眼科専門医試験解説

第30回 眼科専門医認定試験 臨床問題 過去問解説

第30回 眼科専門医認定試験 臨床問題の解説をはじめていきます。
公式解答は発表されておりませんので間違い箇所がございましたらお問い合わせ欄もしくはTwitterのDMより指摘いただければ助かります。

問題については以下↓の眼科学会ホームページよりダウンロード出来ます。

専門医試験過去問(日本眼科学会HP)はこちらから

第30回一般問題の解説はこちらから

1問:角膜の解剖

答えはb

aは角膜上皮です。

bはbowman層です。bowman膜と記載されている本もありますが、厳密には基底膜ではありませんのでbowman層というのが正しいように思います。

cは実質です。

dはデスメ膜です。

eは内皮細胞です。角膜は上皮が表層外胚葉由来ですが、他は神経堤細胞由来です。

2問:サルコイドーシス

答えはe

隅角所見ではテント状PASを認めており、病理所見では非乾酪肉芽種を認めます。
サルコイドーシスによる前房内炎症による霧視と軽度視力低下、続発性緑内障と考えられます。

両眼瞼腫脹があるとのことですが、腫脹部に硬結を触れるような場合にはそこの生検でサルコイドーシスの診断がつくこともあります。眼瞼硬結の鑑別としてはアミロイドーシスも重要です。

3問:網膜の解剖

答えはe

電子顕微鏡所見の真ん中の層に観察出来る黒っぽい細胞が網膜色素上皮細胞で、一番下に見えるのがブルッフ膜です。

4問:第1次硝子体過形成遺残

答えはd

選択肢は全て白色瞳孔の原因となる疾患です。
Bモードエコー検査では視神経乳頭から水晶体の方へ索状の陰影を認めることから第一次硝子体過形成遺残を疑います。

5問:オカルト黄斑ジストロフィー

答えはb, d

進行性の視力低下の訴えがあり、眼底写真は正常、OCTでは黄斑部のEZ不明瞭化を認め、多局所ERGで中心部の異常を認めることから、オカルト黄斑ジストロフィーを疑います。

黄斑部の異常があるので、中心暗点を認めます。
網膜の中心部のみに異常があり、周辺部は問題ありませんので全視野ERGは正常です。

6問:多発消失性白点症候群

答えはc

若年女性が数日の経過で片眼の視力低下をきたしています。
右眼底には白点病変が散在しており、FAGでは白点が過蛍光となっています。
また、OCTでは黄斑部の網膜外層に異常を認めます。

以上のことから、多発消失性白点症候群(MEWDS)を疑います。

7問:MALTリンパ腫

答えはd

結膜にサーモンピンク色の病変を認めており、病理ではN/C比の高い細胞が密に増殖していますのでMALTリンパ腫を疑います。

8問:高額医療費制度

答えはc

網膜復位術を受けているので34940点になります。
1点=10円で、3割負担の場合は
34940×10×0.3=104820

ですので自己負担は104820円です。
高額医療費制度では、年齢と収入に応じて1ヶ月あたり支払う最高額が決まっており、それを超えた分は申請すれば戻ってきます。

標準報酬月額自己負担限度額
83万円以上252,600円+(医療費-842,000円)×1%
53万〜79万円167,400円+(医療費-558,000円)×1%
28万〜50万円80,100円+(医療費-267,000円)×1%
26万円以下57,600円

70歳未満の高額医療費の限度額は上記の通りです。
年収600万では、月収28〜50万のゾーンなので約8万円が限度額になります。

高額医療費については、減額されるわけではなく、一度は支払ったうえで、後日申請すれば戻ってくるという形式なので高額な医療を行う際には患者さんにも伝えてあげる必要があります。
白内障手術なども同月に両眼とも行えば限度額を超えた分は戻ってきます。

9問:ロービジョン

答えはd

a〜cはいずれも虫眼鏡のように拡大するルーペです。

dは単眼鏡と言って、双眼鏡の片眼バージョンのようなものです。遠くの時刻表や看板などを拡大して見ることができます。近見でないのでこれが答えです。

eは拡大読書器です。

10問:眼窩内腫瘍

答えはd, e

a. MRIなので骨はうつっていません。

b. 10Bがわかりやすいですが、視神経は圧迫していません。

c. 涙腺の場所ではありません。どちらのMRIを見ても右眼の涙腺もうつっていないので場所が違うということが確認できると思います。

d. 造影では内部が不均一になっているのがわかります。10Bでは中央がlow気味です。

e. 問題文の通りで、眼球との境界は明瞭です。

11問:腫瘍

答えはd

眼底写真では後極部にシワがよっており、OCTでは網膜脈絡膜ごと盛り上がっているような所見です。

眼球自体を後方から圧迫するような腫瘍性病変の存在が疑われますのでMRIなどの画像検査を行います。

病側の黄斑が押されることで眼軸が短くなって遠視化していることにより、ピントが合わなくなったと思われます。

12問:甲状腺眼症

答えはd

甲状腺機能亢進症の病歴、左眼球突出、MRIでの左内直筋・下直筋の腫大から甲状腺眼症を疑います。

甲状腺眼症では筋肉が炎症性に腫大することで伸展障害が起こります。
腫大した筋の側に眼位が引っ張られるので内下斜視が答えだと思います。

13問:類皮嚢腫

答えはb

摘出標本の全体像では内部が充実性でなく、嚢胞状となっており、選択肢の中では類皮嚢腫が最も疑わしいです。

14問:結膜扁平上皮癌

答えはe

細隙灯では結膜にボコボコとした腫瘍を形成しており、鼻側角膜にも浸潤しているのがわかります。

病理所見では核の異型を伴う細胞があり、極性の乱れもあるので悪性腫瘍を疑います。

病理は僕も含めて苦手な先生が多いと思いますが、まず悪性腫瘍っぽいなということがわかればc, d, eに絞ることができます。

結膜扁平上皮癌はこの症例のように角膜と結膜の間に白いゼラチンのような所見を認めたり、この症例では認めませんが打ち上げ花火状の血管を認めたりします。

悪性腫瘍ということがわかればリンパ腫であればサーモンピンク色が特徴的ですし、悪性黒色腫であれば黒色ですので消去法でも扁平上皮癌と答えられると思います。

15問:格子状角膜ジストロフィ

答えはb, e

画像が見にくいので少し自信がありませんが、恐らく格子状角膜ジストロフィのⅠ型だと思います。

a. 常染色体優性遺伝です。

b. その通りです。

c. ムコ多糖ではなくアミロイドです。

d. 内皮は関係ありません。

e. その通りです。

角膜ジストロフィについてはこちらのまとめを参照ください。

16問:再発性上皮びらん

答えはa, b, e

元々外傷歴があり、起床時からの強い眼痛というエピソードからは再発性上皮びらんを疑います。

木の枝というエピソードから真菌感染も考えたかもしれませんが、それにしては角膜実質混濁や、実質浮腫がありません。
痛みの出かたや細隙灯所見からも上皮剥離が主な病態と考えます。

上皮剥離は一度起こすと上皮の接着が弱くなって、何度も繰り返すことがあります。

その場合は角膜穿刺、表層切除をしたり、角膜掻破をしたりすることで創傷治癒が働き、弱くなった上皮の接着が改善されます。

17問:アカントアメーバ角膜炎

答えはe

角膜の神経に沿った放射状角膜炎の所見を呈しており、SCLの不適切な使用歴があることからもアカントアメーバ角膜炎を考えます。

ちなみにこのスリットの撮り方は強膜散乱法(スクレラルスキャッタリング法)です。

治療には抗菌薬や抗ウイルス薬はアメーバには効きませんので、クロルヘキシジンのような消毒薬や抗真菌薬の局所投与、抗真菌薬の全身投与、角膜掻破の三者併用療法を行います。

18問:ICE症候群

答えはd

これはICE症候群の中のessential iris atrophyです。

ICE症候群というのは後天的に角膜内皮が隅角や虹彩表面に伸びていき、様々な異常をきたす疾患群で、他にChandler症候群とCogan-Reese症候群からなります。

いずれの疾患も片眼性、進行性、非遺伝性というのは共通しています。

19問:点状表層角膜症

答えはa, e

a. 角膜だけでなく結膜にまで障害が出ており、典型的なドライアイパターンです。薬剤性の場合は角膜所見は同様でも、結膜には障害が無いことが鑑別点になります。

b. 3時9時の障害を認めており、ハードコンタクトレンズに特徴的です。

c. 上輪部のみの障害であり、上輪部角結膜炎などでみられるパターンです。

d. タイゲソン点状表層角膜炎です。

e. ハリケーン角膜症です。薬剤性などでみられると教科書にありますが、基本的にはびまん性にSPKが出るような疾患ではハリケーン角膜症となることがあると思って良いと考えています。
神経麻痺性角膜症では遷延性上皮欠損を認めたりびまん性のSPKを認めるのでハリケーン角膜症もあり得ます。

20問:黄斑部毛細血管拡張症

答えはd

眼底所見では黄斑部耳側に毛細血管瘤や血管拡張のような所見を認めており、OCTでは嚢胞様黄斑浮腫(CME)を認めます。

パッと見では糖尿病黄斑浮腫に似ている印象があるかもしれませんが、片眼性であり糖尿病の既往は無しになっています。
このような疾患を見たときには黄斑部毛細血管拡張症(MacTel)type1を疑います。

加齢黄斑変性症の中ではRAPでCMEを伴うことが多いですが、RPEに異常が無いことから否定的です。

また、BRVOでもCMEを伴いますが眼底写真で血管閉塞はありませんし、高血圧の既往も無いと書かれています。

21問:ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)

答えはe

OCTではdouble layer signと急峻なPEDを認めており、FAGではclassic CNVパターンで、IAで特徴的なポリープ状病変を認めますのでPCVです。

22問:AZOOR

答えはa, b

若年女性が急な視野障害と光視症を認め、眼底所見は正常に見えることからAZOORを疑います。

鑑別としては視神経炎などの視神経疾患も疑う必要がありますが、視神経疾患では一般的に光視症は見られないのと、OCTで黄斑耳側のEZの一部不明瞭化を認めることからAZOORもしくは自己免疫性網膜症などを考えます。

AZOORではOCTでEZが不明瞭化している所に一致した視野障害、および多局所ERGでの振幅低下を認めます。
また、選択肢にはありませんが眼底自発蛍光を撮ると障害部位が過蛍光となりますので診断に有用です。

23問:脈絡膜母斑

答えはb

眼底写真で黄斑から鼻側にかけて境界不明瞭な色素性の病変を認めます。
OCTでは病変部位の脈絡膜に腫瘍性の病変のようなものがあり、漿液性剥離も伴っています。

FAGでは黄斑鼻下側に2箇所過蛍光のところがありますが、明らかなドルーゼンは伴っておらず、window defectによるものかな?と思います。

この所見だけでは母斑とメラノーマの鑑別が難しいですが、さすがにこの情報だけでメラノーマを答えさせる問題を作らないはずなので母斑でよいかと思います。

脈絡膜母斑は基本的にFAGで低蛍光ですが、内部にドルーゼンを伴っていたり、網膜色素上皮の萎縮があれば過蛍光となります。

また、脈絡膜母斑では脈絡膜循環不全が起こり、漿液性剥離を伴うことがあります。この症例のように病変が明らかだとわかりやすいですが、CSCと誤診されることがあるので注意が必要です。
この問題はCSCっぽいなと思った時に、ちゃんと脈絡膜の所見も見ないとダメだよーという出題者からのメッセージだと思っています笑。

ちなみに脈絡膜悪性黒色腫との鑑別としてはエコー検査で厚みが2mm以上あれば悪性黒色腫の可能性が高くなります。
母斑と思って経過観察を行う時にも厚みに注意が必要です。

24問:先天性網膜分離症

答えはd

両眼性に、網膜が内層と外層の間で分離していることから、先天性網膜分離症を疑います。

25問:Coats病

答えはa

片眼性の網膜剥離による白色瞳孔を認めます。
内斜視は、左眼の視力障害に伴う感覚性斜視を疑います。

白色瞳孔の鑑別で最も重要なのは網膜芽細胞腫で、眼内に充実性の腫瘍を認めたり石灰化を伴うのが特徴的です。
本症例では石灰化病変を認めないことから否定的というメッセージです。

選択肢の中ではCoats病が最も考えられます。

26問:後天性トキソプラズマ

答えはb, c

眼底に白色の滲出性病変を認め、周囲の血管白鞘化も認めることから後天性トキソプラズマを疑います。

慣れていないとこの写真だけで診断するのは難しいかもしれませんが、選択肢からなんとなくトキソプラズマを想起できたのではないでしょうか。
正解選択肢以外は全て、先天性トキソプラズマの特徴です。

ちなみにFAG初見が特徴的で、この滲出性病変は過蛍光になるのですが中央だけが低蛍光となり、black centerと呼ばれます。

後天性トキソプラズマの特徴は以下の通りです。
免疫正常な成人にトキソプラズマ感染が起こるとリンパ節腫脹や全身倦怠感、発熱など風邪と類似した症状がみられ、無治療で治ることが多いです。
しかし、免疫抑制患者では中枢感染にて命に関わることもあります。
眼所見としては先天性トキソプラズマにみられるような黄斑部の萎縮病変は認めません。
先天性の再活性化と同じような1乳頭径程度の病変が後眼部に出現します。典型的な滲出性病変だけでなく、網膜血管炎やそれによる血管白鞘化、また視神経網膜炎型のぶどう膜炎となることもあります。

27問:視神経脊髄炎(NMO)

答えはc, d

若年女性が急性に片眼の視力低下を起こしており、眼球運動時痛やRAPD陽性から視神経炎を疑います。

この症例では、水平半盲型の視野障害も伴っており、下肢の感覚障害なども伴っていることから視神経脊髄炎の可能性を考慮する必要があります。

視神経脊髄炎の診断のためには抗AQP4抗体を調べる必要がありますし、下肢の障害の原因となるような脊髄病変の有無をMRIで調べる必要があります。

28問:動眼神経麻痺

答えはa

左眼の上転、内転、下転障害と眼瞼下垂を認めます。
頭部MRI、MRAで異常がないことと、糖尿病の既往から虚血性の動眼神経麻痺を疑います。

a. 外斜視となっているので交叉性複視です。これが正解です。

b. 完全動眼神経麻痺では瞳孔散大も起こりますが、虚血性では瞳孔異常が見られない瞳孔回避が特徴的です。反対に動脈瘤による動眼神経麻痺ではまず瞳孔散大と眼瞼下垂がみられます。

c. 異常神経連合は関係ありません。

d. 外斜視なのでボツリヌス毒素を投与するから外直筋です。

e. 虚血性は基本的に自然軽快しますので、ステロイドは使用しません。

29問:先天性上斜筋麻痺

答えはa, c

両眼の上斜筋を見比べると、左眼の上斜筋が小さく、低形成を疑いますので左先天性上斜筋麻痺の治療が必要です。

原田・伊藤法も上斜筋麻痺の治療ですが、こちらはどちらかというと回旋複視の自覚のある症例に対して行う術式ですので、2つ選べと言われるとa, cだと思います。

上斜筋麻痺の手術についてはあまり自信が無いので、実際手術をされている施設の先生からご意見あれば是非教えていただきたいです!

30問:V型外斜視

答えはc

第一眼位では外斜視となっており、第二眼位では上方視で下方視よりも斜視角が大きくなるV型斜視パターンとなっております。
また、左方視時に右眼が斜め上を向いているので下斜筋過動も合併しています。

V型外斜視では両眼の外直筋の付着部が下方にずれているので、外直筋後転と同時に上方へ移動することで本来の付着部位に戻します。
それにあわせて内直筋は短縮しつつ下方移動します。

選択肢にはありませんが、この症例では右眼の下斜筋過動も伴っているので、下斜筋切筋術のような下斜筋の動きを緩めるような術式も正解となります。

31問:調節性内斜視

答えはe

遠視があり、内斜視となっていますので調節性内斜視です。
遠視によって内斜視となるものの眼鏡で斜視が無くなるものを屈折性調節性内斜視、眼鏡でも斜視が残るものを部分調節性内斜視と呼びます。

この症例では眼鏡の装用で斜視角はましになっているものの、内斜視は残存してしまっていますので部分調節性内斜視です。
部分調節性内斜視の治療は、まずは眼鏡で弱視治療ですか、この症例では視力が出ていますので、次は斜視手術となります。
二重焦点眼鏡は、AC/A比の増大している非屈折性調節性内斜視の治療です。
ボツリヌスは使えれば有効ですが。日本の適応は12歳以上となっています。

32問:色覚異常

答えはc

パネルd-15では重症度を調べることが出来、pass出来れば弱度と言えます。
ただ、弱度といっても正常色覚の10分の1以上の能力があるという程度です。

この症例ではマイナーなエラーはあるもののpassできているので弱度となります。

アノマロスコープは確定診断に用いられますが、2型3色覚に分類される箇所にプロットがありますので答えはcとなります。

33問:眼窩先端症候群

答えはc

左視神経障害、乳頭発赤腫脹を認めます。
また、左眼は眼瞼下垂と全方向の眼球運動障害を認めることから、左動眼神経と外転神経の障害も疑われます。

これら全てが障害され得る部位は眼窩先端部になります。

34問:うっ血乳頭

答えはb

両眼の視神経乳頭腫脹を認め、MRIでは著名な脳室拡大が起こっています。
脳脊髄液の経路が腫瘍などによって遮断されていることを示唆しており、それに伴い脳圧亢進によるうっ血乳頭が最も疑わしいです。

35問:Kearns Sayre症候群

答えはd

両眼の眼瞼下垂と、全方向の眼球運動障害を認めており、眼底は網膜色素変性症様の所見です。これはKearns Sayre症候群です。

Kearns Sayre症候群というのはミトコンドリア異常による疾患の一つで以下の3つを合併したものを言います。

  1. 慢性進行性外眼筋麻痺
  2. 網膜色素変性症
  3. 心伝導障害

ですのでミトコンドリア異常が正解です。

36問:サイトメガロウイルス角膜内皮炎

答えはa

片眼に高眼圧を生じており、角膜所見で典型的なcoin lesionを認めることからサイトメガロウイルス角膜内皮炎を疑います。

ちなみにHSVやVZVによる虹彩炎でも同様に片眼性の高眼圧を引き起こしますが、こちらは肉芽腫性のKPを伴い、そのKPが時間とともに茶色の色素性となります。
この所見をみたらHSVかVZVを強く疑います。

HSVやVZV虹彩炎を起こしたあとは虹彩の萎縮も起こします。特にVZVでは一部の虹彩のみが扇型に萎縮するのが特徴的です。

37問:網膜振盪

答えはa

外傷による網膜振盪を認めます。
特に網膜剥離や硝子体出血などを伴っていませんので経過観察で問題ありません。

38問:網膜皺壁

答えはb

OCTで網膜が折り畳まれたようになっており、眼底の中央には網膜の皺のようなラインを認めます。
これは網膜剥離が治る際に皺が寄ったまま治ってしまうことで生じます。

39問:眼窩底骨折

答えはa, d

強い眼痛や嘔吐、複視といった症状から外眼筋が骨折部へ嵌頓していることを示唆している問題だと思います。
筋が挟み込まれている画像はaとdになります。

aでは下直筋が骨に挟まれているところが見えており、眼窩内に下直筋が確認できません。

dでは一見骨折線がはっきりしませんが、眼窩内に内直筋が確認できておらず、篩骨骨折に挟み込まれていることが予想されます。

他の画像では骨折しているものの、筋肉は引っかかっていないので複視や眼球運動時痛などは比較的軽度です。

40問:Purtscher網膜症

答えはc

右眼に綿花状白斑を認めており、交通事故による胸骨と肋骨骨折という典型的な病歴からPurtscher網膜症を疑います。

Purtscher網膜症は交通事故のハンドル外傷が典型的で、肋骨の骨折などによる脂肪塞栓が原因で起こると言われています。

41問:角膜移植後の乱視

答えはe

視力検査と角膜形状から、乱視の強主経線は4時と10時の角度となります。

一般的に強く縫うとその角度の乱視が強くなり、抜糸すると乱視が弱まります。
ですので強主経線と一致した4時、10時の抜糸が正しいです。

42問:角膜移植後の角膜ヘルペス

答えはc

上皮に樹枝状病変が出ているので角膜ヘルペスとして抗ウイルス治療を行います。

43問:角膜移植

答えはe

リングは眼球形態維持のために用いられます。

44問:結膜弛緩症

答えはa, b

スリット写真から、結膜弛緩症を疑います。
結膜焼灼や切除を行うことでたるんだ結膜を改善することができます。

45問:有水晶体眼内レンズ(ICL)

答えはb

後房型有水晶体眼内レンズ(ICL)が入っている症例で、前眼部OCTで狭隅角となっていることが観察されますので、最も注意すべきなのは隅角閉塞になります。

角膜拡張症はICLではなくLASIKの合併症です。

46問:濾過胞感染

答えはd

トラベクレクトミー後の濾過胞感染です。濾過胞感染は術後何年経ってからでも起こり得るので注意が必要です。

感染がどこまで波及しているかによってステージが以下のように定められています。

  • StageⅠ:濾過胞充血(+)、濾過胞に炎症限局
  • StageⅡ:前房内に炎症が波及
  • StageⅢa:硝子体内波及軽度
  • StageⅢb:硝子体内波及高度

stage1では、抗菌薬の点眼や結膜下注射、stage2では上記に加えて前房内投与、stage3では硝子体内注射や硝子体手術を行います。
あとはこれに加えて全身投与も一応行います。

47問:脈絡膜剥離

答えはc, d, e

画像は脈絡膜剥離です。
術後リークやトラベクレクトミー後の過剰濾過による低眼圧であったり、輪状締結術による灌流障害などが原因となります。

48問:FEVR

答えはb

これは未熟児や他の基礎疾患が無いことから、FEVRを疑えばよいのかなと思います。
無血管野があるのでPCが適応です。

49問:パーフルオロン

答えはe

OCTで網膜に空洞状のところがあり、パーフルオロンの迷入を疑います。
網膜剥離の手術でパーフルオロンを使用する際には泡にならないように一塊となるように出すなどの工夫があります。

50問:黄斑下出血

答えはa

黄斑下出血を起こしていますが、比較的視力は良好で出血も軽度ですので経過観察で吸収を待つ方針で良いかと思います。

硝子体内ガス注入については、症例に応じて視力や出血量などによって適応になる可能性があるかと思いますが、PVDが起こっていないような症例ではガス注入だけでは出血の移動は難しいように思います。

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