます。
20問:視覚障害者の誘導法
答えはa
杖を持っている反対側に立つのが正しいです。
これは類題が第33回の専門医試験にも出されていましたね。
21問:人を対象とする医学系研究に関する倫理指針
答えはeのみ?
二つ選べですが答えはeのみなように思います。
a. 人を対象とする医学系研究に含みます。
b. 精神的な負担も侵襲に含みます。
c. 侵襲を与える場合にはモニタリングが必要です。
d. インフォームドアセントは特に小児に対して使われることが多い概念です。未成年の場合インフォームドコンセントは保護者から取得すれば良いですが、患者本人の納得も必要であるとの考えから、小児患者への説明と同意のことをインフォームドアセントと呼びます。
e. 問題文の通りです。
22問:視覚障害認定
答えはc, d
視覚障害認定について問われやすいものとしては、視力障害と視野障害がそれぞれ単独では何級まであるか、一番低い等級の基準の内容は問われやすいので確実に覚えておいてください。
- 視覚障害の等級は1〜6級
- 6級の基準:良い方の眼の視力が0.3以上0.6以下かつ、他方の視力が0.02以下
- 視野障害の認定等級は2〜5級
- 5級の基準:両眼の視野が2分の1以上欠損
- 等級認定は専門医ではなく、指定医です。
詳しい基準については障害者認定についてまとめた記事を参照ください。
23問:ラテックスアレルギー
答えはb, c
その他にはバナナ,アボカド,桃などが関連すると言われます。
24問:全層角膜移植のドナー
答えはa
角膜移植のドナーになり得るのとなり得ない条件は頻出なので必ず覚えておいてください。
まずドナーになれない条件として
- 原因不明の死
- 全身性の活動性感染症
- HIV抗体, HTLV-1抗体, HBs抗体, HCV抗体などが陽性
- クロイツフェルト・ヤコブ病およびその疑い、亜急性硬化性全脳炎、進行性多巣性白質脳症の遅発性ウイルス感染症、活動性ウイルス脳炎、原因不明の脳炎、進行性脳症、ライ(Reye)症候群、原因不明の中枢神経系疾患
- 眼内悪性腫瘍、白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫などの悪性リンパ腫
以下の疾患はドナーになることは出来ますが医師に当該情報を提供する必要があります。ここの疾患がドナーになれるかどうか問われることが多いので特に重要です。
- アルツハイマー病(クロイツフェルトヤコブ病との鑑別が必要なため)
- 屈折矯正手術既往眼
- 内眼手術既往眼
- 虹彩炎などの内因性眼疾患
- 梅毒反応陽性(陽性でも3日以上4℃で保存されたものならOK)
25問:遺伝学的検査
答えはc
網膜芽細胞腫には孤発例と遺伝性のものがあり、両眼性のものはほとんどが、癌抑制遺伝子であるRb遺伝子異常を遺伝したものです。
Rb遺伝子は遺伝子検査が算定できます。
26問:IgG4関連眼疾患
答えはb, c
IgG4関連疾患では眼科領域以外にも膵炎や腎障害など全身に病変を生じ、ステロイド治療が適応になります。
眼科領域では涙腺炎がよく知られていますが、それ以外でも三叉神経腫大、外眼筋炎、視神経症、肥厚性強膜炎などを合併します。
IgG4関連疾患には様々な診断基準がありますが、基本的にはIgG4高値だけでなく、特徴的な臨床所見であったり、生検でIgG4陽性細胞浸潤を認める必要があります。
参考に涙腺病変の診断基準を載せておきます。
<IgG4関連涙腺・眼窩及び唾液腺病変の診断基準>
Definiteを対象とする。
A.診断項目
1.涙腺・耳下腺・顎下腺の持続性(3か月以上)、対称性に2ペア以上の腫脹を認める。
2.血液学的に高IgG4 血症(135mg/dL以上)を認める。
3.涙腺・唾液腺組織に著明なIgG4陽性形質細胞浸潤(強拡大5視野でIgG4+/IgG+が50%以上)を認める。
B.鑑別疾患
シェーグレン症候群、サルコイドーシス、キャッスルマン病、多発血管炎性肉芽腫症、悪性リンパ腫、癌などを除外する。
<診断のカテゴリー>
Definite:
①A1+A2+Bを満たすもの
②A1+A3+Bを満たすもの
27問:眼球偏位の方向と疾患の組合せ
答えはe
a. 眼科底骨折で下直筋が骨折部に挟まると、上転障害をきたし下方に偏位します。上方偏位はしませんので誤りです。
b. 上顎洞癌では下方から眼球を圧迫するので上方偏位が起こります。
c. 篩骨洞嚢腫では眼球の後方が圧迫されることが多いのでで外方偏位はしません。
d. 涙囊は内下方にあるので腫脹すると反対の外上方へと偏位します。
e. 涙腺は外上方にあるので腫瘍では反対の内下方へと変異しますのでこれが正解です。
28問:疾患と原因菌の組み合わせ
答えはa, d
角膜移植後の真菌性角膜炎の主な起因菌はcandida albicansなどの酵母菌で、農作業中の角膜外傷の起因菌はfusasiumなどの糸状菌です。
涙小管炎の起因菌はactinomycesなどの放線菌です。
成人の涙囊炎の起因菌はstaphylococcus aureus(黄色ブドウ球菌)やレンサ球菌などです。しばしばMRSAが検出されるので要注意です。
また、カタル性周辺部角膜浸潤の原因も同じく黄色ブドウ球菌です。
これは菌自体が原因でなく、黄色ぶどう球菌が出す毒素に対するアレルギー反応によって起こります。
29問:涙道の解剖
答えはd
a. 涙囊は骨性鼻涙管に連続しています。
b. 総涙小管ではなく、上下の涙小管の周りには眼輪筋やHorner筋があり、これらの筋の収縮で涙を涙囊に送り込んでいます。
c. 内総涙点は涙囊体部に開口しています。
d. 問題文の通りです。
e. 上下の涙小管水平部は総涙小管になり、総涙小管が涙囊に連続しています。
涙道の解剖についてはこちらのまとめを参照ください。
30問:瞬目テスト
答えはb, d
眼瞼けいれんというのは、眼輪筋が過度に反応してしまうことによって眼を閉じてしまう疾患です。それに対して眼瞼ミオキミアは瞼がピクピクするような症状です。
眼瞼けいれんは名前の響き的にはピクピク痙攣を起こしてそうですが、違うので注意してください。
これらの鑑別に瞬目テストが使われます。
詳しくはこちらの記事を参照ください。
31問:上眼瞼の解剖
答えはc
ミュラー筋は交感神経支配でホルネル症候群での眼瞼下垂の原因となります。
上眼瞼の解剖については頻出ですし、白い紙に自分で書けるくらいまで何度も書き写す練習をしておくと良いと思います。
32問:イチゴ状血管腫
答えはb
イチゴ状血管腫は典型的には、生後直後は生後数週間で赤いアザのようなものが出てきます。一度悪化傾向となるものの、学童期頃にかけて自然消退します。
イチゴ状血管腫瘍は「血管奇形」ではなく「血管腫」に分類されます。
どちらも血管の塊ができることでアザのように見えますが、血管内皮細胞の増殖があるものを血管腫と呼びます。
それに対して血管内皮細胞の増殖が無く、血管が異常に集合しているものを血管奇形と呼びます。
基本的に経過観察ですが、大きなもので形態覚遮断弱視の原因となりそうな場合には積極的に治療や弱視管理をします。
治療にはβブロッカーの有用性が報告されています。
またSturge-Weber症候群との鑑別も要します。
選択肢は全て重要なのできちんと覚えておいてください。
33問:アレルギー性結膜疾患
答えはb, c
a. 偽膜を生じるのはアデノウイルスなどのウイルス性結膜炎やstevens johnson症候群などです。
b. 結膜充血は起こします。
c. 春季カタルでは、炎症細胞の浸潤による白色の隆起した病変を輪部に伴うことがあり、trantas斑と呼ばれます。
角膜輪部に腫脹を来す疾患として覚えておくべきなのは、この春季カタルとアカントアメーバです。
アカントアメーバでも輪部腫脹が特徴的な所見の一つですので覚えておいてください。
d. アレルギー性結膜炎では輪部腫脹はありません。
e. シールド潰瘍は春季カタルの特徴的な所見です。
巨大乳頭結膜炎はコンタクトユーザーに多く、コンタクトがずれるというのが典型的な症状です。
34問:薬剤耐性菌
答えはa, b, c
bの黄色ブドウ球菌や、cの表皮ブドウ球菌はそれぞれMRSAやMRSEといった耐性菌が有名です。
これらは基本的には抗MRSA薬と呼ばれるバンコマイシンなどの薬でないと効きません。
MRSAにも2種類あって、院内感染型と市中感染型があります。
病院で抗菌薬が色々と投与されることで耐性を獲得したMRSAは院内感染型と呼ばれて抗MRSA薬しか効きません。
一方で市中感染型と呼ばれるものは上記のような背景の無い健康成人でも保菌してしまいます。市中感染型では抗MRSA薬だけでなくミノマイシンや、バクタなどが効きます。
コリネバクテリウムも皮膚の常在菌の一つですが、キノロン点眼の濫用によりキノロン耐性のものが報告されています。
dのp.acnesも結膜嚢から検出されるものの眼科での耐性菌の報告は上記と比べて稀ですので答えに選びませんでした。
痤瘡の原因として有名で、治療のためにマクロライドやキノロンが長期投与されることで耐性菌の報告が皮膚科からはありました。
eの緑膿菌は結膜嚢からの検出自体は稀ですので誤りです。
緑膿菌はそもそも抗菌薬が効きにくい菌で、多剤耐性緑膿菌というのも内科領域では問題となっていますが、眼科では頻度は低いです。
35問:緑膿菌による角膜感染症
答えはb
a. 緑膿菌による角膜感染はコンタクトレンズ関連のことが多いです。
b. 緑膿菌は菌自体による角膜炎症だけでなく、菌の外毒素(エンドトキシン)による角膜炎症という2種類の機序があります。ですので急速に角膜融解が進み、輪状潰瘍を形成します。
c. 緑膿菌に有効な抗菌薬はニューキノロン系やアミノグリコシド系などです。
d.膿瘍が這うように拡大するというのは肺炎球菌の角膜炎の特徴です。
e. 緑膿菌はグラム陰性桿菌です。
36問:角膜内皮障害
答えはd
a. PEでは散瞳不良やチン氏帯脆弱だけでなく内皮障害もきたします。
b. 分娩時外傷ではデスメ膜破裂を起こすことがあります。鑑別疾患としてはposterior corneal vesicle(PCR)です。
c. ICE症候群はなんらかの原因で、角膜内皮細胞がシュワルベ線を超えて隅角にまで進展してしまうことで高眼圧症を引き起こしたり内皮減少が起こったりする疾患です。
d, Meesmann角膜ジストロフィは上皮系のジストロフィーなので内皮は関係ありません。
角膜ジストロフィーのまとめはこちらを参照ください。
e. 後部多型性角膜ジストロフィーはPCVが両眼にできるような疾患で遺伝性があります。
37問:角膜疾患と治療の組合せ
答えはa, c, d
角膜ジストロフィはたくさんあって、試験でも苦手な先生が多いと思います。
個人的にはまず、病変の深さ別に覚えるというのが良いと思います。上記まとめでも深さ別に疾患を分類していますので、この分類だけでもはじめに覚えてください。
角膜の浅い所が主体の疾患では上皮びらんの原因となったり、PTKが治療適応となります。
一方で深い所が主体の場合は深層角膜移植(DALK)や全層移植(PKP)が必要となります。
a. Fuchsは内皮障害の原因となります。内皮細胞は角膜内から水を汲み出すポンプの役割がありますので、内皮障害があると角膜に水が溜まって浮腫になってしまいます。高張食塩水点眼を使うと、浸透圧で角膜に溜まった水を取り出すことが出来るので対症療法的に使われます。
b. Salzmann結節変性は角膜表層の疾患なのでPTKなどが適応です。
c. アベリノ角膜ジストロフィではBowman層が主体で、主に浅い病変が多いのでPTKが行われることが多いですが、深い病変を伴うこともありますのでDALKも適応となります。
d. 膠様滴状角膜ジストロフィはアミロイドが角膜表面に沈着していく疾患ですが、治療用コンタクトレンズをつけることでアミロイドの沈着を防ぐことができます。
e. 斑状角膜ジストロフィーは角膜実質が主体で、深い病変となるのでPTKではなくDALKやPKPの適応となります。
38問:新生児の角膜混濁
答えはa
新生児の角膜混濁の主要な原因としては前眼部形成不全が有名であり、Peters異常や強膜化角膜などが含まれます。
そして前眼部形成不全の鑑別疾患として新生児に角膜混濁をきたすものとして以下の疾患が挙げられています。
- 胎内感染に伴うもの
- 分娩時外傷(主に鉗子分娩)
- 生後の外傷、感染症等に伴うもの
- 全身の先天性代謝異常症に伴うもの
- 先天角膜ジストロフィー
- 先天緑内障
- 無虹彩症
- 角膜輪部デルモイド
以上のことからb〜eは正しいです。
先天梅毒でも角膜実質混濁を高頻度に起こすのですが、角膜実質炎は後期先天梅毒の症状ですので生後2年以降にみられますので誤りです。
39問:輪部デルモイド
答えはb
a. 片眼性が多いです。
b. 耳下側が好発ですので誤りです。
c. 輪部デルモイドに副耳や耳瘻孔、脊椎異常などを伴うものをGoldenhar症候群と呼びます。
d. 角膜輪部にデルモイドができるので角膜乱視の原因となり、弱視リスクがあります。
e. 治療としては表層角膜移植が適応となります。
40問:無虹彩症
答えはb, c
41問:関節リウマチの眼合併症
答えはb
a. 強膜炎は眼の病気というよりも、全身疾患による一症状と考える方が良いです。関節リウマチやANCA関連血管炎など様々な疾患に合併しますので、強膜炎では膠原病の精査が必須です。
b. 網脈絡膜炎はほとんどみられません。
c, d. 周辺部角膜潰瘍の原因としても関節リウマチやウェゲナー肉芽腫症(GPA)は重要です。
周辺部角膜潰瘍はしばしば穿孔します。
e. 関節リウマチはシェーグレン症候群を合併することも多く、涙液分泌減少も伴います。
シェーグレン症候群を伴わない場合でも、関節リウマチがあれば涙液減少があるようです
42問:多焦点眼内レンズについて
答えはa
a. 屈折型の場合、中央部に遠方用、その周囲に近方用の度数が入っているレンズを用いると、瞳孔径が非常に小さい高齢者では遠方用でしか見えない場合があります。回折型では瞳孔径が小さくても近方と遠方に同程度光が振り分けられます。
b. その通りです。
c. その通りです。
d. 基本的には自己負担となっていましたが、2020年4月より選定療養という制度が使えるようになりました。本来白内障手術をするにあたって支払う金額にプラスでかかるレンズ代や特殊な現在代などの差額を払うことで医療を受けられる制度です。
e. 遠方と近方に光が分散されますので、その分単焦点よりはコントラスト感度が下がります。
43問:偽調節
答えはa, d, e
単焦点眼内レンズの偽調節の原因は以下の通りです。
瞳孔径:瞳孔径は小さいほど偽調節は大きくなる
残余乱視:ある程度残余乱視があると偽調節により明視域が拡大する
高次収差:球面収差やコマ収差も偽調節に関与
44問:放射線白内障
答えはa
放射線白内障の特徴について箇条書きしておきます。
- 後嚢下白内障
- 総被ばく線量閾値は0.5gy
- 単回暴露0.5 〜2.0Svで高度な白内障を生じる
- 総線量が同じであれば複数回暴露より単回の暴露で発症しやすい
- 含鉛アクリル保護メガネが有効
- 医療従事者や宇宙飛行士がリスク
- 赤道部の水晶体上皮細胞は分裂能が高いので障害されやすい
45問:小児白内障
答えはb
a. 禁忌ではありません。成長とともに度数がずれることや、後発白内障予防にposterior CCCが必要だったりと色々と注意が必要です。
b. 斜視や眼振が出現したような症例では早期手術が望ましいです。
c. 成長にともない、眼球も大きくなるので近視が進行します。
d. 片眼性のほうが予後が悪いです。良い方の眼ばかりが発達して、患眼は発達しにくいです。
逆に両眼同程度の白内障であれば、割と時間がたってから手術をしても視力予後は良好な場合があります。
e. 上記の通り、片眼性であれば予後が悪いので、超早期手術が行われます。
46問:萎縮型加齢黄斑変性
答えはa, c
萎縮型加齢黄斑変性では、網膜色素上皮、視細胞、脈絡膜毛細血管などが萎縮してしまうことで視力低下を引き起こす疾患です。
日本で多い滲出型と比べて、視力低下はゆっくりとすすみます。
萎縮が広がると、ランダムな形となり、地図状萎縮と呼ばれます。
網膜色素上皮が萎縮しているところは自発蛍光で低蛍光となるので、経過観察に有用です。
滲出型へと移行することもあります。
軟性ドルーゼンやreticular pseudo drusenは様々な黄斑疾患の前駆病変と言われます。
硬性ドルーゼンは高齢になると正常眼底でも観察されることがあり、黄斑変性の関係性は不明です。
47問:中心性漿液性脈絡網膜症
答えはb, d
a. 飲酒とは関連しません。
b. 脈絡膜の肥厚がみられるのが特徴です。他に原田病でも脈絡膜肥厚があるので併せて覚えておいてください。
c. 網膜血管ではなく、脈絡膜血管の透過性が亢進します。
d. 基本的には漿液性剥離ですが、網膜色素上皮剥離も合併します。
e. ステロイドはむしろリスク因子です。CSCだけでなく、MPPEなどもステロイドによって生じます。
48問:卵黄状黄斑ジストロフィ
答えはd
卵黄期にみられる病変はリポフスチンの沈着ですので、自発蛍光では過蛍光となります。
萎縮期になると、黄斑萎縮を伴い自発蛍光では低蛍光となります。
卵黄状黄斑ジストロフィではEOGが重要ですので合わせて理解しておいてください。
49問:EOG検査
答えはd
角膜コンタクトレンズ型の電極を使用するのはERGです。
50問:全視野刺激 ERG
答えはe
a. 5msec以下が望ましいです。
b. 散瞳していないときちんと光刺激を与えることができません。
c. フリッカERGのような速い刺激は杆体では認識することができず、錐体機能を反映します。
ですので限界フリッカ値検査でも、視神経障害だけでなく、錐体細胞が障害される場合でも値は低下します。
d. 混合応答には背景光は関係ありません。錐体だけを見たい時に背景光をつけて杆体細胞がはたらかないようにします。
e. その通りです。暗順応が不十分だと杆体応答がきちんととれなかったり、フラッシュERGで陰性型となってしまったりします。
51問:電気生理学的検査
答えはd, e
a. 小口病では暗順応の遅延が起こっていますので全視野ERGのフラッシュ波形はb波の低い陰性型となりますが、2時間以上の暗順応の後ではフラッシュERGは正常となります。
多局所ERGは主に錐体機能を見ているので正常です。
b. オカルト黄斑ジストロフィでは多局所ERGで黄斑部のみ振幅低下を認めます。全視野ERGは正常です。
c. 卵黄状黄斑ジストロフィでは全視野ERGは正常ですが、EOGで異常を認めます。
d. 先天停在性夜盲では双極細胞の異常により、全視野ERGは陰性型となります。
e. ビタミンA欠乏では夜盲となるので、杆体応答の異常が強いです。
52問:癌関連網膜症
答えはe
癌関連網膜症(CAR)の原因疾患としては小細胞癌が最も有名で、その他胃癌や産婦人科領域の癌などにもみられます。
他にも悪性黒色腫関連網膜症(MAR)というものもあります。
癌細胞によって網膜に対する自己抗体を作ってしまい、それによって網膜が攻撃されて視細胞のある網膜外層が障害される疾患です。
網膜に自己抗体を作ってしまうようなものを自己免疫性網膜症(AIR)と呼び、このAIRの中にCARやMARが含まれます。
癌を伴わないAIRについてはわからないことが多いものの、AZOORとの関連が指摘されていたりと色々なことがわかりはじめているところのようです。
AZOORは自然寛解も言われていますが、AZOORだと思っていたらどんどん外層障害がすすむような症例ではAIRの可能性を念頭に悪性腫瘍の検索やステロイド治療を考える必要があります。
53問:予防的網膜光凝固
答えはe
頻出問題です。
遊離弁や網膜剥離を伴わない馬蹄形裂孔が最も良い適応です。
54問:仮面症候群
答えはb, d
仮面症候群というのは、ぶどう膜炎のように見える仮面をかぶっているけど、実は悪性腫瘍という疾患群です。
特に悪性リンパ腫は仮面症候群の原因として重要で、ステロイド治療への反応性の乏しい高齢者のぶどう膜炎では常に鑑別に挙げる必要があります。
眼内リンパ腫では硝子体混濁や網膜の黄白色病変などを伴います。
硝子体混濁はぶどう膜炎の炎症細胞とは違い、癌細胞によるので粒が大きく、OCTでも白い粒々が観察出来ることがあります。
網膜の黄白色病変は自発蛍光で過蛍光となります。
他にも転移性腫瘍や、網膜眼細胞腫、白血病なども原因となります。
55問:TNF-α阻害薬
答えはd
アダリムマブ(ヒュミラ)使用上の禁忌は以下の通りです
- 重篤な感染症
- 活動性結核
- 過敏症の既往のある患者
- 脱髄疾患(多発性硬化症等)及びその既往のある患者
- うっ血性心不全の患者
56問:Vogt-小柳-原田病
答えはc
原田病では急性期に脈絡膜が肥厚するのが特徴です。
原田病かな?と思っても、脈絡膜肥厚がない場合には別の疾患の可能性も考える必要があります。
57問:サルコイドーシス
答えはe
サルコイドーシス臨床診断基準は33回でも出題されていましたね。
以下の通りです。
- 両側肺門リンパ節腫脹
- ACE or リゾチーム高値
- sIL-2R高値
- Gaシンチ、FDG-PETで集積
- 気管支肺胞洗浄(BAL)でリンパ球比率上昇(CD4/CD8>3.5)
また、眼サルコイドーシスの診断基準についても出題される可能性がありますのでサルコイドーシスまとめ記事も参考にしてください。
58問:HTLV-1関連ぶどう膜炎
答えはc, d
a. 性差は明らかではないです。
b. 蓄膿は典型的ではありません。
e. キャリアのほとんどは発症することなく生涯を終えます。
HTLV-1関連ぶどう膜炎についてはこちらのまとめも参照ください。
59問:眼内リンパ腫
答えはe
60問:未熟児網膜症
答えはb
未熟児網膜症スクリーニングは34週未満、1800g以下が対象となっています。
開始時期については出生時在胎26週未満なら修正29週から、26週以上なら生後3週から検査を行うのが基本です。
61問:Fisher症候群
答えはb, d
Fisher症候群は以下の3徴が有名です
- 外眼筋麻痺
- 小脳性運動失調
- 腱反射低下
ギランバレー症候群の類縁疾患で感冒様の先行症状のあとに神経麻痺症状が出現します。
髄液検査では蛋白数が増えているのに、細胞数が増えていないという蛋白細胞乖離を認めます。
採血では抗ガングリオシド抗体(GQ1b)が陽性となります。
MRIで脱髄がみられるのは多発性硬化症などの脱髄性疾患で、テンシロンテストが有効なのは重症筋無力症です。
62問:乳幼児の屈折矯正
答えはc, d
屈折値の正常値は生後すぐは遠視で成長とともに眼が大きくなり、近視側にずれていきます。3ヶ月で+4D程度、1歳で+2D、3歳で+1〜0D程度となります。
a. 遠視は年齢相応程度で斜視が無いので経過観察でOKです。
b. 遠視は年齢相応なものの内斜視があります。教科書的には0歳児は視力が未発達で調節性内斜視にはなりにくいとあり、月齢と斜視の程度にもよりますが、乳児内斜視などの先天内斜視を考える必要があります。ですので答えでは無いと思います。
しかし、実臨床には0歳であっても調節性輻輳が関与することはあるので、乳児内斜視など超早期手術が必要な疾患でなければ、調節麻痺下での屈折検査ができるようになり次第屈折矯正を試すことはよくあります。
c. 近視の場合は弱視になりにくいので眼鏡必須では無いのですが、この症例では外斜視を伴っているので屈折矯正の対象となります。
外斜視があってピントが合っていないと明視努力をせずに、調節性輻輳や近見輻輳が働きにくく外斜視が悪くなりがちです。
きちんと眼鏡処方をすることで外斜視も軽減させられるので屈折矯正の対象となります。
d. 選択肢の中ではこれが屈折矯正の一番の適応です。
遠視性の不同視があると、遠視がきつい方の眼が弱視となってしまうリスクがあるので眼鏡処方を行います。
e. 近視性の不同視の場合は、近視がきつい方の眼で近くを見て、近視が緩い方の眼で遠くを見るというモノビジョンとなるので弱視にはなりにくいです。
実臨床では眼鏡処方する場合もあるように思いますが、教科書的には上記の通りなので、これも答えにはならないように思います。
63問:プリズムの合成
答えはc
左眼に基底上方と内方に2⊿のプリズムを入れているので、合成プリズムの向きは鼻上側となります。
3時方向を0度とするので、鼻上側は135°となります。
プリズムの合成はベクトルで考える必要がありますので、合成ベクトルは三平方の定理を使って、2√2となります。
2√2≒3なので答えはcです。
64問:検影法
答えはb
検影法の問題はよく出るので、模型眼などで一度でも練習しておくと良いと思います。
模型眼が無かったり教えてくれる人がいない場合には学会でもスキアスコープのセミナーがある時があるので受けておくのをオススメします。小児でレフが測れない時などの引き出しとして出来る様になっておけば使う時も有ると思います。
a. 被検者の眼を固定して、検影器で光を動かして検査します。
b. 斜めもある程度検出可能ですのでこれが答えです。
c.片眼ずつしか検査できません。
d. 散乱光を通常使います。収束光にすると散乱光とは逆の結果となります。
e. 屈折度は中和した検査レンズ度数に検査距離(m)の逆数を引きます。
65問:斜視の治療法
答えはb
a. シクロペントラートはサイプレジンなので、これで治療はできません。
治療にはプリズム眼鏡や手術などを行います。
b. 麻痺性斜視があると、第一眼位の斜視となるので複視の原因となります。
ですのでこれをなくすために、麻痺している筋の拮抗する筋をボツリヌスで麻痺させて複視をなくします。
c. 交代性上斜位の治療は手術です。
d. 二重焦点眼鏡で治療するのは、非屈折性調節性内斜視です。
e. 屈折性調節性内斜視の治療は屈折矯正です。
66問:face turnする疾患
答えはc
顔を右に回すのは基本的には右眼の外転ができないもしくは左眼の内転ができないパターンです。
麻痺によって眼科が拮抗筋の方にずれるのでその分顔を回して補います。
a. 左上斜筋麻痺では患側に頭を傾けると左眼が上転してしまうvielschowsky頭部傾斜試験が陽性となります。ですのでそうならないよう右側に頭を傾ける斜頸となります。
b. 右動眼神経麻痺では右内転が出来ないので顔を左に回します。
c.右外転神経麻痺では顔を右に回しますのでこれが答えです。
d. 右Brown症候群では、右眼の上斜筋が伸びないために内上転障害が起こります。内転障害があるのでそれを補うために左に顔を回します。
e. 左Duane症候群Ⅰ型では左眼の外転障害がありますので、左に顔を回します。
67問:AC/A比が大きくなる疾患
答えはe
AC/A比については、調節が亢進するような調節痙攣や副交感神経作動薬で小さくなります。
逆に調節を麻痺させるアトロピンのような薬剤では大きくなります。
屈折性調節性内斜視は遠視によって内斜視となるものなのでAC/A比は正常ですが、非屈折性調節性内斜視はAC/A比が大きいために内斜視となってしまう疾患です。
68問:両耳側半盲
答えはa, e
両耳側半盲は視交叉の真ん中の交差線維が交わる所が障害されるとみられます。
下垂体腺腫などの視交叉部腫瘍が原因として多いですが、視交叉炎を起こしやすい視神経脊髄炎でも見られます。
また、エタンブトール視神経症ではエタンブトールの作用による亜鉛欠乏が原因の一つと言われており、視神経でも特に視交叉部は亜鉛欠乏による耐久性が低いために視交叉部障害による両耳側半盲が起きやすいと言われています。
69問:瞳孔
答えはa, b, c
a. 片眼の視神経炎では教科書的には、健眼からの間接対抗反応が保たれるため瞳孔不同は起こりません。
ただ、実際は片眼の視神経炎でも患眼の瞳孔が大きめになっている症例はあるように思いますが…
重症度や観察条件によっても違いますので、あくまで教科書的にはそうだと理解しておいてください。
b. 頭痛を伴う瞳孔不同と言われたら、IC-PC動脈瘤を疑います。眼瞼下垂も伴うことがあり、破裂した場合には命に関わるので至急脳外科紹介が望ましいです。
c. その通りです。通常の視神経疾患では対光反射の障害が出ますが、レーベル遺伝性視神経症や常染色体優性視神経萎縮では対光反射に直接関与する網膜神経節細胞が保たれるために、視力障害の割に対光反射が保たれます。
d. Adie症候群に特異的ではなく、他にもArgyll-Robertson瞳孔などで認めます。
e. RAPDは検者がみる他覚的検査結果です。
70問:先天眼振
答えはa
71問:点眼薬の禁忌
答えはd
ブリモニジン酒石酸塩(アイファガン)は、BBBを越えて脳に作用して傾眠の副作用を起こすことがあります。
ですのでBBBの未熟な2歳未満には禁忌となっています。
72問:アドレナリン受容体に作用する点眼
答えはb, c, d
アセタゾラミド(ダイアモックス®)=炭酸脱水酵素阻害薬
カルテオロール(ミケラン®)=βブロッカー
ブナゾシン(デタントール®)=α1ブロッカー
ブリモニジン(アイファガン®)=α2刺激薬
ラタノプロスト(キサラタン®)=プロスタグランジン
73問:緑内障性視野障害
答えはd
a. 実性暗点は自覚できる暗点のことです。緑内障では自覚症状に乏しい虚性暗点です。
b. 下方視神経障害が起きやすいので、上方視野障害が先行する例が多いです。
c. 早期緑内障では視野障害はあまり自覚しません。
d. その通りです。早期であってもあやしければハンフリー10-2の評価が望ましいです。
e. 後期では30度以内をみるハンフリー30-2では真っ暗で進行評価が難しいです。
ですので周辺を評価できるゴールドマン視野検査や中心視野を評価出来るハンフリー10-2などを用います。
74問:緑内障の治療
答えはa, d
a. 問題文通りです。
b. 正常眼圧緑内障も他と同じく眼圧下降が基本的な治療です。
個人のベースライン眼圧から20〜30%程度の眼圧下降をまずは目指します。
c. 隅角に新生血管が生えているので出血してしまいます。やるなら線維柱帯切除術かチューブシャントです。
d. 問題文通りです。
e. 先天緑内障の第一選択は線維柱帯切開術です。
75問:薬剤と眼圧下降機序
答えはb, d
a. マンニットールを点滴すると高濃度の薬剤が血管内に入るので房水や硝子体などの水分を血管内に引き込むことで眼圧を下げることができます。
b. βブロッカーは房水産生抑制なので正しいです。基本的にαとかβ系はα1ブロッカーは副経路ですが他は全て房水産生抑制と覚えておくとよいです。
c, d. 副交感神経刺激薬は主経路です。他に主経路からの房水流出促進するのはRhoキナーゼ阻害薬や非選択的交感神経作動薬などがあります。
e. PGは副経路です。
76問:全身疾患と所見の組み合わせ
答えはa, c
a. Axenfeld-Rieger症候群についてはこちらを参照ください。
b. Cogan-Reese症候群はICE症候群の一つで角膜内皮〜隅角に異常を認めます。
c. 裂孔原性網膜剥離では一般的に眼圧が下がりますが、裂孔部から飛散した視細胞外接が隅角に詰まることで高眼圧となったものをSchwartz症候群と呼びます。
d. Sturge-Weberでは顔面や脈絡膜の血管腫を合併します。
e. Weill-Marchesani症候群では球状水晶体や短指症、短躯症を生じます。
77問:外傷による網膜裂孔
答えはb, c
外傷が起こる時は基本的に眼をつぶろうとするので、Bell現象で眼球は上転します。
また、鼻があるので耳側のほうが外傷が起こりやすいので、外傷では耳下側に衝撃を受けやすいので、耳下側と反対側の鼻上側が多いと言われます。
78問:鈍的外傷に伴う前房出血
答えはb, d
a. 穿孔は鋭的外傷です。
b. 前房出血が残存すると角膜染血症が起こります。
c. 黄斑円孔は急性期に見られる合併症です。
d. 外傷に伴う前房出血では高眼圧となることも低眼圧となることもありますので眼圧に注意が必要です。
低眼圧が続くと低眼圧黄斑症が起こります。
e. 細菌性眼内炎が外傷後に起こるのは穿孔性の眼外傷の場合です。
79問:眼球打撲
答えはa
a. 眼球打撲後に水晶体表面に虹彩のpigmentがついている所見です。
b. サルコイドーシスなどにみられる虹彩結節です。瞳孔縁にみられます。busaccaは虹彩表面に見られる結節でこんがらがらないよう注意です。
c.角膜移植後の拒絶反応のラインです?、
d. 後発白内障で見られる所見です。
e. 過熟白内障で水晶体が溶けてしまっているものです。
80問:疾患と症状の組み合わせ
答えはb, e
a. 涙小管断裂では、ドライアイではなく、涙が流れていかないので流涙などの症状が出ます。
b. 眼瞼下垂があると、少しでも眼を開くために前頭筋を使って眼を開けようとするので、眉毛が挙上します。
c. 外傷性視神経症では受傷後時間が経ってから視神経乳頭が蒼白化してきます。陥凹拡大ではありません。
d. 眼窩底骨折では眼窩下神経が障害されることがあり、頬から上口唇あたりのしびれや知覚鈍磨がでます。前額部ではありません。
e. 眼窩先端部の障害では、視神経、動眼神経、滑車神経、三叉神経、外転神経の障害が起こります。
上眼窩裂や海綿静脈洞の障害では上記のうち視神経以外の障害を合併します。
眼球運動障害+視神経障害では眼窩先端部の異常を疑います。
81問:交感性眼炎
答えはb
交感性眼炎は穿孔性眼外傷後に、外傷と反対側の眼に原田病と同様のぶどう膜炎症状が出現する疾患です。
a. 外傷性の眼球破裂で整復が困難な例では交感性眼炎予防のために眼球摘出を行うことがありますが、交感性眼炎の治療は原田病と同様にステロイドパルスです。
b. 原田病と同じくHLA-DR4と関連します。
c. 硝子体手術も原因となることがあります。
d. 有病率は100万人あたり1人です。
e. 眼外傷の3ヶ月以内に発症します。
82問:高圧酸素療法
答えはd
動脈閉塞では高圧酸素療法だけでなく、眼球マッサージ、血栓溶解、パラセンなど様々な治療法があります。
83問:薬物と副作用の組合せ
答えはc
a. ジゴキシン(ジギタリス)の副作用で全てのものが黄色がかってみえるという黄視症というものがあります。ちなみに余談ですがゴッホの絵では本来緑の部分も黄色で描いている箇所が多くあり、黄視症だったのではという説があります。
青視症というものもあり、これはバイアグラの内服で報告されています。
b. アミオダロンは脂溶性の薬物でほぼ全例で角膜に渦巻き状の沈着を起こします。また視神経に沈着すると視神経炎を引き起こすこともあります。
c. ニカルジピンと緑内障は関係ありません。
d. 薬剤性の白内障としてはステロイドとクロルプロマジンが最も有名です。
e. クロロキンによる網膜症は、薬剤の累積量が増えるとともに発生率が上がり、特に5年以降で1%を超えてきます。
ですのでアメリカでは投与から5年経過後からの定期的な眼科検査を推奨しています。
ヒドロキシクロロキンは今後も適応拡大されていくにつれ、網膜症と出会う確率も増えていきますし、専門医試験でも狙われやすいと思うので日眼から出ているヒドロキシクロロキン適正使用の手引きも一度読んでおくべきだと思います。
https://www.nichigan.or.jp/member/journal/guideline/detail.html?itemid=304
84問:網膜静脈閉塞症の黄斑浮腫
答えはa, c, d
トリアムシノロン(マキュエイド)の適応については
硝子体内投与は硝子体可視化以外には糖尿病黄斑浮腫のみです。
一方でテノン嚢下投与は以下の3つの疾患に適応があります。
- 糖尿病黄斑浮腫
- 網膜静脈閉塞症
- 非感染性ぶどう膜炎
85問:手術と合併症の組合せ
答えはd
a. 外眼筋の中には前毛様動脈が走行しており、3つ以上の筋を同時に手術することで前眼部虚血リスクが高まります。
b. 下直筋と下眼瞼牽引筋腱膜はLockwood靭帯でつながっているので、下直筋後転では下眼瞼下垂が起こります。
c. 上斜筋縫い上げ術では上斜筋を強めるので、相対的に上斜筋が伸びなくなり、医原性Brown症候群となります。
d. 下斜筋前方移動では、下斜筋の作用のうち、上転作用を弱める手術です。それにより上転制限が起こるので、これが誤りです。
e. Faden手術は外眼筋の筋腹を強膜に縫い付ける手術です。強膜に縫う際に穿孔リスクがあります。
86問:白内障手術
答えはb
高眼圧では実質ではなく上皮浮腫を起こします。
87問:翼状片手術
答えはb, c
a. 若年ほど再発しやすいです。
b. 翼状片によって、水平方向に力がかかっているので直乱視となっています。術後はゆるむので倒乱視化します。
c. 問題文の通りです。
d. 翼状片を取ったあとも角膜が不整となるので、瞳孔領に達する前が望ましいです。
e. 再発予防のためにもしっかりと抗炎症を行います。しかし術後に感染性角膜炎や細菌性強膜炎などの感染を起こすこともあるので注意が必要です。
88問:球後麻酔
答えはe
球後麻酔は筋円錐内へと投与します。
眼球運動に関する神経のうちで、滑車神経だけは上眼窩裂から出た後、筋円錐外を走行するので球後麻酔の効果が及びにくいです。
筋円錐内を走行する神経についてはこちらの記事のシェーマを参照ください。
89問:局所麻酔薬
答えはa
- プロカイン(ベノキシール):作用発現は遅く、持続時間は短い、エステル型
- リドカイン(キシロカイン):作用発現が速く、持続時間は長い、アミド型
- メピバカイン:リドカインに類似
- ブピバカイン(マーカイン):作用発現は遅く、持続時間は長い、アミド型
- ロピバカイン(アナペイン):ブピバカインを改良、作用は類似
90問:涙点プラグ
答えはd
a. 涙液が流れていかなくなるので涙液交換は低下します。
b. 涙液の分泌量には関係がありません。
c. 予防にはなりません。
d. 涙液メニスカスというのは下眼瞼と角膜の間に溜まった涙の水位のことで、涙液が流れていかないので水位は高くなります。
e. キープティアのことです。キープティアは徐々に無くなっていき、恒久的ではありません。
91問:全層角膜移植
答えはd
a. 血圧の上昇を防止することで駆逐性出血の発生が低下すると言われています。
b. 術前に眼内圧を下げるための器具で、硝子体圧を下げておくことで駆逐性出血の発生が低下すると言われます。
c, b.と同様に硝子体内圧を下げることができます。
d. 白内障同時手術で駆逐性出血の発生を低下させるということはありません。
e. 血圧も眼圧も下降しますし、術中にいきんだりすることも無いので駆逐性出血の発生が低下します。
オープンスカイの際にバッキングが起こると駆逐性出血が起こるので注意が必要です。
92問:結膜被覆術
答えはa
急性水腫は円錐角膜患者にデスメ膜断裂が起こることで、角膜混濁が起こる疾患です。
基本的には経過観察で引くのを待ちますので、結膜被覆の適応にはなりません。
角膜穿孔や遷延性上皮欠損などがある場合に結膜被覆を行うことがあり、水疱性角膜症に対しても、疼痛軽減のために結膜被覆が行われることがあります。
93問:レーザーと治療の組合せ
答えはe
レーザーの種類と治療の組み合わせは以下の表を参照ください。
治療法 | レーザー種類 | 波長(μm) |
光線力学的療法 | 半導体レーザー(赤色光) | 0.664 |
眼瞼下垂 | 炭酸ガスレーザー | 10.6 |
角膜屈折矯正や角膜混濁除去 | エキシマレーザー | 0.19〜0.36 |
網膜光凝固 | マルチカラーレーザー | 0.532〜0.647 |
SLT | 半波長Nd:YAGレーザー | 0.58 |
後発白内障 | Nd:YAGレーザー | 1.06 |
94問:前置レンズとレーザースポットサイズ
答えはd
網膜上の倍率は+90/+60=1.5倍となります。
ですので前置レンズの度数を大きくすると倍率があがります。
(20Dと90Dの見え方を思い出してみてください)
そして凝固スポットサイズが200μmですので
200×1.5=300μmが網膜上のスポットサイズになります。
95問:真性小眼球に伴う滲出性網膜剥離.
答えはd
真性小眼球では強膜が厚く硬いことによって、強膜を通る眼内液の流出が障害されることで脈絡膜剥離や漿液性剥離を伴うことがあり、uveal effusion syndromeと呼ばれる疾患を引き起こすことがあります。
治療としては、強膜を通る眼内液の流出障害を解除するため、脈絡膜を大きく露出する強膜開窓術を行います。
96問:眼球心臓反射
答えはa
斜視手術や網膜復位術では外眼筋に斜視鉤をかけて引っ張った時に、迷走神経刺激で徐脈が起こることがあり、眼球心臓反射と呼びます。
基本的な対処としては斜視鉤を外して引っ張るのをやめるのが第一です。
重症例に対してはアトロピンの静注を行います。
97問:斜視手術合併症
答えはe
斜視手術の術後すぐの複視や過矯正は経過とともに改善していきます。
低矯正であったとしても眼位が落ち着くまで時間がかかるので早急な再手術適応ではありません。
前眼部虚血は、外眼筋の中には前毛様動脈が通っており、3筋以上同時に手術すると発症リスクが高まります。
発症してしまった場合には手術ではどうにもなりません。
高度の眼球運動制限が出た場合には、動かした外眼筋が外れてしまった可能性があるので早急に手術が必要です。
98問:線維柱帯切開術
答えはc, e
a. 線維柱帯切開ではなく、切除術などが濾過手術です。
b. 角膜混濁があったとしても施行可能です。
c. 線維柱帯を切開すると、術中一過性の低眼圧で,上強膜静脈から血液の逆流が生じます。
d. 術後高度の低眼圧にはなりにくいので、脈絡膜剥離は起こりにくいです。
e. 前房出血が吸収させるときに一過性の高眼圧を生じやすいです。
99問:強膜内陥術
答えはa, d, e
a. 直筋付近は強膜が薄く、脈絡膜中大血管も疎なので適しています。
b. 鋸状縁あたりは、網膜と脈絡膜の距離が近いので網膜を傷つけるリスクが高いです。
c. 渦静脈近くは脈絡膜中大血管が密で出血リスクがありますので適しません。
d. バックル設置部位であれば、仮に網膜が排液創部に嵌頓したとしても、バックルでサポートすることができます。
e. 丈が高い部位では網膜を傷つけるリスクが低いので適しています。
100問:シリコーンオイル
答えはb, e
a. 比重は0.97程度です。
b. 表面張力は非常に小さいです。
c. 近視ではなく遠視化です。
d. 虹彩切除は下方です。
e. これについてはよくわかりませんでしたが消去法で正解かと。根拠の論文なもご存知の先生は教えて頂けると助かります。
シリコーンオイルの屈折率は1.4で、硝子体は1.33。何故シリコンのほうが屈折率は大きいのに遠視化するのだろうと疑問だったので調べてみました。
有水晶体やIOL眼ではレンズの分硝子体が凹んだ形状となるので、眼内としては凹レンズになることで、より屈折率が高いと遠視化するようです。