ぶどう膜炎

Vogt-小柳-原田病について

Vogt-小柳-原田病とは

原田病はぶどう膜組織のメラノサイトに対する自己免疫反応に対する汎ぶどう膜炎を呈して、基本的には両眼性肉芽種性ぶどう膜炎です。
典型例では両眼の胞状漿液性網膜剥離を伴い診断は容易ですが、認めない場合には難しいこともあるので各特徴をまとめます。

Vogt-小柳-原田病の症状

原田病はぶどう膜炎の主要な原因疾患ですが、眼以外にも髄膜炎や内耳障害に伴う、頭痛・めまい・耳鳴り・感音性難聴などを認めます。

発症後数ヶ月経過した後にはメラノサイトが攻撃されたことにより、皮膚や髪の毛、眉毛が白くなります。

一節では浦島太郎は原田病であったのではないかという話もあります。

  • 亀が喋る→難聴
  • 龍宮城で遊ぶ→髄膜炎症状、視力障害
  • 地上へ帰っておじいさんに→頭髪の白髪化

Vogt-小柳-原田病の所見

前眼部所見

急性期は毛様体の浮腫による浅前房化が特徴的です。UBM検査をすると毛様体浮腫毛様体脈絡膜剥離が観察できます。
また浅前房化に伴い近視化が起こります

前房内炎症所見は肉芽種性ぶどう膜炎で、豚脂様角膜後面沈着物を認めたり全周虹彩後癒着によりiris bombeとなることもあります。

上記所見により急性閉塞隅角緑内障と間違えられることがあります。

両眼の急性閉塞隅角緑内障を疑ったときには必ず原田病を鑑別疾患に想起する必要があります。

後眼部所見

OCT所見

原田病の炎症は主に脈絡膜がメインと言われており、OCTでは脈絡膜の肥厚が急性期に認められます。
また肥厚だけでなく、脈絡膜が波打ったような所見(上図D)を認めることもあります。これは脈絡膜のなんらかの炎症を示唆します。
原田病を疑う場合でも脈絡膜肥厚を伴っていない場合は別の疾患の可能性があるので、決めつけないように注意が必要です。

OCT検査での両眼の漿液性網膜剥離も伴うことがあり、胞状や多房状の漿液性剥離(上図B)は原田病に特徴的な所見です。

両視神経乳頭の発赤だけで漿液性剥離を認めないような症例では、原田病が想起されずに視神経炎などと誤診される場合がありますが、脈絡膜の肥厚や波打ち所見を伴っていれば原田病の可能性が高くなりますのでぜひ覚えておいてください。

脈絡膜の肥厚は特徴的で試験でも脈絡膜の肥厚を来す疾患を選ぶような問題が出ていますのでCSCなどと合わせて覚えておくと良いと思います。

眼底所見

視神経乳頭の発赤やFAGでの乳頭過蛍光を認めます。
IAではdark spotと言われる円形の低蛍光エリアを認めます。

漿液性剥離が無くて両視神経乳頭の発赤を認める症例は乳頭炎型と呼ばれます。

乳頭炎型は両眼の視神経炎などと誤診されたり、原田病が想定されずに診断が遅れる傾向にあります。
ですので後述の脈絡膜所見などに注意して原田病が疑わしい場合には髄液検査などまで行うことが診断には重要です。

回復期には、炎症の結果として眼底全体が赤みがかって見える夕焼け状眼底が有名です。
それ以外にもサルコイドーシスの回復期のような眼底周辺部の白色斑状萎縮巣も認め、これはDalen Fuchs斑と呼ばれます。

強度近視で見られるFuchs斑(黒い色素沈着を伴う瘢痕病巣)と混同しないように要注意です。

髄液検査

原田病では無菌性髄膜炎となるので、髄液検査ではリンパ球優位の細胞増加を認めます。

Vogt-小柳-原田病の治療

原田病の治療はまずはステロイドパルス(mPSL 1000mg 3日間)が基本です。
パルスの後は内服のステロイドを開始してゆっくりと漸減していかなけければ再発してしまいます。
内服の漸減方法については以下の表にまとめます。

初期治療PSL 1mg/kg/day (体重60kgなら60mg/dayで開始)
漸減スケジュール40mg/day以上の場合:1〜2週毎に10mg/dayずつ漸減
20~40mg/dayの場合:1〜2週毎に5mg/dayずつ漸減
10~20mg/dayの場合:1〜4週毎に2.5mg/dayずつ漸減
0~10mg/dayの場合:1〜4週毎に1〜2.5mg/dayずつ漸減
維持量は10mg/day以下を推奨 (0.1mg/day程度を目標)
Guidelines for the use of immunosuppressive drugs in patients with ocular inflammatory disorders: recommendations of an expert panelを元に一部改変

上記スケジュールで半年以上かけてステロイドを漸減することが治療の基本となっておりますが、経過中に原田病の再燃を来す疾患があります。

その場合にはシクロスポリンやMTXを併用します。
遷延化してしまうような症例にはアダリムマブの導入も検討します。

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