眼科専門医試験解説

第31回 眼科専門医認定試験 臨床問題 過去問解説

第31回 眼科専門医認定試験 臨床問題の解説をはじめていきます。
公式解答は発表されておりませんので間違い箇所がございましたらお問い合わせ欄もしくはTwitterのDMより指摘いただければ助かります。

問題については以下↓の眼科学会ホームページよりダウンロード出来ます。

専門医試験過去問(日本眼科学会HP)はこちらから

第31回一般問題の解説はこちら。

1問:毛様体の病理

答えはa, c

この病理は毛様体です。

a. 虹彩上皮です。虹彩上皮は色素性で2層になっています。
ちなみに虹彩上皮は発生的には網膜が伸びて行って出来るので神経外胚葉由来です。
虹彩実質は神経堤なので注意です。

b. 毛様溝です。

c. 毛様体無色素上皮。
血液房水棚は虹彩血管内皮細胞と毛様体無色素上皮細胞によりつくられます。

d. 毛様体色素上皮。
病理所見を見るとわかりますが毛様体の一番外側には色がついていない無色素上皮があり、その内層に色がついている色素上皮があります。
毛様体無色素上皮はtight junctionにより血液房水関門を形成します。
血液房水関門を通って房水が作られるので、薬剤などが房水中へは届きにくいです。

e. 毛様体筋です。
基本的に自力で動かせる随意筋が横紋筋で、不随意の筋が平滑筋です。
毛様体筋も不随意なので平滑筋です。

2問:Bergmeister乳頭

答えはe

Bergmeister乳頭というのは第一次硝子体過形成遺残の仲間で、視神経上に膜様物が付いているものです。

ちなみに視神経上に一部が残存しているのに対して、水晶体側に一部が残存したものはMittendorf斑と呼びます。

3問:Lisch結節

答えはc, d

画像はvon Recklinghausen患者に高率に合併する、虹彩のLisch結節です。
問題の画像のように小さいものが多発するタイプや、もう少し大きいものが散在するタイプなどがあります。

von Recklinghausenは常染色体優性遺伝の疾患で、皮膚のカフェオレ斑や神経線維種を特徴とする疾患です。
眼の合併症としてはLisch結節が最多で、他には視神経膠腫や緑内障などがあります。

4問:ヘルテル眼球突出計

答えはb

画像はヘルテル眼球突出計です。

眼窩腫瘍による眼球突出を測定します。

16mmを超えたり、2mm以上の左右差がある時に異常となります。
実際に使用してみるとわかりますが、結構手技によるぶれが大きい検査なのでバセドウ眼症などでフォローしていく時は毎回同じ人が測定するのが望ましいです。

検査系は筆記対策としても重要なので、実際に使用したことがない先生は一度測定しておくと良いと思います。

5問:多形腺腫

答えはd

1枚目の写真では涙腺部の腫脹を認めます。
2枚目の写真では腺腔構造があり、中に粘液性物質の貯留を認めます(ピンクの均一な部分)。

涙腺腫脹の鑑別としては、良性腫瘍(多形腺腫が最多)、悪性腫瘍(多形腺腫内癌、腺様嚢胞癌など)、炎症性疾患(IgG4関連疾患、サルコイドーシスなど)が挙げられます。

この症例は良性腫瘍である多形腺腫です。

a. 多形腺腫は女性がやや多いです。

b. 全身に転移するのは腺様嚢胞癌や多形腺腫内癌などの悪性腫瘍です。

c. 皮脂や角化物質などの上皮性分を含むのはデルモイドです。

d.正しいです。病理所見の腺腔の周りの細胞が上皮性細胞で、その周りの紡錘形の細胞が筋上皮細胞です。

e. 生後まもなく発生するのはデルモイドのことです。
多形腺腫の好発年齢は40代です。

6問:臨床研究

答えはc

a. 診療録を調べるだけの観察研究です。

b. 基本的にほとんどの研究ぇ倫理委員会の申請は必要です。症例報告などは倫理委員会が不要です。

c. この図は相関関係をみるものです。右上がりなら正の相関、右下がりなら負の相関。図では負の相関を認めるので正しいです。

d. 箱ひげ図は株価のチャートのようなやつです。

e. 相関関係をみるためには相関係数を使います。

7問:網膜芽細胞腫

答えはb

画像は網膜芽細胞腫です。
診断にはエコーやCT検査を行います。CTで石灰化を認めるのが特徴的です。
網膜芽細胞腫は白色瞳孔を来す疾患です。
発症形式としては孤発性のものと、遺伝性のものがあります。
遺伝性は常染色体優性遺伝で、Rb1(Retino blastoma)遺伝子の異常を認めます。

網膜芽細胞腫が発症するには2 hit説というものが関与します。
細胞には癌抑制遺伝子であるRb遺伝子が二つあり、この2つ両方ともが変異により機能を失った場合に網膜芽細胞腫が発症します。
一つの細胞のRb遺伝子がたまたま二つとも変異する確率は非常に低いので、孤発性のものは片眼性が殆どです。

遺伝的にRb1遺伝子異常がある患者では、全ての細胞が生まれつき片方のRb遺伝子が欠失した状態なので残りの一つに変異が起こると網膜芽細胞腫を発症します。
ですので両眼性のものはほぼ全てが遺伝性です。
また、網膜以外の細胞でもRb遺伝子異常があるので二次癌リスクが高いです。

a. 血管異常もありますが、腫瘍への栄養血管です。

b. 上記の通り正しいです。

c. Eales病では腫瘍は作りません。

d. Down症との関連はありません。

e. 両眼発生が遺伝性が多いです。

8問:神経鞘腫

答えはb

神経鞘腫は名前の通り神経の鞘であるschwann細胞から発生する良性腫瘍。
なんとなく眼の神経と言えば視神経から出てくるように思いますが、毛様体神経由来が多いです。
良性腫瘍ですので、数年〜10年以上かけて徐々に大きくなり、主訴は眼球突出が最も多いです。

この症例も5年かけて症状が増悪しており、眼球突出いがいの症状がない事からも眼窩内の良性腫瘍を示唆します。

a. 病理所見には血管の増殖は認めません。

b. 問題の画像では紡錘形の細胞があり、核が並行にならぶ柵状配列を認めています。これは神経鞘腫に特徴的な所見でAntoni A型と呼ばれます。

他にも粘液腫細胞が主体のAntoni B型というものもあります。また、A, B型が混在するものもあります。

c. d. どちらも涙腺から発生する腫瘍なので基本的に耳側にできるはずです。

e. リンパ球ではありません。また、悪性の場合このような長期の経過は考えにくいです。

9問:涙道内視鏡

答えはe

見たことがあれば確実に回答できる問題です。
見たことがない場合は推理するしかありませんが、お尻の部分にチューブを繋ぐための部分があります。
電気メスやレーザーには、元々のコード以外に繋ぐものはありません。
また、サイズ的には鼻の内視鏡にしては小さすぎるので涙道の内視鏡と推理できます。

10問:伝染性軟属腫

答えはe

伝染性軟属腫はポックスウイルスによってイボができる疾患です。
俗にみずいぼといわれます。

小児の体幹や四肢に好発しますが、顔面では眼瞼に好発します。

治療はピンセットなどで摘み取ります。自然消退することもあります。

ちなみに成人発症例で、顔に伝染性軟属腫が多発した場合はAIDSの合併を疑います。

伝染性軟属腫の病理所見では表皮が真皮に食い込むようにして塊状に増殖している像が見られます。
また細胞質内には細かい顆粒がみられ、これらが融合して好酸球の封入体(molluscum body)を形成します。

11問:霰粒腫

答えはb

この問題をはじめて見た時に、まず病理写真だけを見て僕は病理はよくわかっていないので悪性リンパ腫かな?と思ってしまいました。

しかし、試験問題といえども臨床に即して考えることで正答率を上げられると思います。

このような患者が自分の外来に来た時にスリットを見ると霰粒腫をまず思い浮かべると思います。
しかし、高齢者で改善が乏しいことから脂腺癌の鑑別も必要なので手術をする方針にします。
つまりこの病理所見は霰粒腫か脂腺癌の鑑別のために手術をした結果得られたものです。
そして悪性像が無かったので霰粒腫だったという結果です。

病理所見では、巨細胞を伴った肉芽種性の炎症が観察できます。

12問:結膜リンパ拡張症

答えはe

これは結膜リンパ拡張症を知らなくても、腫瘍ではなく、結膜が管状に隆起しているので雰囲気で答えられると思います。

原因は慢性炎症や眼手術、先天異常などがあります。

13問:母斑

答えはc

この画像のように結膜の褐色調の病変を見たときの鑑別としては、母斑か原発性後天性メラノーシス(primary acquired melanosis: PAM)、悪性黒色腫が挙げられます。

母斑は若年に発生して嚢胞を伴うことが多いです。
それに対してPAMや悪性黒色腫は壮年〜高齢者に発生し、嚢胞を伴わないことが多いです。

嚢胞の有無は鑑別点として重要ですが、全ての母斑で嚢胞が認められるわけではないので、鑑別に迷う場合は切除生検を行います。

この問題は比較的若いことと嚢胞を伴うことから母斑の可能性が高いです。

14問:巨大乳頭結膜炎

答えはa, c

コンタクトがズレるという主訴を聞いたらまずは巨大乳頭結膜炎を考えます。
これは一対一対応でも良いくらいかなと思います。

その主訴を聞いて翻転すると高確率でこのような乳頭を認めます。

治療はまずはコンタクトの中心と抗アレルギー点眼です。難治例にはステロイド点眼を使用します。

抗菌薬は細菌感染でないので不要。
免疫抑制剤点眼や乳頭切除は春期カタルの治療です。

15問:淋菌性結膜炎

答えはa, c, d

著明な膿性眼脂と強い充血を認めます。
このような非常に強い充血のクリーム状の眼脂を伴う結膜炎を見た時は淋菌を疑います。
また帯下の増加は尿道炎を示唆します。

淋菌感染は性感染症で、数日で角膜穿孔に至る疾患です。
淋菌はクラビット耐性なのでセフトリアキソン1gの単回点滴とベストロンの頻回点眼を行います。

グラム染色では多量の抗中球とグラム陰性球菌を認めます。
特に白血球の貪食像を高率に見られます。

淋菌は高温でも低温でもすぐに死滅してしまう弱い菌で、培養にも特殊な培地が必要なため培養が非常に難しいです。
眼脂培養をする際には事前に検査部へ淋菌疑いの検体を送る旨をつたえて、検体採取からすぐに送る必要があります。
グラム染色では比較的簡単に菌が見れるので培養より塗抹検査が有用な感染症の一つです。

16問:アミロイドーシス

答えはb, e

ぱっと見角膜混濁に見えますが、前眼部OCTを見ると角膜の表面に病変が乗っているような状態です。

またスリット写真では混濁の周囲には炎症所見はなく、下眼瞼の睫毛が当たっているのが観察されます。

原因は物理的刺激による続発性アミロイドーシスが考えられます。
治療は睫毛の処理と、自覚症状が強い時は角膜病巣切除を行います。

17問:角膜ヘルペス

答えはa

角膜中央に円形の角膜実質混濁を認めます。
これはヘルペスに対する免疫応答によって引き起こされます。

角膜ヘルペスは上皮型、実質型、内皮や虹彩炎型などに分かれます。
感冒やストレスなど免疫が弱った際に、三叉神経に潜伏感染したヘルペスウイルスが再活性化することで発症します。

問題でも感冒後に発症していることからも上記を示唆しているのかと思います。

ヘルペス虹彩炎やポスナーシュロスマンの場合は高眼圧となることが多いですが、この症例では眼圧は正常です。

18問:顆粒状角膜ジストロフィ

答えはb

画像は顆粒状角膜ジストロフィです。
なかでもアベリノ角膜ジストロフィと呼ばれる顆粒状角膜ジストロフィⅡ型だと思います。
Ⅰ型はもっと小さく均一な混濁を認めます。

顆粒状角膜ジストロフィはTGFBI遺伝子の異常により引き起こされる遺伝性のジストロフィで、常染色体優性遺伝となります。
遺伝疾患なので基本的に両眼性です。
特に日本人特有ということはありません。

高度再発性角膜びらんを伴うのは格子状角膜ジストロフィです。

顆粒状角膜ジストロフィの混濁は実質浅層にあるのでレーザー角膜切除術(PTK)の適応となります。
混濁が深層に及ぶ場合は深部層状角膜移植を行うこともありますが、良い適応とは言えません。

19問:円錐水晶体

答えはe

スリット写真から後部円錐水晶体です。

水晶体の異常には球状水晶体、前部円錐水晶体、後部円錐水晶体などがあります。
この後部円錐水晶体は硝子体動脈遺残を合併することが多く、前部円錐水晶体はアルポート症候群に合併することが多いです。

20問:水晶体脱臼

答えはb

水晶体の下方偏位を認めます。
専門医試験では、水晶体の下方偏位はホモシスチン尿症。
マルファン症候群は水晶体の上方偏位というのは頻出です。

21問:MPPE

答えはc

OCTでは漿液性網膜剥離と脈絡膜の肥厚を認めます。
また、眼底造影検査では複数の漏出点を認めます。

以上よりMPPEを疑います。

MPPEの治療としては漏出点のPCやPDTなどを行いますので答えはcとなります。

22問:サイトメガロウイルス網膜炎

答えはe

病歴から免疫抑制の背景があり、画像所見からは典型的なサイトメガロウイルス網膜炎の周辺部顆粒型と言えます。

サイトメガロウイルス網膜炎については下記まとめを参照ください。

23問:網膜分離症

答えはb

網膜分離は網膜の内層と外層で分かれます(内顆粒層と外網状層)。

上記に対して網膜剥離は視細胞層と網膜色素上皮層の間で分かれます。

24問:Best病

答えはa, c

検査結果からはBest病を考えますが、64歳での発症とのことで、類縁疾患の成人発症卵黄様黄斑ジストロフィーを考えます。
Best病ではEOGでL/D比低下が特徴的な疾患ですが、成人発症卵黄様黄斑ジストロフィーではL/D比は正常範囲なことが多いです。

いずれもERGは正常で、眼底所見から両者を鑑別することは難しいです。
治療法は特にありませんので経過観察となります。

詳細は私のブログ記事のリンクを貼っておきます。

25問:APMPPE

答えはe

眼底写真では眼底に散在する白斑を認めます。
FAGの早期層では白斑部分が黒く抜けていますが、後期層になると過蛍光となっています。
これは逆転現象といって白点症候群を鑑別する上で重要な所見です。

若年女性であること、眼底所見、逆転現象より診断はAPMPPEとなります。

26問:未熟児網膜症

答えはa, b, d

未熟児網膜症のレーザー適応としては以下のどれかに当てはまる場合です。

  1. zoneⅠ, any stage ROP with plus disease
  2. zoneⅠ, stage3 ROP without plus disease
  3. zoneⅡ, stage2 or 3 ROP with plus disease

a. zone2 stage3
b. zone1 stage3 Plus
c. zone2 or 3, stage1
d. zone1 stage1 Plus
e. zone2 or 3, stage1

以上により答えはa, b, dになります。
b, dは確実だと思うのですがaはzone2, stage3でPlus diseaseが無いのでPC適応としては微妙ですが残りの選択肢の中ではこれが一番あてはまるかなと思います。
ridgeを形成しており増殖性変化が出始めているのでPC適応でも良いのかもしれません。

ちなみにdは初期にもかかわらずPlus diseaseがありAPROPが疑われるので増悪に注意が必要です。

27問:小口病

答えはc, d

眼底所見から小口病の金箔様眼底です。
長時間の暗順応で金箔病変が消失するのは水尾-中村現象と呼びます。

小口病では暗順応にかかる時間が非常に遅くなります。
ですのね通常の20分の暗順応では不十分のためフラッシュERGで陰性型となります(正常患者でも暗順応時間が10分など不十分の場合は陰性型になります)。

28問:ICC(Intrachoroidal cavitation)

答えはa

強度近視の乳頭周囲にみられるIntrachoroidal cavitationです。

眼底写真で乳頭上方に変色した網膜を認め、OCTでみられる空洞病変と一致します。

緑内障様の視野変化を認めることがありますが特に治療は必要ありません。
近視眼では乳頭のcuppingも判定しづらいので注意が必要です。

29問:脈絡膜腫瘍

答えはe

a. 眼底所見は白色でこの問題のような所見になることもありますが、CTで石灰化が無いので違います。

b. 母斑は淡い黒色や茶褐色の腫瘤として眼底に観察されます。

c. 眼内リンパ腫も眼底の白色病変を伴いますが、OCTで網膜色素上皮とブルッフ膜の間に病変を認めますので、このOCT所見とは合いません。

d. 血管腫の場合はICGで過蛍光となりますので違います。

e. 脈絡膜転移性腫瘍は眼底黄白色病変を認め、FAGでは顆粒状の過蛍光を認めます。

選択肢の中では脈絡膜転移性腫瘍が最も合致します。

30問:原田病

答えはd

OCT所見は脈絡膜の肥厚と波打ち所見があり、隔壁を伴う漿液性剥離を認めます。
典型的な原田病です。

現在ぶどう膜炎ではステロイドだけで治療するのではなく、免疫抑制剤や生物学的製剤などを併用することでステロイドを減量することができ、副作用を最小限にしようという流れにあります。

TNF-α阻害薬であるアダリムマブ(ヒュミラ)は中間部か後眼部に炎症を伴う全てのぶどう膜炎に適応があります。

同じTNF-α阻害薬のインフリキシマブ(レミケード)は関節リウマチ、クローン病、潰瘍性大腸炎、乾癬、ベーチェット病、強直性脊椎炎、川崎病に適応です。原田病は適応外なのでこれが答えです。

眼科的にはベーチェット病と、急性前部ぶどう膜炎の原因となる疾患、関節リウマチなどを覚えておくと良いと思います。

31問:IgG4関連疾患

答えはc

疾患はIgG4関連疾患です。
涙腺や外眼筋、神経などの腫脹を認める疾患です。
特発性眼窩炎症と呼ばれていたものの中に一定数この疾患が隠れていたことが近年わかってきています。

MRIでは外眼筋の肥大も認めます。問題の矢印のところはちょうど眼科底のところで、ここにあるのは眼窩下神経です。
下直筋はこの横にあるので矢印で示しました。

眼窩下神経は眼科底骨折の際に障害されると、顔のしびれの原因になります。

32問:Duane症候群

答えはa

右方視時に左眼の瞼裂の狭小化と左方視時に左外転障害を認めることからDuane症候群1型です。

a. Duane症候群1型は外直筋も動眼神経が支配してしまっているという異常支配によって起こります。
外転しようとしたときに外転神経は外直筋を支配していないため外転の指示をすることができません。
また、動眼神経が外直筋も支配しているため内転時に外直筋も収縮してしまいます。
それにより眼球自体が後方へ引っ張られるので瞼裂が小さくなったように見えます。

b. 下斜筋過動とは、内転時に眼が斜め上を向いてしまうものをいいます。V型外斜視に合併しやすいです。
この症例ではむしろ斜め下を向いていて、上斜筋過動のように見えるのですがDuane症候群での内転時の斜め下を向く現象はdown shootと言って斜筋の過動とはまた違います。down shootの機序についてはまた図を貼っておきます。

c. 左眼外転が出来ないのでそれを補うために顔を左へ回します。ですので右へ顔を回すのを好むというのは誤りです。

d, e. 第一眼位が正常な場合は弱視の原因とはなりにくく、遮蔽や斜視手術などはせずに経過観察します。この症例も正位です。
斜視を合併する場合には手術適応です。

33問:general fibrosis syndrome

答えはc, e

これはgeneral fibrosis syndromeだと思います。

眼瞼下垂と全方向の眼球運動障害を認め、父が同様の症状ということから常染色体優性遺伝が疑われます。

general fibrosis syndromeは先天性に両眼の外眼筋の線維化を認める疾患で眼瞼下垂を伴うものと伴わないものがあります。
症状は非進行性で、筋の線維化により伸展障害が起こるため牽引試験は陽性、Bell現象は陰性です。

よく似た疾患としてはミトコンドリア異常に関連する慢性進行性外眼筋麻痺があります。general fibrosis syndromeと同様に外眼筋の線維化を認めますが、症状は進行性で、典型例では20歳以降くらいに症状が出現してくるのが典型的です。また、ミトコンドリア異常ですが母系遺伝ではなく常染色体優性遺伝や常染色体劣勢遺伝が多いようです。

ちなみに慢性進行性外眼筋麻痺に心伝導障害と網膜色素変性症を合併したものをカーンズセイヤー症候群と呼びます。

34問:猫ひっかき病

答えはa

眼底に視神経乳頭腫脹と、星芒状黄斑を認めます。
視神経乳頭腫脹に網膜異常所見を合併する場合は視神経網膜炎といって猫ひっかき病との関連が多いです。
片眼性の視神経網膜炎の鑑別としては梅毒やトキソプラズマなどの感染性ぶどう膜炎が挙げられます。

星芒状黄斑はヘンレの線維層に沿って硬性白斑が沈着した際にみられる現象ですので、高血圧網膜症や動脈細動脈瘤破裂などでもみられることがあります。

猫を飼っているエピソードからも猫ひっかき病を最も疑います。
視力予後は良好で、経過観察のみでも改善すると言われています。

起因菌はバルトネラですのでaとなります。
僕は「猫と引っかきバトル」と覚えています。

35問:甲状腺眼症

答えはc

MRIで4直筋全ての肥厚を認め、それによる圧迫性視神経症が起きていると考えられます。

また、筋の肥大は眼球付着部は肥厚が軽度で、筋腹の肥厚が強いコカコーラボトル状であることから、甲状腺眼症を最も疑います。

36問:Foster-kennedy症候群

答えはc

右眼の視力低下と視神経蒼白、左眼視神経乳頭浮腫を認めることからFoster-kennedy症候群を疑います。

Foster-kennedy症候群では、腫瘍による圧迫で患側視神経は圧迫性視神経症による萎縮を引き起こし、健側では頭蓋内圧上昇によるうっ血乳頭を認めます。

ですので右視神経を圧迫しているcが答えになります。

37問:ハンフリー10-2

答えはe

眼底写真に、視野検査の結果を上下反転させて重ねて考えた場合に、NFLDと視野欠損パターンが一番合うのがeです。

38問:チン氏帯脆弱

答えはa

外傷後の眼と反対眼で前房の深さに左右差があり、腹臥位で眼圧上昇の発作、仰臥位で改善のエピソードから、外傷によるチン氏帯脆弱を疑います。

根本治療は白内障手術です。

39問:shaken baby syndrome

答えはe

選択肢の疾患は眼底のこのような網膜出血の鑑別となるものばかりですが、生後9ヶ月という年齢と、硬膜下血腫の病歴から乳幼児ゆさぶられ症候群(shaken baby syndrome)を最も疑います。

古典的三徴として以下があります。

  1. 硬膜下血腫
  2. 虚血性脳障害
  3. 網膜出血

上記の中では網膜出血が最も多いと言われますので、眼科医としても虐待を見つけるために重要な所見ですので見落としてはいけません。

shaken baby syndromeでは数えられない程多くの点状、斑状の出血がみられるのが特徴で、後極だけでなく周辺部まで広い範囲に認めます。

また、出血部位が網膜の多層に渡っているのも特徴で、表層の火炎状出血と深層の出血を同時に認めたり、出血性網膜分離を伴うこともあります。

その他の疾患としては

Terson症候群はくも膜下出血に伴う網膜硝子体出血です。

Purtscher網膜症は胸部打撲などにより胸腔内圧があがることで眼静脈の還流障害が起こり、網膜出血を起こす疾患です。
車のハンドルでの胸部打撲が典型的です。

40問:眼内異物

答えはe

病歴と眼底所見から眼内鉄片異物の存在が疑われます。
治療は硝子体手術です。

硝子体混濁があって見にくい場合もあるので、BモードエコーやCTで確認します。

鉄片の可能性がある時はMRI検査は禁忌なので要注意です。

41問:テノン嚢下注射

答えはa, c, e

これは一度でもやったことがあればわかると思います

42問:stevens-johnson症候群

答えはb, e

病歴から感冒薬によるstevens-johnson症候群を疑います。

この症例では発症から1ヶ月たっており、ステロイドの全身投与なども行われた後なで急性期の治療は落ち着いていると考えられます。

角膜全周のPOV消失と角膜血管新生、結膜侵入を認めることから角膜上皮幹細胞疲弊症となっています。

治療としては角膜上皮幹細胞疲弊症に対して輪部移植、また瞼球癒着も伴っていると考えられるので羊膜移植を併用します。
問題文の輪部上皮移植という言葉があるのか不明で調べたのですが、CLET(cultivated corneal limbal epithelial transplantation)のことかと思いますので、そうだとすれば答えはb, eです。

重症のドライアイが遷延化する場合には涙点プラグやaの瞼板縫合などを行います。

ちなみにstevens-johnson症候群の原因薬剤としてはカルバマゼピンやアロプリノールなどが有名ですが、感冒薬での発症も多数報告されており、特に重篤な眼合併症を合併する確率が高いようです。

43問:内皮型拒絶反応

答えはc

Khodadoust lineと呼ばれる内皮型拒絶反応に典型的な所見を認めます。

44問:A-mode

答えはb

A modeでは角膜から内境界膜までの距離を測定します。

角膜、水晶体前面、水晶体後面、網膜に相応するところで高い波形が出ます。
4箇所が全てきれいに描出できているbが答えです。

45問:多焦点眼内レンズ

答えはa, d

corneal guttataを認める以外には明らかな異常所見を認めず、角膜乱視も0.25なので軽度です。

多焦点IOLの除外基準に当てはまりませんので、適応でよいと思います。
また、内皮細胞数は問題ないもののguttataがあるのでソフトシェルテクニックはおこなっておいて良いと思います。

その他は当てはまりません。

ちなみに多焦点IOLの除外基準は以下の通りです。

  1. 術後視機能に影響を与える角膜疾患,ドライアイ,緑内障,ぶどう膜炎,網膜疾患,視神経疾患などの眼合併症を有するもの
  2. 弱視
  3. Zinn 小帯脆弱
  4. 重度の小瞳孔 ・白内障を有しない症例における,屈折矯正を目的とした refractive lens exchange は本療養の対象とならない
  5. その他,医師が非適応と判断したもの

46問:先天白内障

答えはd

両眼性の先天性核白内障を認めます。白内障が高度で弱視リスクが高いため早期手術が必要と考えられます。

この症例では両眼性ですので問題文通り2ヶ月程度での手術が望ましいです。
片眼性白内障ではさらに予後が悪いので、生後1ヶ月程度での手術を行います。

47問:laser suture lysis

答えはd

緑内障診療ガイドラインの推奨設定は以下の通りです。

  • スポットサイズ 50μm
  • パワー 100〜300mW
  • 時間 0.1〜0.2s
  • 波長 赤色

48問:iStent

答えはc

iStentは線維柱帯に挿入します。
隅角所見の各部位は以下の通りです。
a.毛様体
b.強膜岬
c.線維柱帯
d.シュワルベ線
e.サンパオレジ線

隅角を見る上で、bの強膜岬を目印とするとわかりやすいです。
毛様体は茶色なので、そこに隣接する白いラインが強膜岬です。
そしてそのラインのさらに角膜側が線維柱帯なのでcが答えです。

シュワルベ線というのは角膜の終末部の部分で、隅角鏡所見では線維柱帯のすぐ上に確認できます。

症例によってはシュワルベ線の位置がわかりにくい時があるのですが、隅角鏡で細いスリット光を入れて角膜前面を通る光と角膜後面を通る光が交わるところがシュワルベ線ですのでそれで判断します。

サンパオレジ線というのは、隅角鏡所見ではシュワルベ線の上方に見られる色素沈着でPE症例でみられます。
シュワルベ線は直線状なのに対して、サンパオレジ線は色素の沈着なので直線状ではなく波打っているのが特徴的です。

49問:脈絡膜剥離

答えはe

眼底写真では低眼圧による脈絡膜剥離を認めますので、最も注意すべき合併症は脈絡膜外腔への還流です

50問:網膜分離症

答えはe

強度近視患者に、網膜分離+網膜剥離を伴っています。

近視性牽引黄斑症は以下の3つの段階があり、①→③の順に進行していくと考えられます。

  1. 網膜分離のみの中心窩分離型
  2. 中心窩に網膜剥離を伴う中心窩剥離型
  3. 黄斑円孔を伴う黄斑円孔型

手術適応についてはコンセンサスは得られていませんが、②の中心窩剥離型の段階で手術をすると優位に視力改善を認めたとの報告もあり、この段階での手術が望ましいのでは?と考えられているようです。
この問題も②の段階ですので硝子体手術でよいかと思います。
もちろん③の黄斑円孔型やさらに進行した黄斑円孔網膜剥離でも硝子体手術を行いますが予後はあまり良くないようです。

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