眼科専門医試験解説

第32回 眼科専門医認定試験 一般問題 過去問解説

第32回 眼科専門医認定試験 一般問題の解説をはじめていきます。
公式解答は発表されておりませんので間違い箇所がございましたらお問い合わせ欄もしくはTwitterのDMより指摘いただければ助かります。

問題については以下↓の眼科学会ホームページよりダウンロード出来ます。

専門医試験過去問(日本眼科学会HP)はこちらから

第32回臨床問題の解説はこちらから

目次

1問:下眼窩裂

答えはc, e

眼窩の解剖は必ず自身で書けるようにしておくべきだと思っています。
過去にまとめたもののブログ記事を貼っておきます。

他にも上眼窩裂や視神経管がある所は蝶形骨なのでそちらが聞かれても答えられるようにしておくと良いと思います。

2問:加齢に伴い減少するもの

答えはe

a. 水晶体嚢は前極付近は加齢とともに厚くなりますが、後極付近は変化無しです。

b. 水晶体重量は白内障進行とともに増加するのは容易にわかると思います。

c, d 水晶体はα, β, γ-クリスタリンという水溶性の蛋白質によって構成されており、若い時は透明です。
これらの蛋白質が紫外線などの酸化障害によって不溶性の蛋白質に変化していくことによって濁りが生じます。
キヌレニンというのは水晶体の蛋白質を構成するアミノ酸のトリプトファンがUV-Bを吸収することで作られます。

e. 還元型グルタチオンは酸化ストレスによって、酸化型グルタチオン酸となるので加齢とともに減少します。
酸化ストレスに対抗する物質としては還元型グルタチオン酸の他にビタミンEやアスコルビン酸などもあります。

3問:EOG

答えはe

EOGについてはこちらのブログ記事をお読みください。

4問:帯状疱疹

答えはe

鼻毛様体神経は鼻尖部にも角膜にも分布しているので、鼻尖部に皮疹がでた場合には眼合併症を併発しやすくなります。これをハッチンソン徴候と呼びます。

ちなみに三叉神経第一枝の眼神経は以下の3つに分かれます。

  1. 鼻毛様体神経
  2. 涙腺神経
  3. 前頭神経

そして前頭神経から、滑車上神経と眼窩上神経へと分かれます。

ちなみに眼窩下神経は三叉神経第二枝の上顎神経の分枝で、眼窩底骨折で障害されるのが有名です。

5問:嚢胞様黄斑浮腫

答えはc, d

網膜の10層の解剖は必ず試験では必要なので自分で白紙から絵を描けるようにしておくとよいと思っています。
まだ覚えられていない方はこちらを参照ください。

網膜のうち内層、つまり内顆粒層までは網膜側の血管から栄養されています。脈絡膜から外層、つまり外網状層までは脈絡膜側の血管から栄養されています。
嚢胞様黄斑浮腫は、血管の障害で末梢から水が漏れるために起こるのでこれらの境目あたりに嚢胞様腔が形成されます。

6問:脈絡膜の解剖

答えはa, d

脈絡膜はブルッフ膜、脈絡毛細管板、血管層(Sattler層、Haller層)、脈絡膜上層から成ります。

OCTでsattler層やHaller層がどこかのシェーマも添付しておきます。

Automated quantification of Haller’s layer in choroid using swept-source optical coherence tomographyより引用

7問:入射瞳

答えはd, e

肉眼で観察する瞳孔は、実際の瞳孔の角膜屈折による虚像を見ているため大きく見えます。
この虚像の瞳孔のことを入射瞳と呼びます。

8問:長後毛様体神経

答えはa, c

長後毛様体神経は三叉神経第一枝の分枝である鼻毛様体神経の枝です。
長後毛様動脈と同様に視神経の近くで強膜を貫いて脈絡膜を通って前方の虹彩や角膜へ向かいます。

支配しているのは毛様体、虹彩、角膜です。

9問:放射状乳頭周囲毛細血管

答えはa

放射状乳頭周囲毛細血管(RPCs)は神経線維層です。

10問:屈折誤差

答えはe

a, b, c. 短眼軸や長眼軸、円錐角膜眼はIOL度数計算の誤差が大きくなります。

d. 過熟白内障では光学式眼軸測定(IOLマスターなど)が使用できず、超音波A-modeによる眼軸測定を行いますので誤差が大きくなります。

11問:発生

答えはa, e

週数は本によって多少誤差があり、間違っていたら指摘いただけると助かります。

硝子体動脈は周産期頃までに消失すると言われるので36週頃です。

a. 黄斑の形成は遅くて、生後4ヶ月頃です。

b. 胎生裂の閉鎖は6週

c. 水晶体板は4週

d. シュレム管の形成は16週頃からはじまります

e. 深層血管の浅層で差はありますが全てが最周辺部へいくのは38週頃です。

12問:硝子体の癒着

答えはe

過去にも同様の出題があります。
毛様体扁平部のあたりの、硝子体基底部が最も強いです。

他の選択肢も全て硝子体の接着が強い箇所です。

13問:脈絡膜血管の観察

答えはd, e

SSOCTはSDOCTと比べて脈絡膜などの深い組織からの信号でも減弱が少なく詳細に観察できる特徴があります。

FAG検査は網膜血管を、ICGA検査は脈絡膜血管を造影する検査です。

OCTアンギオグラフィーは現状では未だ脈絡膜血管の観察には適しておりません。

自発蛍光は網膜色素上皮のリポフスチンを見る検査です

14問:屈折異常の影響を受けやすい検査

答えはc, d, e

屈折矯正により鮮明な像が見えている必要がある検査を選ぶ問題です。
VEPは馴染みがないかもしれませんが、市松模様をみながら脳波をみる検査で視神経機能を他覚的に評価することができます。屈折異常がある場合は矯正下で検査をしないとキチンと反応しません。
また、市松模様の指標サイズを変えることである程度他覚的に視力を評価することもできます。

CFFやERGは屈折異常の影響が少ない検査です。

15問:内側縦束症候群

答えはc, e

内側縦束症候群(MLF症候群)では以下の3徴が特徴です。

  1. 患側眼の内転障害を示す
  2. 健側の眼球は外転に伴い, 水平性眼振を示す
  3. 輻輳機能は正常である

MLFだけでなくPPRFの機能についても理解しておく必要があるので過去ログの記事を貼っておきます。

16問:視神経

答えはb

視神経などの中枢神経の髄鞘は主にオリゴデンドロサイト(乏突起膠細胞)で形成されています。
これに対してSchwann細胞は末梢神経の髄鞘を形成します。

視神経ではオリゴデンドロサイト以外にもアストロサイト(星状膠細胞)やミクログリア(小膠細胞)なども存在します。

過去問でも視神経乳頭に存在するものでアストロサイトとオリゴデンドロサイトを選ぶ問題がありました。

ちなみに多発性硬化症はオリゴデンドロサイトが障害されることによって脱髄が起こる疾患です。抗MOG抗体のMOGはmyelin – oligodendrocyte glycoproteinの略でオリゴデンドロサイトを構成する蛋白の一つです。

一方でNMOでみられる抗AQP4抗体はアストロサイトの足突起に発現しているAQP4を標的とすることで、アストロサイトの障害を引き起こします。

17問:入院診療計画書

答えはa, b, d

医師、看護師はもちろんのこと、特別な栄養指導が必要な場合は管理栄養士が介入します。

ケースワーカーは福祉施設などで相談にのってくれる人のことで、病院での患者の退院支援を行うのは医療ソーシャルワーカー(MSW)です。

18問:特定臨床研究

答えはb, e

特定臨床研究は、臨床研究のなかでも下記のいずれかを満たすものをいいます。

  1. 製薬企業から資金の提供を受けて行われる臨床研究
  2. 国内で“未承認”あるいは“適応外”の、医薬品等を用いて行われる臨床研究

ですのでb, eが答えになります。
ちなみにcは治験のことですね。

19問:倫理審査委員会

答えはc, d

a. 9例以下の症例報告では基本的に倫理審査不要です。
以下に該当する場合は審査が必要となります。

  1. 研究的侵襲が発生
  2. 研究目的の採血・検査・撮影が行われる
  3. 個人が同定される可能性が高い(稀少疾患の患者や、報道等で病院、個人名の予想がつくなど)
  4. ヒトゲノム・遺伝子解析が含まれている報告
  5. 研究者が必要と思う場合(学会・研究会・発行元が倫理審査委員会による審査要求を含む)

b. 施設内の検討会であれば倫理審査不要かと思います。

e. ヒトを対象としない研究では不要です。

20問:角膜移植

答えはd

ドナーとなることが出来るのは次の疾患または状態を伴わないことが要件です。

  1. 原因不明の死
  2. 全身性の活動性感染症
  3. HIV抗体, HTLV-1抗体, HBs抗体, HCV抗体などが陽性
  4. クロイツフェルト・ヤコブ病およびその疑い、亜急性硬化性全脳炎、進行性多巣性白質脳症の遅発性ウイルス感染症、活動性ウイルス脳炎、原因不明の脳炎、進行性脳症、ライ(Reye)症候群、原因不明の中枢神経系疾患
  5. 眼内悪性腫瘍、白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫などの悪性リンパ腫

次の疾患または状態を伴うドナーの場合は移植を行う医師に当該情報を提供する必要があります。

  1. アルツハイマー病(クロイツフェルトヤコブ病との鑑別が必要なため)
  2. 屈折矯正手術既往眼
  3. 内眼手術既往眼
  4. 虹彩炎などの内因性眼疾患
  5. 梅毒反応陽性(陽性でも3日以上4℃で保存されたものならOK)

21問:身体障害者手帳の交付

答えはb

a. 都道府県知事です
b. 助成を受けるためには手帳が必要です。
c. 静的視野計のエスターマンでもOKになりました
d. 障害等級は視力、視野をそれぞれ指数化したものの合計で等級が決まりますので誤りです。例えば視力2級、視野3級相当であれば、視力11点、視野7点で合計18点=障害等級1級になります。
e. 良い方が0.3以上0.6以下で、悪い方が0.02以下なら6級に該当します。6級の基準は特に狙われやすいので覚えておくべきです。

障害者等級の詳細はこちらの記事を参照ください。

22問:遺伝性の疾患

答えはb,c

網膜芽細胞腫には孤発性のものと遺伝性があります。
遺伝性は常染色体優性でRb遺伝子の異常がみられます。
Rb遺伝子は癌抑制遺伝子でtwo hit説が有名です。

two hit説とは対立する遺伝子が2つとも障害されることによって初めて発癌するというもので、一つが障害される確率が1万分の1の確率だとすると両方がやられる確率は100万分の1となるので非常に稀となります。
しかしRb遺伝子異常があると、既に対立遺伝子の1つが障害された状態で生まれてくるので発癌する確率が劇的に上がります。

Rb遺伝子は癌抑制遺伝子として初めに発見されたもので、非常に重要です。

あとはstickler症候群も常染色体優性遺伝です。
家族歴のある網膜剥離で鑑別に入れる必要があります。

23問:VDT作業

答えはa

VDT作業では眼精疲労やドライアイを認めます。
選択肢の中では変視が最も起こりにくいと思います。

24問:甲状腺眼症

答えはc

活動性と相関すると言われているのはTSAbです。

ちなみにTRAbとTSAbは同時に測定すると保険で算定出来ないので注意です。

25問:通水検査

答えはd

通水検査のパターンとしては以下のものがあります。

  1. 上涙点から通水すると同じ涙点から逆流し、不通。
    →上涙小管の閉塞
  2. 上涙点から通水すると下涙点から逆流し、不通。膿の逆流無し。
    →総涙小管の閉塞
  3. 上涙点から通水すると膿の逆流があり。逆流は上下どちらからでもOK
    →鼻涙管もしくは下鼻道開口部の閉塞

この問題では涙囊が造影されることからも涙囊部以前の閉塞で、上下の交通があることから総涙小管の閉塞が疑われます。

26問:淋菌性結膜炎

答えはa, b

淋菌性結膜炎は激烈な炎症症状を示します。
多量の膿性眼脂や眼瞼腫脹、結膜充血を認め、未治療では数日で角膜穿孔へ至ることもあります。
キノロンは耐性化が進んでおり、点滴では第3セフェムのセフトリアキソンが第一選択で、点眼もベストロンを使用します。
グラム染色ではグラム陰性双球菌です。

グラム陰性球菌は主なものは淋菌、髄膜炎菌、モラクセラカタラーリスの3つくらいを覚えていれば良いと思います。
陽性球菌や陰性桿菌は非常に多いので、少ない陰性球菌や陽性桿菌だけでも覚えていると問題でも解きやすいと思います。

27問:結膜腫瘍

答えはb, c

乳頭腫の発生にはHPVの結膜への感染が関与していると言われています。

結膜扁平上皮癌を含む、眼表面扁平上皮新生物(OSSN)は免疫抑制患者、特にHIV陽性患者で発生率が高くなると言われています。
免疫抑制に伴いなんらかの感染を起こして癌が発生すると考えられていますが、詳細は未だわかっていません。

HPVとOSSNの関連も指摘されていましたが、否定的な報告もあり微妙です。

参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6438422/

28問:免疫抑制薬

答えはb

シクロスポリンやタクロリムスはT細胞の増殖やサイトカイン産生を抑えます。

29問:偽樹枝状角膜炎

答えはc

偽樹枝状病変は、HSV角膜炎でみられる樹枝状病変と形は似ていますがターミナルバルブを伴わないのが特徴です。

VZV角膜炎やアカントアメーバでみられます。
アカントアメーバがヘルペスと間違えられてステロイド点眼が入ってしまっている例が多々ありますので要注意です。

上記以外にも角膜上皮の障害が治癒していく過程でも偽樹枝状病変を認めます。
ですので薬剤性角膜症や角膜びらんでもみられます。

30問:帯状角膜変性

答えはd

帯状角膜変性の原因となる疾患は基本的に、眼に慢性炎症を引き起こしたり、高Ca血症を引き起こす疾患です。

副甲状腺機能亢進症では帯状角膜変性を引き起こします。

帯状角膜変性の主な原因

全身性

  • 慢性腎不全
  • 高カルシウム血症(副甲状腺機能亢進症など)
  • 悪性腫瘍の骨転移
  • ビタミンD中毒

眼科疾患

  • ぶどう膜炎
  • 緑内障術後
  • シリコーンオイル挿入眼
  • 重症ドライアイ

31問:細菌性角膜炎

答えはa, c

a. 正しいです。緑膿菌は菌自体が出すコラゲナーゼによる角膜融解と、菌の細胞壁にあるLPSというエンドトキシンの作用により生じるMMPsによる角膜融解という2つの経路で角膜潰瘍が形成されますので急速に角膜融解が進行し、重症化します。

b. よくある間違い選択肢です。

c. 一般的にグラム陽性球菌にらクラビット+ベストロンの頻回点眼、グラム陰性桿菌にはクラビット+トブラシンの頻回点眼を行います。
施設によっては上記3種類をはじめから全て入れるところもあるようです。
重症例には1〜2時間毎に点眼します。
トブラシンは角膜毒性が強いので多くても6回、2週間まで程度にしておかないと薬物毒性による角膜を引き起こし、前房蓄膿が出ることもあり角膜炎の再燃と間違えられるので要注意です。

d. コンタクトによる重症角膜は緑膿菌とアカントアメーバです。

e. コリネバクテリウムによる角膜炎も報告されています。

32問:重症ドライアイ

答えはa, c, e

選択肢は全てドライアイの原因となりますが、特に重症のドライアイとしてはシェーグレン症候群, GVHD, 眼類天疱瘡が挙げられます。
ドライアイに関して必ず出題されますので一度ドライアイガイドラインには目を通しておくと良いと思います。

33問:輪部デルモイド

答えはc, e

a. 通常の輪部デルモイドは片眼性が多いです。Goldenhar症候群に伴うものでは両眼性が多いです。

b. 指定難病ではありません。

c. デルモイドは生下時から存在し、角膜輪部に出来ることが多く半数例に不正乱視を合併し、弱視の原因となります。

d. 基本的に進行しません。

e. 問題文の通りです。Goldenhar症候群では他に、眼瞼欠損、副耳、小耳、難聴 、口蓋裂、顔面非対称、顎骨形成不全などを認めます。

34問:リンデロン点眼で悪化する疾患

答えはd

アメーバにステロイドはダメだとわかっていても、初期はアメーバと診断するのは難しいので原因不明の角膜炎、ヘルペスなどとしてクラビット+フルメトロンやリンデロンなどの治療が行われることがあるので注意です。

診断の根拠が無いのにとりあえずステロイド、とりあえず抗菌薬という思考停止の治療は控える癖をつけるべきだと思っています。

逆に原因がよくわからない時は、症状が軽度であればブロナックなどのNSAIDs点眼だけで少し様子をみるというのもアリだと思っています。
特にステロイドの扱いには注意です。

35問:角膜内皮疾患

答えはb, e

Fuchs角膜ジストロフィは滴状角膜(corneal guttata)を伴う遺伝性の疾患で、進行性に内皮障害を認め、水疱性角膜症へと至ります。
角膜内皮移植であるDSAECやDMEKの適応となります。

後部多形性角膜ジストロフィは角膜内皮に線状や環状の病変を認める遺伝性疾患です。内皮はやや減少しているものの、進行しないことが多いです。
両眼性ですが、片眼性のものはPCV(posterior corneal vesicle)と呼ばれます。
鑑別疾患は鉗子分娩による外傷や、先天緑内障にみられるHaab線などです。

36問:無虹彩症

答えはb

無虹彩症はPAX6の異常によって引き起こされると言われており、同じくPAX6により引き起こされる腎芽腫(wilms腫瘍)を合併しやすいです。

特に無虹彩にwilms腫瘍、泌尿生殖器奇形、精神発達遅延を合併したものをWAGR症候群と呼びます。

その他の眼の異常としては、白内障や黄斑低形成を合併するので視力が悪く、それに伴う眼振も認めます。

また、成人期以降には角膜上皮幹細胞疲弊症を合併することがあります。

37問:後部強膜炎

答えはd

猫ひっかき病は視神経ぶどう膜炎を引き起こし、星芒状黄斑が特徴的です。

後部強膜炎の原因としては以下のものが挙げられます。

  • 関節リウマチ
  • SLE
  • ANCA関連血管炎
  • 側頭動脈炎
  • 結核
  • 梅毒
  • ヘルペス

後部強膜炎は診断が非常に難しく、疑わなければ診断できません。
Bモードエコーによるテノン嚢下の浸出液によるT-signが特徴的です。
原田病との鑑別が重要です。

38問:白内障

答えはb

a. 放射線 後嚢下白内障
b. 強度近視 核白内障
c. 硝子体術後 核白内障
d. 筋緊張性ジストロフィ 後嚢下白内障
e. ステロイド 後嚢下白内障

他には以下のようなものも過去に問われています。

糖尿病では皮質もしくは後嚢下白内障
アトピーでは前嚢後嚢白内障
ガス白内障では後嚢下白内障

39問:脈絡膜新生血管

答えはc

近視性脈絡膜新生血管、AMD、網膜色素線条でCNVを認めるのはわかったと思います。

僕も知らなかったのですが、調べてみるとAZOORにもCNVを合併することがあるようです。
参考文献:https://journalretinavitreous.biomedcentral.com/articles/10.1186/s40942-018-0134-y

40問:網膜新生血管

答えはb, e

CRAOでは新生血管を生じることはありますが、BRAOでは新生血管を生じるのはほぼありません。

Refsum病は網膜色素変性を合併する疾患という程度知っていれば試験では問題ないかと思います。

41問:近視眼

答えはc, d

近視眼で黄斑出血を起こすのは近視性脈絡膜新生血管です。

近視眼で網膜が引き伸ばされるとブルッフ膜が断裂し、lacquer crackを形成します。
その割れ目から脈絡膜新生血管が生えてくることで黄斑出血の原因となります。

42問:抗VEGF薬

答えはb, e

a. 投与後の眼圧上昇に対して前房穿刺を行うことがあります。

b. これは合ってるで良いでしょう。

c. ヨード滴下直後はまだ十分な殺菌効果があらわれていません。

d. 注射直後は薬液やair混入による飛蚊症を疑います。

e. 一般的には有水晶体で4mm, IOL眼で3.5mmです。

43問:完全型先天性低在性夜盲

答えはc

完全型先天性停止性夜盲は双極細胞に異常を来す疾患で、強い夜盲を主訴にする疾患で強度近視を伴うことが多いです。

双極細胞にはon型とoff型があり、on型は桿体細胞・錐体細胞と、off型は錐体細胞と連絡しています。

完全型先天性停止性夜盲ではon型双極細胞が障害されているので桿体細胞障害が高度ですが、off型双極細胞は保たれており錐体細胞はやられていないので、視力障害が出ることは稀です。

一方で不全型の場合はon, off両方の双極細胞と視細胞のシナプス機能不全があり、桿体も錐体も中途半端にやられる疾患ですので夜盲よりも視力低下が主訴となることが多いです。

名前の響きから完全型=重症のようなイメージを持ちますが、意外と不全型のほうが視力が悪かったりします。
下のブログ記事ではERGの比較もありますので合わせて参照いただければと思います。

44問:網膜剥離と後部硝子体剥離

答えはb

後部硝子体剥離は60歳代以降に増えますので誤りです。
日本人のデータの文献載せておきます。

参考文献:https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1410208712

45問:点状脈絡膜内層症

答えはb, c

点状脈絡膜内層症(PIC)に関してはまとめ記事を載せておきます。

46問:近視を伴いやすい疾患

答えはb, d

stickler症候群は強度近視や脊椎・骨端骨異形成を伴う遺伝性の疾患です。
家族歴のある網膜剥離を認めた時に考慮します。

先天性停止性夜盲は昨日も出ていましたが、完全型は強度近視を伴いますが、不全型は近視から遠視まで様々です。

47問:reticular pseudodrusen

答えはb, e

ドルーゼンや白斑がOCTで網膜のどの層に沈着するかというのは臨床においても重要ですのである程度把握しておくべきかと思います。

詳しくはブログ記事を参照ください

48問:黄斑円孔

答えはb

中央に引き込まれるような変視は黄斑円孔に特徴的です。
黄斑円孔では、本来黄斑中央にある視細胞が円孔が開いたことにより、周りに移動しています。
この円孔周囲の視細胞に光が当たると、脳では中央で見ていると勘違いするため、このような変視となると言われています。

この変視を利用したWatzke-Allenテストというものがありますので併せて覚えておくと良いと思います。
前置レンズを用いてスリット光を黄斑部に当てた時にスリットの光が中央に窪んだり中央が抜けて見えるのが特徴的です。

49問:未熟児網膜症

答えはd

レーザー適応については頻出です。
以下が適応です。

  1. zoneⅠ, any stage ROP with plus disease
  2. zoneⅠ, stage3 ROP without plus disease
  3. zoneⅡ, stage2 or 3 ROP with plus disease

詳細はこちらを参照ください。

50問:疾患と治療薬の組み合わせ

答えはe

アジスロマイシンの内服は眼科で使うのはクラミジア感染に対してです。
淋菌感染患者に対しても、クラミジアの混合感染が多いので投与します。
点眼のアジスロマイシンはMGDに対して有効だと言われています。

アダリムマブはヒュミラのことで抗TNF-αです。
中間部や後部ぶどう膜炎に適応があるので現在様々なぶどう膜炎に対しても使用経験が蓄積されています。
眼内炎は増悪の恐れがあるので使用しません。
ちなみにヒュミラは皮下注射製剤で投与しやすいです。他のTNF-α阻害薬のレミケードは点滴で投与する必要があります。
余談ですが近年アメリカで最も売れている薬はダントツでヒュミラだそうです。

インフリキシマブはレミケードのことでぶどう膜炎ではベーチェット病に適応が通っています。
サルコイドーシスへの使用報告で有効性を示唆するものはあるものの、積極的に使用するわけでは無いのでこれは△です。

ラニミズマブはルセンティスのことなので原田病関係ありません。

クリンダマイシンはグラム陽性球菌や嫌気性菌だけでなく、ニューモシスチスやトキソプラズマなどの原虫にも有効な抗菌薬です。
他にもTSS(毒素性ショックシンドローム、黄色ぶどう膜炎が出す毒素によりショックを引き起こす)では、毒素の産生を抑える効果があります。

51問:急性前部ぶどう膜炎

答えはa, b

急性前部ぶどう膜炎といえばHLA-B27陽性、強直性脊椎炎に合併というのが有名です。

強直性脊椎炎には他にも同一スペクトラム上の脊椎関節炎と呼ばれるいくつかの疾患があります。

脊椎関節炎の代表的なものとして

  1. 強直性脊椎炎
  2. 乾癬性脊椎炎
  3. 反応性関節炎(別名ライター症候群、性感染症や腸管感染症後に起こる脊椎関節炎)
  4. 炎症性腸疾患に伴う脊椎関節炎

などがあります。
これらの疾患でも急性前部ぶどう膜炎の原因となります。

52問:ぶどう膜炎続発緑内障

答えはe

a. 隅角結節を伴う場合は活動性炎症があるということですので、眼圧上昇は炎症が原因と考えてまずは消炎治療を行います。

b. 膨隆虹彩に対してはレーザー虹彩切開術もしくは周辺虹彩切除術です

c. PASによる閉塞隅角が原因ならば、線維柱帯切除術もしくは隅角癒着解離術です。

d. 炎症が原因なのでステロイドなどで消炎を行います。

e. レスポンダーが疑われれば可能であれば中止します。

53問:脈絡膜剥離

答えはa, c

続発性脈絡膜剥離の原因としては以下のようなものが挙げられます。

  1. 脈絡膜の炎症によるもの
    ・眼外傷
    ・網膜光凝固/冷凍凝固
    ・原田病
    ・交感性眼炎
    ・強膜炎
    ・その他のぶどう膜炎
  2. 脈絡膜循環障害によるもの
    ・頸動脈海綿静脈洞瘻
    ・強膜内陥術後の渦静脈の圧迫
    ・小眼球
    ・Hunter症候群(強膜肥厚による)
  3. 低眼圧によるもの
    ・術後のリーク
    ・濾過手術後の過剰濾過
    ・裂孔原性網膜剥離
    ・穿孔性眼外傷
    ・毛様体機能不全
  4. 悪性腫瘍によるもの

54問:糖尿病に伴う虹彩炎

答えはb, e

糖尿病虹彩炎は急性発症で充血や眼痛、羞明などを認める片眼性のぶどう膜炎です。
所見としたらフィブリンや前房蓄膿を伴う強い前眼部炎症が特徴でしばしば虹彩後癒着を伴います。

コントロール不良の高血糖患者に発症し、HbA1cが10を超えるような患者にみられます。
糖尿病網膜症を伴うことが多いですが、重症度とは相関しません。

臨床的には急性前部ぶどう膜炎や細菌性眼内炎との鑑別が必要です。

55問:脈絡膜厚

答えはa, c

a. 近視眼では網膜と同様に脈絡膜も薄く、遠視眼で厚いです。

b. 高齢者になると脈絡膜厚さは薄くなります。

c. PCVでは脈絡膜厚が肥厚した症例が多く、そのような症例ではPDTも有効と考えられています。

d. CSCでは脈絡膜が肥厚するのが特徴です。

e. 原田病では急性期に脈絡膜厚の激しい肥厚を認めます。治療後病勢が落ち着いてくると脈絡膜厚は薄くなってきますが、正常よりも厚いままのことが多いです。
逆に原田病のように見えたとしても脈絡膜肥厚が無い場合は別の疾患を考える必要があります。

56問:間質性腎炎ぶどう膜炎(TINU)症候群

答えはc

TINU症候群は女児に多く、両眼性の虹彩毛様体炎を呈する疾患です。
尿中βミクログロブリンの上昇を認めます。
ぶどう膜炎は前眼部炎症が主体ですが、眼底では周辺部の滲出斑や後極の血管蛇行を認めたりDiscの過蛍光を認めたりすることもあります。
腎炎に対しては全身のステロイド治療を行い、治療反応性は良好です。

57問:HTLV-1関連ぶどう膜炎

答えはe

HTLV-1のキャリアであれば血中だけでなく、前房中にもHTLV-1ウイルスが検出されますので確定診断とはなりません。
HAUはあくまで除外診断です。

58問:母斑症

答えはa

色素失調症は生まれた時から特徴的な皮膚病変を認め、診断されます。
眼所見としては斜視が最も多く、先天白内障や萎縮を認める場合もあります。
また網脈の細動脈が閉塞し、未熟児網膜症のように新生血管を生じたり網膜剥離となることもあります。
ちなみに色素失調症はBloch-Sulzberger 症候群とも呼ばれるのでそちらの名前も覚えておくべきかと思います。

結節性硬化症の網膜過誤腫についてはノバルティスのページがよくまとまっています。
http://www.afinitor.jp/tsc/particulars/retinal_hamartoma.html

ちなみに結節性硬化症もBourneville-Pringle病と呼ばれることもありますので両方覚えておくべきです。

神経線維腫症Ⅰ型ではLisch結節が有名です。

Sturge Weberでは20〜70%にびまん性脈絡膜血管腫を伴い、滲出性網膜剥離を引き起こすことがあります。

von Hippel Lindau病では網膜血管芽腫を合併します。

59問:二重焦点眼鏡

答えはd

このような問題では遠用部と近用部がそれぞれどこが見えるかを考えればよいです。

遠用部は完全矯正で、1D調節できるので無限遠〜1mまで見ることがでぎす。

近用部は+2.5加入で40cmが見えます。さらに1D調節できるので1/3.5=約29cmまで近方が見えます

よって明視できないのは1m〜40cmになります。

60問:調節力

答えはd

遠点距離が網膜の後方2mなのでこの眼はS+0.5Dの遠視です。
近方20cmを見るにはS-5.0Dの位置まで調節する必要があるので、調節力は5.5Dとなります。

61問:logMAR視力

答えはa

logMAR視力はlog10(1/少数視力)で計算します。

logMAR2は視力0.01に相当します。全てを覚えるのは難しいので覚えやすい所だけでもまずは覚えておくと良いと思います。

少数視力0.1 → logMAR1.0
少数視力0.4 → logMAR0.4
少数視力0.5 → logMAR0.3
少数視力0.7 → logMAR0.2
少数視力1.0 → logMAR0

62問:プリズム

答えはd

プリズムの計算問題はベクトルの合成の要領で考えると良いです。

8Δ基底外方、6Δ基底上方ですので直角三角形を考えると

x^2= 6^2 + 8^2=100
x=10

です。

63問:麻痺性斜視の術式

答えはa, e

基本的にこの問題選択肢のような麻痺パターンでは第一眼位で複視がでてしまっているのが一番の問題点ですので、第一眼位での複視を無くすにはどうすれば良いかを考えると解き安いと思います。

a. 左眼が上斜視となっているので、右眼の下直筋をゆるめて両眼とも上斜視になれば第一眼位の複視が消えるので正しいです。

b. 上斜筋麻痺なので右上斜視および、外方回旋斜視となります。
上斜視による影響が強い場合には右下直筋を短縮するか、左下直筋を好転するかします。
回旋が強い場合には下斜筋を弱めたり、上直筋の耳側移動もしくは下直筋の鼻側移動を行います。

c. 右内斜視となるので、右内直筋後転や外直筋短縮、もしくは後述の上下直筋移動を行います。

d. 左外斜視になりますので、右眼をさわるなら右外直筋後転もしくは右内直筋短縮です。

e. 外転神経麻痺では内斜視が強い症例では内外直筋を触っても第一眼位を正中にもってこれない場合があります。
その場合は上下の直筋を外直筋側へ移動する様々な術式が考案されていますので以下に羅列しておきます。

  • Hummelsheim法:上下直筋の耳側半分を切腱し、外直筋付着部の腱に直接縫着する。
  • Schillinger法:上下直筋を付着部で切腱して外直筋寄りの強膜につけ直す。
  • Jensen法:上直筋の耳側半分と外直筋の上半分の筋同士を縫着し、下直筋も同様に縫着する。切腱を要しない。
  • 稲富法:上下直筋の耳側半分の筋自体を、外直筋近くの強膜に縫い付ける。切腱は行わない。
  • 上下直筋全幅移動術:稲富法をさらに低侵襲化したもので上下直筋の耳側を外直筋に向かって耳側側の強膜に縫い付ける。切腱も不要で簡便な術式。

64問:弱視

答えはc

a. 不同視弱視はピントの合わない方の眼が弱視となり抑制がかかるので不等像視とはなりません。

b. アイパッチなどで弱視治療を優先します。

c. その通りです。そもそも弱視では基本的に立体視不良です。

d. 弱視なので立体視不良です。

e. 子供は強い屈折差や乱視があったとしても眼鏡で矯正可能です。

65問:両眼視機能

答えはc

選択肢の中で正位を保つことができるのは間欠性外斜視のみです。

名前的に部分調節性内斜視も立体視できそうに思った方もいらっしゃるかもしれませんが、通常の調節性内斜視であれば遠視矯正で正位を保てるようになりますが、部分調節性内斜視は遠視矯正をしても斜視が残るものを言います。

66問:立体視閾値

答えはc

立体視閾値は60秒です

67問:色覚検査

答えはd

a. 100-hueはパネルD15のより詳しい版というイメージです。100と名前がついていますが100個ではなく85個のキャップを並べる検査です(パネルD15は15個を並べる)。
職業適正にはランタンテストなどが使われます(信号を咄嗟に見間違えないかを調べる検査)。

b. 石原式はスクリーニング、パネルD-15が程度判定で、failだった場合には正常の10分の1以下の色覚と判定されます。

c. one errorは正常でもみられます

d. 2色覚では、L錐体もしくはM錐体のどちらかが完全に機能していないので、混色目盛の全ての領域で等色を示しますので正しいです。

e. 確定診断はアノマロスコープでおこないます。

色覚異常のまとめはこちらを参照ください

68問:色覚異常の遺伝

答えはd

1型と2型色覚異常はX染色体劣性遺伝です。

父親がYと1型色覚のX染色体を持っています。

母親がXXどちらも正常だった場合は男児でも女児でも正常色覚となります。

母親が1型色覚の保因者であった場合は、1型色覚の男児も女児も生まれる可能性があります。

母親が2型色覚の保因者だったなら、2型色覚の男児が生まれる可能性はありますが、女児の場合は正常です。

よって2型色覚の女児は起こり得ないです。

69問:抗MOG抗体陽性視神経炎

答えはb, d

抗MOG抗体陽性視神経炎の特徴は以下のようなものがあります。

  • 男女比はほぼ同等、もしくはやや男性に多い
  • 視神経乳頭型が多く、MRI所見も前方の視神経に高信号を示しやすい
  • ステロイド治療に感受性が高い
  • 基本的に視力予後が良いですが再発しやすく、再発を繰り返していくうちに徐々に視力が低下することもあります

眼痛については基本的に視神経炎では眼球運動時痛がありますが、抗AQP4抗体陽性の場合眼痛が少ない傾向にあるという報告もあるのでそれと対比して聞かれているかと思います。

以下に抗AQP4抗体陽性視神経炎の特徴も書いておきます

  • 9:1で女性に多い
  • 比較的眼痛が少ない
  • 後部視神経炎が多く、MRIでも眼窩内後方の視神経に高信号を示しやすく、視交叉部に炎症が及び両眼性となる
  • ステロイド抵抗性が多い
  • 再発しやすい(抗MOG抗体陽性視神経炎ほどではない)

70問:動脈炎性虚血性視神経症

答えはa, d, e

動脈炎性虚血性視神経症(AAION)は側頭動脈炎によって引き起こされる視神経症です。

a. 血管炎では炎症により血沈(赤沈)の亢進を認めます。
ちなみに赤沈の数値は誤解されがちですが検査結果が赤色になっていても異常値というわけではありません。
正常値は年齢と性別によって違って
1時間値の正常上限は以下の通りです。

  • 男性 年齢/2
  • 女性(年齢+10)/2

b. 全身性疾患なので治療が遅れると両目に出てきます

c. 治療が遅れると視力予後不良です

d. ステロイドの大量投与をおこなわないと効きません

e. 確定診断のためには側頭動脈生検で巨細胞を確認します。巨細胞動脈炎とも呼ばれます。
ちなみに側頭動脈の炎症所見はskip lesionとなっているので生検でとってきた所が陰性だったとしても、臨床的に疑わしい場合は反対側の側頭動脈からも生検することもあります。
偽陰性を避けるためにも可能な限り長く取ってくる必要があります。

71問:球後視神経炎

答えはe

視神経炎は基本的には造影が最も診断に優れます。
単純のSTIR等でも評価できるのですが、再発例などでは過去の炎症も光ってしまうので現在activeな病巣かどうかの判断ができません。

最もわかりやすいのが脂肪抑制ガドリニウム造影の前頭断です。

72問:IgG4関連眼疾患

答えはd

IgG4関連眼疾患の日本の診断基準では

  1. 涙腺腫大
  2. 三叉神経腫大
  3. 外眼筋腫大

が3大症状と明記されています。

73問:Parinaud症候群

答えはe

中脳背側の障害はParinaud症候群とも呼ばれ、松果体腫瘍によるものが有名です。

主要な症状としては以下のものがあります。

  • 上方注視麻痺
  • 上方視をしようとした際の輻輳後退眼振
  • 眼瞼後退(Collier徴候)
  • 下方注視傾向(落陽現象)
  • 瞳孔散大
  • 対光近見反応解離

74問:眼圧の計算

答えはb

Goldmannの式によると

Fin(房水産生量) = C(線維柱帯房水流出率) × (IOP – Pe(上強膜静脈圧)) + Fu(ぶどう膜強膜流量)

ですので変形すると以下が答えです。

IOP = (Fin – Fu) / C + Pe

75問:緑内障点眼

答えはd

  • CAIとβは産生抑制
  • αとPGは副経路
  • グラナテックは主経路

と僕はざっくり覚えています。

産生抑制に関係する薬剤では、一般的に房水産生の多い日中の眼圧下降効果が強く、房水産生の少ない夜間の効果は弱いです。
CAIでは何故か夜間の眼圧下降効果の方が強いですが機序は不明です。

副経路に作用するものは眼圧に関係なく、時間も関係なく常に一定の眼圧下降効果を期待できます。

主経路に作用するものは眼圧依存性に眼圧下降効果があります。
高眼圧ではより効果が強く、低眼圧になるほど眼圧下降効果は弱くなります。

76問:緑内障と先天疾患

答えはa

白皮症ではメラニン産生が先天的にできない疾患で、眼底検査で白皮症眼底を認めます。
眼症状として、羞明、眼振があり、矯正不可能な視力障害を伴うことがありますが緑内障は基本的に伴いません。

77問:眼圧

答えはa, d

全身麻酔では一般的に下がります。

大量の飲水では血漿浸透圧の低下のため房水産生を促進して眼圧は上昇します。

日内変動は3〜6mmHg程度あり、10mmHgを超える場合は異常と言われます。

軽い運動後は一過性に眼圧は下がります。

78問:緑内障配合点眼

答えはc

ビマトプロスト(ルミガン)の合剤はありません

79問:続発緑内障

答えはa, d

シュレム管より後方とのことですので、上強膜静脈圧の上昇する疾患が答えです。
主な疾患として以下のものが挙げられます。

  • 頸動脈海綿静脈洞瘻
  • 海綿静脈洞血栓症
  • 特発性上強膜静脈圧上昇
  • 縦隔腫瘍
  • 甲状腺眼症
  • 球後腫瘍
  • スタージ-ウェーバー症候群
  • 上大静脈閉塞

shwartz症候群は裂孔原性網膜剥離で視細胞外節が隅角につまって眼底が上がる疾患です。

ghost cell glaucomaは硝子体内の変性した赤血球が前房内に移動してきて線維柱帯に詰まることで眼圧が上がる疾患で、外傷などでみられます。

Weill Marchesaniは水晶体脱臼により隅角閉塞を引き起こします。

80問:van Herick法

答えはd, e

a. 2度以上であったとしても閉塞隅角の可能性はあります。

b. sheieは隅角鏡での所見でgradeが上がるにつれて隅角は狭いのに対し、van Herickは細隙灯所見でgradeが上がるにつれて隅角は広くなります。

c. スリット光を細くして耳側に60度傾けて評価します。

d. その通りです。

e. その通りです。

81問:緑内障診療ガイドライン

答えはa, d

緑内障診療ガイドライン(第4版)(日本緑内障学会HP)

上記に記載されている小児緑内障の病型分類は以下の通りです。

  1. 原発先天緑内障
  2. 若年開放隅角緑内障
  3. 先天眼形成異常に関連した緑内障
  4. 先天全身疾患に関連した緑内障
  5. 後天要因による続発緑内障
  6. 白内障術後の緑内障

82問:MRI検査

答えはa

穿孔性外傷では金属異物が入っている可能性あるので避けるべきだという問題だと思います。

他の選択肢については調べても特にMRIについて出てこなかったので、関係ないはずです。

緑内障手術ではチューブシャント(プレートのあるもの)については特にMRIについては言及されていませんでしたが、エクスプレスについては3テスラまでならOKです。

83問:外傷性眼疾患

答えはb

a. 網膜振盪は、打撲によって視細胞外節と網膜色素上皮の崩壊浮腫を生じる病変のことで、網膜外層の混濁をBerlin混濁と呼びます。

b. bull’s eyeは錐体ジストロフィーやクロロキン網膜症でみられる所見です。

c. vossius ringは外傷性眼の前嚢に瞳孔径に沿って円形の虹彩色素が沈着したものです。

d. 毛様体上皮裂孔による網膜剥離は外傷やアトピー性皮膚炎に伴う網膜剥離でみられます。

e. Purtscher網膜症は交通事故でハンドルによる胸部打撲や顔面骨折等、骨折による脂肪塞栓や空気塞栓によって眼底出血を起こす疾患で、綿花様白斑を伴います。

84問:眼窩下壁骨折

答えはa, e

a. 眼窩底骨折では鼻出血を伴うことがあり、鼻をぶつけていないにもかかわらず鼻出血がある場合には眼窩底骨折があるものだと思ってCTを気合い入れて見るべきです。

b. 眼窩底骨折と視力低下は直接的には考えにくいです。
視力低下があれば視神経管の障害を疑います。

c. 眼球突出ではなく、むしろ眼球陥凹が時間がでてくることがあります。

d. 開口障害がある場合は頬骨の骨折を疑います。

e. 眼窩下壁には、三叉神経第2枝の上顎神経の枝である眼窩下神経が通っています。
眼窩下壁骨折でこの神経が障害されると、下眼瞼の皮膚、鼻翼、鼻粘膜の前部、上唇などの知覚障害をきたします。

85問:薬物と眼副作用

答えはe

a. ジゴキシン(ジギタリス)の副作用で全てのものが黄色がかってみえるという黄視症というものがあります。ちなみに余談ですがゴッホの絵では本来緑の部分も黄色で描いている箇所が多くあり、黄視症だったのではという説があります。
青視症というものもあり、これはバイアグラの内服で報告されています。
赤視症はアルコール過剰摂取で起こります。

b. パクリタキセルでは黄斑浮腫が有名で、眼底造影検査では異常を認めないのにOCTで嚢胞様黄斑浮腫を両眼性に認めるのが特徴です。

c. アミオダロンは脂溶性の薬物でほぼ全例で角膜に渦巻き状の沈着を起こします。また視神経に沈着すると視神経症を引き起こすこともあります。

d. 薬剤性の白内障としてはステロイドとクロルプロマジンが最も有名です。

e. クロロキンは網膜症を引き起こしましたが、視神経炎の報告は無さそうです。

86問:点眼薬

答えはc

点眼瓶によって多少かわりますが、基本的に一滴30〜50μlでるようになっており、5mlだとだいたい100滴で一本使い切るようにできています。
1日3回片眼に点眼なので約30日が正解です。

結膜嚢内に保持できる液量は25〜30μlであり、涙液が7μlほど入っているので1滴入れば十分結膜嚢内を満たす計算になります。

87問:点眼薬の薬効

答えはb, c

a. 86番の解説の通り点眼は1滴で十分結膜嚢内を満たすので、滴下数を増やしてもこぼれるだけです。

b. 濃度を上げるとそれだけ眼内移行する量も増えますので正解としました。

c. 粘稠度を上げた懸濁液では結膜嚢に滞留する時間が長くなるので薬効を上げることができます。

d. 防腐剤の濃度が高くなると上皮障害が起きやすくなり、薬効を上げることができます。キサラタンなどはそれを利用しているようです。

e. 角膜上皮は疎水性で、角膜実質は親水性です。脂溶性点眼は上皮を超えやすく、水溶性点眼は実質を超えやすいです。
一般的には水溶性点眼のほうが浸透においては有利なようですが、水溶性を高めれば高めるほど薬効が上がるのかと言われると疑問ですのでこれを不正解選択肢としました。
脂溶性と水溶性のバランスが吸収面において重要です。

88問:術中虹彩緊張低下症候群(IFIS)

答えはa, b

IFISを引き起こすのは基本的にα1A受容体ブロック作用のある薬剤で起こります。

前立腺肥大治療薬が有名ですが降圧薬や抗精神病薬にもα1ブロック作用があるものがあります。主要なものを以下に挙げておきます。

  • 前立腺肥大治療薬
    タムスロシン塩酸塩(ハルナール)
    ナフトピジル(フリバス)
    シロドシン(ユリーフ)
    ウラピジル(エブランチル)
  • 降圧薬
    ドキサゾシンメシル塩酸塩(カルデナリン)
    ブナゾシン塩酸塩(デタントール)
    ラベタロール(トランデート)
    プラゾシン(ミニプレス)
  • 抗精神病薬
    パリペリドン(インヴェガ、ゼプリオン)
    リスペリドン(リスパダール、コンスタ)
  • 緑内障点眼
    ブナゾシン(デタントール点眼)

ブナゾシン塩酸塩(デタントール)にはα1ブロック作用があり、点眼薬の添付文書にはIFISの記載がありますが、内服薬の添付文書にはIFISが記載されておりませんので正解選択肢とはしませんでした。
理論上は起こりそうな気もしますが、α1非選択性ブロッカーなので内服では起こりにくいようです。

89問:リドカイン

答えはe

リドカインの添付文書によると200mgだそうです。
第25回専門医試験で類題が出ていました。

90問:斜視手術

答えはe

a. 前眼部を栄養する前毛様動脈は外直筋の中を走行しており、一度に3直筋以上手術で触ってしまうと前眼部虚血が起こり、角膜浮腫や虹彩毛様体炎を引き起こします。

b. 強膜穿孔は強膜通糸の際の合併症で、特に近視眼では強膜が薄いので注意が必要です。

c. 強膜穿孔に伴う網膜剥離が起こり得ます。これは斜視手術の合併症の強膜穿孔により二次的に起こっているので、斜視手術の合併症と言ってもいいのか疑問です。
一応斜視手術後の網膜剥離はいくつも報告があります。

d. 下斜筋と下直筋の筋鞘は癒合してLockwood靭帯となります。そしてその前部は下眼瞼の瞼板にまで及んでいます。ですので大量の下直筋後転を行うと下斜筋や下眼瞼も後方へずれてしまい,下眼瞼後退を引き起こします。

e. 上眼瞼にあるwhitnall靭帯は、眼瞼挙筋膜と滑車部の上斜筋腱を釣り上げる働きをしています。
手術時に上斜筋腱を傷つけてしまうと、上眼瞼挙筋の弱化により上眼瞼内側の眼瞼下垂が起こります。

上眼瞼睫毛の内反が起こるという報告は見つけられませんでしたので消去法でこれが答えだと思いました。

91問:角膜内皮移植

答えはa, d

a. 全層角膜移植と比べてDSAEKでは最初の6カ月から1年は減少率が高いが、その後減少率は緩やかとなり、2-3年でDSAEK後の内皮細胞密度の残存率が上回るとの報告があります。

b. 瞳孔ブロックとドナーの脱落についての因果関係はよくわかりませんでした。

c. 感染症としてはヘルペスやサイトメガロウイルスの再燃や、ホストドナー層間感染の報告がありますが、ドナー由来の真菌ではありません。

d. 拒絶反応の発生率が低いだけでなく、起きたとしても軽度の異常のことが多いので診断は困難です。

e. 脱落した場合には再度空気注入を行います。

92問:涙道手術

答えはd

鼻涙管閉塞を繰り返す場合にはDCR(涙道鼻腔吻合術)が良い適応です。

先天性鼻涙管閉塞に関しては、1歳までに自然開通する確率が高いので様子をみるべき、3ヶ月経過をみても改善なればプロービングをすべきなどと医師によって意見は違いますが、自然開通を期待してまずは経過観察しつつ、マッサージを試みたりします。
直ちにというのが間違いです。

93問:トーリック眼内レンズ

答えはd

トーリックIOLは1度ずれると約3%矯正効果が失われ、30度ずれるとほぼゼロとなります。

94問:眼心臓反射

答えはa, e

眼心臓反射を起こしやすいのは外直筋をひっぱる手術なので、斜視と強膜内陥術です。

95問:シリコーンオイル

答えはb, d

a. 油ですので疎水性です。

b. 無色透明です。

c. 比重は0.96〜0.98、屈折率は1.40(水は1.33)

d. これヤラシイのですがcs(センチストークス)は粘度の単位でmm2/sと等しく、添付文書には980〜1350mm2/sとなっているのでこれが正解です。
添付文書にもcs単位が使われていないのでmm2/sで聞いて欲しいです…

e. 網膜と接する部分で増殖性変化を助長します。

96問:強膜内陥術

答えはd

a. 冷凍凝固や牽引糸による 外眼筋の損傷、強膜バックル材による機械的変化などによって眼球運動障害や斜視を起こすことがあります。

b. 広範囲に外眼部をさわるので術後眼瞼腫脹や下垂を起こすことがあります。

c. 渦静脈の圧迫により、脈絡膜剥離を引き起こします。

d. 前房内操作が無いので内皮障害はありません。硝子体手術で長期シリコーンオイル挿入の合併症でみられます。

e. 毛様体前方回旋や毛様体浮腫によって引き起こされることがあります。

97問:網膜光凝固

答えはb, c

その他特殊なものとは、裂孔原性網膜剥離、円板状黄斑変性症、網膜中心静脈閉鎖症による黄斑浮腫、類囊胞黄斑浮腫及び未熟児網膜症に対する網膜光凝固術並びに糖尿病性網膜症に対する汎光凝固術を行うことをいう。

令和2年度 診療報酬点数より引用

とのことです。
円板状黄斑変性は加齢黄斑変性の昔の呼び名のようなのでこれが正解だと思います。

98問:増殖糖尿病網膜症の手術

答えはa, d

硝子体手術での止血は教科書的にはまず眼圧をあげて、それでも止まらなければジアテルミーでの直接凝固です。

99問:光凝固治療が適応となる疾患

答えはa, d

各疾患のまとめ記事のリンクを貼っておきます。

100問:強膜内陥術

答えはb, e

a. 下液の排出部位としては網膜剥離の丈の高い所で、水平直筋の近傍が脈絡膜中大血管が無いので適しています。
また、網膜下増殖を伴うところも排出部位に適しています。これは増殖膜で網膜がピンとはっているので網膜が排出部に嵌頓しにくくなっているからです。
強膜内陥部は網膜を傷つけてしまった場合の安全性が高いので下液排出部位として適切です。

b. ジアテルミーの方が冷凍凝固よりも損傷は強いです。

c. マットレス縫合はバックル口径より1〜2mm広い幅です。

d. 縫合は5-0ポリエステル(ダクロンなど)を使います。

e. 説明文の通りです。

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