第34回 眼科専門医認定試験 一般問題の解説を行います。
公式解答は発表されておりませんので間違い箇所がございましたらお問い合わせ欄もしくはTwitterのDMより指摘いただければ助かります。
問題については以下↓の眼科学会ホームページよりダウンロード出来ます。
目次
1問:房水産生
答えはa
a. その通りです。房水は睡眠時に産生が低下するので、産生抑制作用のあるβブロッカー点眼などでは夜間の眼圧下降効果は弱いです。
b. 加齢とともに産生は低下します。
c, d. 血液房水関門は虹彩血管と毛様体無色素上皮の間に形成されています。
e. PG関連薬は副経路を亢進させます。
2問:水晶体嚢
答えはd
水晶体嚢は前赤道部増殖帯付近が一番厚く21μmで、一番薄いのは後嚢中央部で4〜5μmです。
ちなみに前嚢中央部は14〜15μm程度です。
3問:眼の発生
答えはa
眼の発生過程は、視溝→眼小窩→眼胞→眼杯です。
4問:神経外胚葉からの発生
答えはd, e
外眼筋は中胚葉
水晶体、角膜上皮は表層外胚葉由来です。
発生の覚え方については発生の覚え方の記事を参照ください。
5問:毛様体
答えはc
調節に関しては主に輪状筋が関与しています。
調節が起こるときは、輪状筋が収縮して、チン氏帯が弛緩します。
逆に調節がなくなる、つまり水晶体が薄くなるときは、輪状筋が弛緩します。
ちなみに輪状筋はMüller筋、縦走筋はBrücke筋という別名でも過去問に出題されていますのでこちらも覚えておいてください。
6問:前眼部の解剖
答えはb
ベルガー腔は水晶体の後方の、前部硝子体と後嚢の隙間です。
7問:角膜の解剖
答えはc
中心角膜厚は約520μm程度ですが、上皮10%、実質90%、内皮1%程度の厚さと覚えておくとよいと思います。
同様の問題が25回の一般問題でも出題されていました。
8問:放射状乳頭周囲毛細血管
答えはa
網膜の毛細血管のうち、放射状乳頭周囲毛細血管は最も表層の神経線維層に分布します。
表層毛細血管網は神経節細胞層に分布、中層および深層毛細血管網は内顆粒層の上端から下端にまたがるように分布しています。
これらの血管はOCTアンギオグラフィーで評価できるため緑内障など様々な疾患との関連性がわかってきています。
緑内障ガイドライン第5版でも、OCTAにおいて進行した緑内障ほど網膜表層血流が低下していることや、視神経乳頭周囲の深層血流脱落所見が緑内障進行と関係することが注目されていることが明記されています。
9問:動眼神経
答えはb
外眼筋において、対側支配になっているのは上直筋と上斜筋です。
「上」がついている外眼筋は対側支配という様に覚えるようにしています。
10問:眼球運動
答えはb, d
上直筋の作用は以下の3つ
- 上転
- 内転
- 内方回旋
上斜筋の作用は以下の3つ
- 下転
- 外転
- 内方回旋
この辺はややこしいので間違えてしまった人は眼球運動の基礎についての記事を参考にしていただければと思います。
11問:フルオレセイン蛍光眼底検査
答えはc
a. 正常成人では10〜12秒、高齢者では12〜15秒程度です。
b. アナフィラキシーショックの件数については明記されていないものの、こちらを見ると重症副作用発症率は0.006%程度ですので、2万人に1人くらいです。
数千件に1件ペースだと、1日に何件もFAGを撮るような大きい病院では毎年1件ほどアナフィラキシーショックが出る計算になりますが流石にそこまで多くは無い印象です。
c. その通りです。残りはフリーで存在します。
d. window defectは網膜色素上皮の萎縮によって、背景の脈絡膜蛍光が過蛍光として観察される所見です。
e. 蛍光波長は、励起波長よりも波長が長くなります。ですので緑光で励起された場合は緑より波長の短い青の蛍光は発しません。
12問:インドシアニングリーン蛍光眼底検査
答えはc, e
a. 血漿中では98%が血中蛋白と結合するので、正常血管からは漏出しません。
b. インドシアニングリーンは肝代謝です。肝臓の解毒機能をみるための検査としてもICGは使われます。
c. その通りです。
d. 800nm程の波長の光で励起され、835nmの波長をもつ蛍光を発します。可視光は網膜色素上皮を越えることができないので、より深くまだ届く近赤外線光を用います。
e. その通りです。
13問:近見立体視検査
答えはc, d
ハエが書いてあるのがTitmusステレオテストで、猫や星が書いてあるのがLangステレオテストで、どちらも近見立体視の検査です。
ちなみに、他の選択肢は全て網膜対応検査です。
他には赤フィルタ法や残像試験、残像転送試験などがあります。
網膜対応検査の中で最も日常視に近いのはバゴリーニということも併せて覚えておいてください。
14問:定期健康診断
答えはa
定期健康診断の項目
- 既往歴及び業務歴の調査
- 自覚症状及び他覚症状の有無の検査
- 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査
- 胸部エックス線検査及び喀痰検査
- 血圧の測定
- 貧血検査
- 肝機能検査
- 血中脂質検査
- 血糖検査
- 尿検査
- 心電図検査
眼底検査は特定健診において、医師が必要と認めた場合に行う検査項目です。
15問:角膜移植ドナー
答えはb
ドナーとなることが出来るのは次の疾患または状態を伴わないことが要件です。
- 原因不明の死
- 全身性の活動性感染症
- HIV抗体, HTLV-1抗体, HBs抗体, HCV抗体などが陽性
- クロイツフェルト・ヤコブ病およびその疑い、亜急性硬化性全脳炎、進行性多巣性白質脳症の遅発性ウイルス感染症、活動性ウイルス脳炎、原因不明の脳炎、進行性脳症、ライ(Reye)症候群、原因不明の中枢神経系疾患
- 眼内悪性腫瘍、白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫などの悪性リンパ腫
次の疾患または状態を伴うドナーの場合は移植を行う医師に当該情報を提供する必要があります。
- アルツハイマー病(クロイツフェルトヤコブ病との鑑別が必要なため)
- 屈折矯正手術既往眼
- 内眼手術既往眼
- 虹彩炎などの内因性眼疾患
- 梅毒反応陽性(陽性でも3日以上4℃で保存されたものならOK)
16問:身体障害者認定
答えはd, e
a. 視野障害は2〜5級、視力障害は1〜6級までです。視野障害の等級は視力障害から上も下も1ずつ少ないと覚えています。
b. 5年以上の臨床経験がある眼科医は指定医の資格をとることができます。資格があると診断書・意見書を書くことが出来ます。最終的な等級認定は市町村が行います。
c. ハンフリーでも評価できます。
d, e. これはそれぞれ視力障害6級、視野障害5級の基準です。特に一番低い等級の基準はよく出るので覚えておきましょう。
17問:遺伝子検査
答えはb, d
網膜芽細胞腫では癌抑制遺伝子であるRb遺伝子の変異が重要で保健収載されています。
Rb遺伝子変異は常染色体優性遺伝です。
角膜ジストロフィについても遺伝子検査が保険収載されています。
遺伝子異常についてはこちらの角膜ジストロフィのまとめ記事を参照ください。
18問: 眼窩の悪性腫瘍
答えはd
悪性リンパ腫は眼窩腫瘍全体の10〜15%を占めており、眼窩悪性腫瘍では最多です。
基本的に非ホジキンB細胞リンパ腫で、なかでもMALTリンパ腫が最も多く眼窩リンパ腫の60%程度を占めます。
次に多いのがびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)が30%程度、残りは濾胞性リンパ腫やマントル細胞リンパ腫などがあります。
19問:涙腺腫大と外眼筋肥厚
答えはa, d
涙腺腫大や外眼筋肥厚をきたす疾患としてはバセドウ眼症、IgG4関連疾患、特発性眼窩炎症の3つを鑑別に挙げる必要があります。
多発血管炎性肉芽腫症(旧ウェゲナー肉芽腫症)でも眼球運動障害や、眼窩内病変を認めることがありますが炎症性の肉芽腫によるものや血管炎に伴う外眼筋麻痺が原因ですので、筋肥厚は生じません。
筋が腫れているように見えて、実は腫瘍性病変に圧排されているだけということもありますので、その際には多発血管炎性肉芽腫症や悪性リンパ腫などを考える必要があります。
20問:涙液の組成
答えはc, d
21問:涙道の解剖
答えはb, d
a. 蝶形骨とは接していません。
b. その通りです。
c. Muller筋ではなくHorner筋があります。
d. 涙小管の上皮は重層扁平上皮です。涙囊は多列円柱上皮ですので勘違いしないように要注意です。
涙小管は外界とも近いので刺激に耐えられるよう重層扁平上皮になっていますが、涙囊まで異物が入ってくることはあまりないので円柱上皮です。
消化管も同じように外界に近い口腔や食道は重層扁平上皮ですが胃からは円柱上皮になります。
e. これは垂直部と水平部の長さが逆に書いてあるのだと思います。
22問:薬剤性涙道閉塞
答えはb, e
涙道閉塞といえばTS-1が有名ですが、ドセタキセルによるものも多数報告されています。
参考:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjphcs/40/6/40_360/_pdf
23問:結膜について
答えはa
a. 結膜には吻合が豊富な発達したリンパ管網が存在しますので正しいです。結膜リンパ管拡張症などの疾患が存在することからもリンパ管が発達していることがイメージ出来ると思います。
b. 結膜は重層円柱上皮です。
c. Krause腺は球結膜の円蓋部にあります。
d. Henleの陰窩は瞼結膜には存在します。
e. 杯細胞はムチンを分泌します。
マイボーム腺から分泌される脂質の構成成分がワックスエステルで、コレステロールエステルと共に脂質を構成します。
24問:細菌性結膜炎
答えはa, b, c?
a. おそらく出題者としてはb, cを解答と想定しているようですが、本邦での起因菌の調査では表皮ブドウ球菌が最も多かったとの報告もあり、この選択肢も正しいように思います。
EyeWikiでも起因菌は黄色ブドウ球菌や肺炎球菌、インフルエンザ桿菌が主だと記載されています。
参考文献(リンク先で本文読めませんが):多施設共同による細菌性結膜炎における検出菌動向調査
b. その通りです。難治性結膜炎では涙点の観察を必ず行う必要があります。
c. その通りです。初期だとアデノウイルス結膜炎と見分けがつかないことがありますが、なかなか治らなくて濾胞が癒合してきた場合にはクラミジアを考えます。
d. 淋菌はニューキノロン系に耐性ですので、ベストロン点眼やセフトリアキソンの点滴を点眼として使います。
e. クラミジアではなく、MRSA結膜炎のことだと思います。
25問:杯細胞が増加する疾患
答えはc, d
結膜の杯細胞は急性炎症が起こると一時的に増加します。
一方で、ドライアイなどにより化生を起こすと減少します。
類天疱瘡やスティーブン・ジョンソン症候群により角化が進むとさらに減少し、観察されなくなっていきます。
26問:ピマリシン眼軟膏
答えはa, b
これは難しそうに見えて、真菌はa, bのみですのでこれらを選べば正解です。
ただ、ピマリシンは主に糸状菌の角膜炎に対して用いられ、中でも頻度の高いフサリウムに対して第一選択の薬剤です。
Candida albicansを含む酵母様真菌に対してはフルコナゾールなどのアゾール系が基本的に用いられます。特にフルコナゾールは点滴をそのまま濃度調整せずに点眼出来るので使いやすいです。
一応ピマリシンの添付文書の効能にカンジダ属やアスペルギルス属への効能も書いてあるのでこれが答えで良いと思います。
ちなみに試験には絶対出ませんが、Candidaにも色々な種類があります。
albicansは最もメジャーで色々な抗真菌薬に対して感受性が良好でフルコナゾールが第一選択になります。
それに対してglabrataやkruseiはフルコナゾールに耐性ですが、ミカファンギン系が割とよく効きます。
ざっくりとアルビカンスは耐性があまり無くて、非アルビカンスの場合は感受性も要注意くらいに覚えておいていただければと思います。
27問:角膜ジストロフィ
答えはb, c
Congoレッド染色で陽性となるのはアミロイドが沈着する疾患です。
詳細は角膜ジストロフィのまとめ記事を参照ください
28問:カタル性角膜潰瘍
答えはc
a. 名前の通り角膜潰瘍ですのでフルオレセインで染まります。
b. ぶどう球菌の産生する毒素に対する免疫応答ですのでステロイドが有効です。
c. 潰瘍部には感染を起こしているわけではなく、眼瞼に感染したぶどう球菌の産生する毒素が原因ですのでこれが誤りです。
d. その通りです。眼瞼と角膜の接触するところに潰瘍が生じます。一方でリウマチなどの周辺部潰瘍は輪部の血管からの免疫応答が原因ですので輪部との連続性があり透明帯を持ちません。
e. その通りです。0時や6時は眼瞼の裏に角膜が当たりますし、3時や9時は眼瞼に接触しません。ちょうど眼瞼の縁と角膜が接触するところが好発部位となるので2, 4, 8, 10時が好発です。
29問:Thygeson(タイゲソン)点状表層角膜炎
答えはc
Thygeson点状表層角膜炎の治療についてはこちらを参照ください。
30問:ペルーシド辺縁角膜変性
答えはc
脂質沈着を伴うのはTerrien角膜変性です。
角膜穿孔をともなうのはリウマチなどによる周辺部潰瘍やMooren潰瘍です。
ペルーシド角膜変性は円錐角膜とよく似た疾患ですが、臨床的にも上記の疾患とも鑑別が必要な場合があるので鑑別点を理解しておきましょう。
ペルーシド角膜変性について詳しくはこちらの記事を参照ください。
31問:LASIK後の合併症
答えはb, c
類題が31回一般39番で出ていましたね。
主要なLASIKの合併症についてまとめておきます。
- 術後感染
術後フラップ下に細菌感染を起こすことがあります。
起因菌として非定型抗酸菌が特徴的です。 - 夜間視の変化
レーシックでは角膜中央6mm程度を削ります。
夜瞳孔が広がると、削っていない周囲角膜からの光も瞳孔に入るので光に後光がさしたような輪が見える現象(ハロー)や光が広がって眩しく見える現象(グレア)を感じるようになります。 - ドライアイ
角膜を切除することで角膜の三叉神経を切ってしまい角膜知覚の低下によるドライアイが生じます。 - 不完全フラップ
角膜フラップ作製時に、角膜実質へのレーザー照射で十分なフラップが出来ない場合があります。 - フラップのずれ
術後角膜に力が加わるとフラップにズレが生じることがあります。 - フラップ下層間炎症
フラップと実質の間に炎症が強く出ることがあります。 - 角膜上皮下混濁
PRK後に生じる一過性の角膜混濁です。 - 上皮迷入
フラップの接着が不良だったり、フラップの下に角膜上皮細胞が残っていたりした場合に角膜上皮細胞がフラップの下で増殖して混濁を生じることがあります。 - 角膜拡張症(ケラトエクタジア)
まれに体質的に術後角膜が薄くなり突出してきて術後近視がどんどん進むことがあります。円錐角膜のようなイメージです。
32問:上皮型角膜ヘルペス
答えはe
上皮型に対する初期治療はヘルペスウイルスに対してしっかりと効かせるためには1日5回が適切な転入回数になります。
およそ2週間程度続けますが、それ以上5回で続けていると上皮障害の遷延化や栄養障害性角膜炎をきたすことがあり、ヘルペス角膜炎再燃と鑑別する必要があります。
効果が出ていれば適切に漸減していきます。
33問:角膜移植後の角膜感染症
答えはb
角膜移植後は長期的にステロイドを使用するので免疫抑制状態となりますのでカンジダなどの酵母型真菌感染が起こりやすいです。
また、ヘルペスや帯状疱疹ウイルスによる角膜炎なども起こることがあります。
サイトメガロウイルスも術後に角膜感染症を引き起こしますが、頻度的にも酵母型真菌が答えでよいかとおもいます。
緑膿菌やアカントアメーバはコンタクト関連の感染、糸状菌は木の枝などによる角膜外傷後に代表的です。
34問:角膜混濁を来す疾患
答えはa, c, e
a. 腎不全があると帯状角膜変性により角膜混濁をきたすことがあります。
b. Coats病は網膜血管の異常をきたす疾患で、角膜混濁はきたしません。
c. wilson病は銅の代謝不全を起こす疾患で、排泄できなかった銅が全身に沈着して様々な異常をきたします。角膜に銅が沈着することで角膜混濁をきたし、カイザーフライジャー角膜輪と呼ばれます。
d. 下垂体腫瘍では両耳側半盲が特徴的ですが、角膜混濁とは関係ありません。
e. 多発性骨髄腫では比較的稀ですが角膜混濁をきたすことがあり、両眼性のびまん性混濁や実質の様々な層に混濁が見られます。これは免疫グロブリンのM蛋白が沈着していると考えられています。
また、高カルシウム血症や腎機能障害による帯状角膜変性も起こり得ます。
35問:網膜格子状変性
答えはd, e
a. そのようなことはありません。
b. 頻度は5〜10%です。
c. 網膜が菲薄化しています。
d. その通りです。ですので後部硝子体剥離の際に辺縁に裂孔が出来て網膜剥離へと至ります。格子状変性の1%程度に裂孔や網膜剥離を生じます。
e. 格子状変性の上には硝子体液化腔が形成されており、格子状変性巣内に円孔があると液化硝子体が網膜下へ回って網膜剥離へと進行します。これは若年者の網膜剥離の主要な原因です。
36問: 網膜色素上皮下の病変
答えはd
a. 軟性ドルーゼンはRPE下の病変です。これに対してreticular pseudo drusenはRPEよりも網膜側に沈着しますので合わせて覚えておいてください。
b. 悪性リンパ腫も基本的にRPE下の病変として観察できます。
c. ポリープ状病巣はRPE下にできます。
d. リポフスチンがRPEと網膜の間に沈着する疾患ですのでこれが答えです。
e. PNVはtype1CNVですのでRPE下です。
37問:網膜芽細胞腫
答えはa
a. その通りです。
b. 特発性もありますが、癌抑制遺伝子のRb遺伝子異常によるものもあり、これは常染色体優性遺伝です。
c. 性差だけでなく人種、国、地域で違いはありません。
d. Rb遺伝子異常があるものでは両眼発症は稀ではありません。
e. 15000〜20000出生あたり1名発症する頻度です。日本では年間80名程度が新規発症します。
38問:点状脈絡膜内層症(PIC)
答えはc
a. 近視の若い女性に多いです。
b. 基本的に両眼性です。
c. OCTでは網膜外層の高信号として病変を観察できます。
d. 近視眼に多いですが、強度近視眼に多いというわけではありません。
e. IAでは低蛍光となります。ちなみにFAGでは初期から後期まで過蛍光となります。
PICについてはこちらの記事も参考にしていただければと思います。
39問:急性帯状潜在性網膜外層症(AZOOR)
答えはb
a. 近視の若年女性に好発します。
b. 内層ではなく外層の菲薄化を認めます。
c. 視神経を中心にその周りの外層障害が起こることが多く、それに対応してマリオット盲点拡大を認めます。
d. その通りです。時にRAPDも陽性となるため視神経炎と鑑別が必要なこともあります。
e. その通りです。
AZOORについてはこちらのまとめも参考にして頂ければと思います。
40問:糖尿病網膜症の進行危険因子
答えはc
糖尿病網膜症ガイドライン(第1版)に記載されているリスク因子は以下の通りです。
- 糖尿病罹患期間が長い
- 若年発症
- 高血糖
- 低血糖
- 高血圧
- 脂質異常症
- 腎機能低下
- 妊娠
- 身体活動量が少ない・座位時間が多い
- 喫煙
41問:網膜中心動脈閉塞症(CRAO)
答えはc, d
a. 網膜内層は網膜血管由来、外層は脈絡膜血管由来で栄養されているので内層の浮腫がみられます。黄斑部だけは外層が剥き出しで内層が存在しないため、cherry red spotとなります。
b. 原因は血栓症や塞栓症ですので強度近視は関係ありません。
c. b波の由来となる双極細胞の細胞体が内顆粒層に存在しますので、内層障害が起こるCRAOではb波が減弱して陰性型となります。
ちなみに細菌性眼内炎でも網膜動脈の障害が起こりますので、硝子体混濁を伴う眼内炎の時にERGでb波減弱があれば広範に網膜が障害されているサインですのですぐに手術が必要です。
d. その通りです。OCTAで黄斑部血管密度を計測することが出来る様になり緑内障やRVO、糖尿病などの疾患との関連が研究されています。
参考文献: https://bmcophthalmol.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12886-019-1152-8
e. 本来は脈絡膜の血流を司る血管が黄斑部の血流を司っていることがあり、これを毛様網膜動脈と呼びます。これがある人にCRAOを起こしても黄斑部の血流が保たれる黄斑回避となることがあります。毛様網膜動脈は約20%に存在すると眼科学に記載があります。
42問:網膜色素変性
答えはa, d
a. 様々な原因遺伝子や遺伝形式のものが報告されていますが、意外と孤発例のものが多い(49〜56%)ようです。
b. 初期から高度に障害されていることが多いです。
c. 初期症状は夜盲です。
d. Usher症候群は難聴と網膜色素変性症をきたす疾患ですので正しいです。
e. 網膜色素変性症に合併する白内障は後嚢下白内障が特徴的です。
網膜色素変性症のガイドラインも参考になりますので一度は読んでおくと良いと思います。
43問:Coats病
答えはd
a. 16歳以下の男児に多いです。
b. 片眼性です。
c. 遺伝性はありません。
d. 無血管野に対して光凝固を行います。
e. 重症例では滲出性網膜剥離を生じます。
Coats病のまとめ記事についても参考にしていただければと思います。
44問:硝子体血管系遺残
答えはa, e
a. その通りです。小眼球、白色瞳孔により発見されることが多いです。
b. 非遺伝性で片眼性です。
c. 石灰化は認めません。白色瞳孔で石灰化があれば網膜芽細胞腫を考えます。
d. 抗VEGFは有効ではありません。
e. 後眼部型は網膜異形成が高度で手術でも復位困難であったり、極度の小眼球を呈したりするので予後不良です。
45問:サイトメガロウイルス虹彩炎
答えはe
血清ウイルス抗体価では診断できません。前房内のPCR検査が有用です。
他の選択肢についてはCMV虹彩炎についてのこちらの記事を参照ください。
46問:疾患と所見の組み合わせ
答えはd
a. 眼内の炎症を繰り返しながら視神経乳頭に新生血管を生じることがあります。
b. 原田病と同様に毛様体剥離を伴って浅前房となることがあります。
c. 糖尿病虹彩炎、急性前部ぶどう膜炎、細菌性眼内炎などでは前房内にフィブリン析出を伴うぶどう膜炎を呈します。
d. 隅角色素は増加ではなく減少です。
e. TINU症候群では両眼性の虹彩毛様体炎が主な所見です。再燃を繰り返すうちに汎ぶどう膜炎となることがあります。
網膜血管炎は稀なので微妙ですが、消去法でこれは正しいと言うことで良いと思います。
47問:原田病
答えはa, e
皮膚白斑や夕焼け状眼底は回復期の所見です。
OCTでは脈絡膜肥厚を伴います。
48問:急性前部ぶどう膜炎
答えはc, d
急性前部ぶどう膜炎といえば強直性脊椎炎に合併するというのが有名だと思います。
強直性脊椎炎はもう少し広い分類では「脊椎関節炎」の中に分類されます。
類炎疾患として以下の疾患があり、これらの疾患でも急性前部ぶどう膜炎をきたします。
- 炎症性腸疾患に関連するもの
- 反応性関節炎(Reiter症候群)
- 乾癬性関節炎
49問:ベーチェット病
答えはa, b
アダリムマブ(ヒュミラ®️)は非感染性の中間部か後部、汎ぶどう膜炎に適応があります。
つまり前眼部のみの症例以外は基本的に適応となり、強膜ぶどう膜炎にも使用できます。
インフリキシマブ(レミケード®️)は眼科ではベーチェット病のぶどう膜炎にのみ適応です。
インフリキシマブの適応疾患を挙げておくと以下の通りです。
- ベーチェット病
- 間接リウマチ
- 乾癬
- 強直性脊椎炎
- 川崎病
- 潰瘍性大腸炎
- クローン病
TNF-α阻害薬であるヒュミラやレミケードはここ数年のトピックであり、今後も出題が予想されます。特にヒュミラ導入症例は増えていますし、アメリカでは全薬剤のなかでぶっちぎりでヒュミラが売り上げナンバーワンです。
非感染性ぶどう膜炎に対する抗TNF-α阻害薬使用指針および安全対策マニュアルが眼炎症学会から出ていますので、試験対策としても一度目を通しておくべきかと思います。
50問:若年性特発性関節炎(JIA)
答えはb
若年性特発性関節炎では抗核抗体が陽性となることが多いです。
一方で関節炎ですが、リウマチ因子や抗CCP抗体は陰性のことが多いです。
しかし、リウマチ因子や抗CCP抗体が陽性のものも存在し、結果によって病型や予後が異なるので検査されます。
KL-6は間質性肺炎のマーカーです。
可能性IL-2受容体は悪性リンパ腫やサルコイドーシスで高値となります。
しかし、全身性の炎症性疾患では基準値よりも高値となることは多々あるので特異度は低い検査です。
若年性特発性関節炎に伴うぶどう膜炎についてはこちらの記事も参照ください。
51問:未熟児網膜症
答えはa, e
晩期の合併症としては硝子体出血、裂孔原性網膜剥離、白内障、緑内障などが挙げられます。
未熟児網膜症の瘢痕期分類についても私の記事で確認しておいてください。
52問:薬剤性の水晶体混濁
答えはa, b, c, e?
ガラクトースとクロルプロマジンは確実ですが、キノホルムやクロロキンについても白内障の報告があるようなので答え4つですかね?二つ選ぶとするとc, eで良いと思います。
53問:精神発達遅滞
答えはa, e
一つ選べですが、無虹彩でもRubinstein-Taybi症候群でも精神発達遅滞をきたします。
54問:疾患と所見の組み合わせ
答えはb, e
a. Usher症候群は網膜色素変性と難聴を合併します。
b. メビウス症候群は外転神経麻痺と顔面神経麻痺を合併する先天性疾患です。
c.
C : Coloboma(コロボーマ)
H : Heart defects(心奇形)
A : Atresia of choanae(後鼻孔閉鎖)
R : Retarded growth and development(成長発達障害)
G : Genital abnormalities(外陰部低形成)
E : Ear anomalies(耳奇形・難聴)
d. Goldenhar症候群では以下の所見を合併します
- 輪部デルモイド
- 脊椎異常
- 眼瞼欠損
- 副耳
- 小耳
- 難聴
- 口蓋裂
- 顔面非対称
- 顎骨形成不全
e. その通りです。
55問:網膜色素変性症を合併する疾患
答えはb, e
網膜色素変性症を合併する疾患についてはこちらの記事にまとめていますので参考にしていただければと思います。
56問:乳幼児の視力評価
答えはc
小児に行える視力検査は以下の通りです。
乳児が可能な検査
- 選択視法(PL法)
- 視運動性眼振(OKN)
- 視覚誘発電位(VEP)
2歳頃から可能な検査
- 絵指標・図形指標
- 森実式ドットカード
3歳頃から可能な検査
- 字ひとつ視力検査
また、対光反射では視力を測定することはできませんが他覚的に視神経障害を推定するのに有用です。
57問:調節力
答えはc
+2.50Dの眼に+2.00Dのコンタクトをつけた時は、+0.50Dの眼と考えられます。
近点が50cmということは-2.00Dですので調節力は+0.50-(-2.00D)=2.50Dとなります。
58問:散瞳薬後の変化
答えはa
a. 回折の影響は瞳孔が小さくなる方が増加しますのでこれが誤りです。
b. 散乱には前方散乱と後方散乱が存在しますが、散瞳するといずれも増加します。
c. 収差には球面収差など様々なものがありますが、これらも瞳孔が開くと増加します。
d. 焦点深度はレンズ径と反比例して、小さくなるほど深くなり、大きくなるほど浅くなります。ですので散瞳すると浅くなります。
e. 瞳孔が開くとその分入ってくる光も増えるので網膜照度も増加します。
59問:検影法
答えはa
調節力が十分あると仮定すると、検影器の直前の指標を注視している場合に右眼はピントが合っている状態、左眼は遠視性不同視なので網膜よりも奥に像を結ぶ状態になっていると考えられます。
ですので右眼は中和、左眼は同行だと思います。
60問:疾患の所見の組み合わせ
答えはb, e
a. 微小斜視の診断に4Δ基底外方試験が用いられ、異常となります。
b. 甲状腺眼症は朝にもっとも症状がひどいです。
c. A型斜視では上方視の際に内斜視となり複視が出やすいので、上を向かなくて良いように顎上げ頭位となります。
d. 交代性上斜位と交差性複視は関係ありません。交差性複視は外斜視で起こります。
e. Brown症候群は上斜筋が伸びなくなる疾患です。甲状腺眼症や眼窩底骨折など筋肉が伸びなくなる疾患で牽引試験は陽性となりますので正しいです。
これ答え2つになってますが、この問題はおそらくeが答えと思って作られたのでしょうが甲状腺眼症も朝悪いので誤りとは言えないと思います。日内変動=重症筋無力症を想定して作られたのかもしれません。
61問:頭位異常をきたす疾患
答えはd
a. 偽外斜視は見た目が斜視のように見えるだけで、実際に斜視は無いので頭位異常を示しません。
b, c, e. 神経や筋肉の障害以外の内斜視や外斜視では基本的に頭位異常をきたしません。
d. 交代性上斜位では様々な頭位異常が出ます。回旋を補うためのhead tiltだけでなくface turnもみられることがあります。
頭位異常は筋肉や神経の異常による眼球運動障害、上下斜筋の関与する斜視などでみられることが多いです。
62問:Sagging eye症候群
答えはc
a. 固定内斜視でもsagging eye症候群でもLR-SR bandが断裂することが原因です。しかし固定内斜視となるのは強度近視で眼球が大きすぎる場合ですので、sagging eye症候群から移行するというわけではありません。
b. 麻痺性斜視に行うJensen法やHummelsheim法など、外眼筋の作用点の位置をずらすような手術を筋移動術と呼びます。sagging eye症候群の内斜視に対して前後転を行うことがありますがこれは筋移動術ではありませんので誤りです。
固定内斜視に対して行う上外直筋の筋腹を縫合する横山法は筋肉をずらさないけれどベクトルは変わるので筋移動術に含まれ、sagging eye症候群に対して行った報告もあるようですが現在一般的とは言えませんので誤りで良いと思います。
c. 開散麻痺様の内斜視が出るので、遠見時に内斜視となります。LR-SR bandが切れることで外直筋の下方偏位がおこり、偏位のせいで外転作用が弱まることで相対的に内斜視になるのだと思います。
d. 高齢者に発症します。
e. 上方ではなく下方偏位です。
63問:先天赤緑色覚異常
答えはa, d
a. 先天赤緑色覚異常ではX劣性遺伝ですので男性は異常Xを持っていれば発症するので保因者になり得ません。
b. 保因者の頻度は10%です。
c. 男性の有病率は5%, 女性の有病率は0.2%です。
d. L錐体は赤、M錐体は緑、S錐体は青です。1型2色覚はL錐体が欠損、2型2色覚はM錐体が欠損しています。
e. 眼科学には錐体1色覚もX連鎖性遺伝と記載があります。
64問:相対的瞳孔求心路障害(RAPD)
答えはa, e
対光反射の経路は上図の通りで、視策の途中から視蓋前域へと至り、EW核を通って動眼神経へと繋がります。
外側膝状体より中枢病変ではRAPDに影響ありませんので陰性となります。
片眼の視神経病変では患側のRAPDが陽性となりますが、視索病変では健側のRAPDが陽性となります。
これは視交叉で53%の神経が交差するためです。
右視索病変では、右眼由来の47%の神経と左眼由来の53%の神経がありますので、健側の左眼がRAPD陽性となります。
65問:外側膝状体の視野障害
答えはd
前脈絡叢動脈の障害:上下扇形の視野欠損
外側後脈絡叢動脈の障害:楔形同名半盲あるいは同名水平性扇形盲
66問:抗アクアポリン4抗体陽性視神経炎
答えはc
急性期治療としてはまずステロイドパルス療法を行います。ステロイドが効かない場合には血液浄化療法や免疫グロブリン大量点滴療法も行います。
抗補体抗体や抗IL-6受容体抗体は近年維持療法として適応になった薬です。選択肢に出てきたということは来年の問題への布石である可能性がありますので合わせて覚えておいてください。
67問:女性に多い視神経疾患
答えはe
抗アクアポリン4抗体陽性視神経炎は高齢女性に多いという特徴があります。
Leber遺伝性視神経症は男児に多いです。
68問:対光・近見反射解離
答えはd
a. Brown症候群は上斜筋が伸びなくなる疾患です。
b. Duane症候群は外転神経核の異常により、外直筋も動眼神経に支配されてしまう疾患です。
c. PPRFとMLFの異常により健側の外転以外の水平眼球運動が障害される疾患です。
d. 松果体腫瘍などで上方注視麻痺や散瞳、輻輳麻痺などをきたします。対光・近見反射解離がみられる疾患は他にはAdie瞳孔やArgyll Robertson瞳孔などがあります。
e. 延髄外側障害により患側顔面と健側上下肢の温痛覚障害やHorner症候群を呈します。
69問:栄養欠乏性視神経症
答えはb
ビタミンB1, B6, B12欠乏で視神経障害が起こることが知られています。
中でもB12が最も重要で、B12はDNAやRNA合成の際に必要な補酵素であり、アセチルコリン合成にも必要なため視神経以外にも末梢神経障害や亜急性連合性脊髄へんせ変性症を引き起こします。
ビタミンB1はアルコール代謝の際に消費されるので大量にアルコール摂取をして食事摂取が不良だと欠乏します。これによりアルコール弱視の原因となります。
B6はアミノ酸代謝に関与していて、長期的な抗菌薬内服で欠乏することがあります。B6欠乏単独で視神経障害が出るかについては不明です。
選択肢の中にはB12は含まれませんので、B1が答えで良いと思います。
70問:日内変動のある眼瞼下垂
答えはd
a. 甲状腺眼症に対して行います。朝に症状が強い、日内変動のある眼球運動障害を起こしますが、眼瞼下垂は起こしません。
b. アイステストは重症筋無力症に対する検査ですが、症状がある時で無いと行えません。
c. 角膜知覚は関係ありません。
d. 症状の無い時の重症筋無力症では、上方注視負荷をかけることで眼瞼下垂を誘発することができます。
e. アイステストと同じく症状がある時しかできません。
71問:視神経乳頭浮腫
答えはe
薬剤、中毒性視神経症ではゆっくりの進行で視神経が後期には萎縮していきますが、初期では特に視神経乳頭の異常所見も呈しません。
例外としてはメチルアルコール中毒で、誤飲してしまうと急激に視力低下が起こり、視神経乳頭腫脹が起こることもあります。
72問:外傷性視神経症
答えはe
a. 健側からの間接対光反射があるので、視神経障害は起こりにくいです。瞳孔不同となるのは動眼神経障害やホルネル症候群などです。
b. 視神経乳頭蒼白となるのは受傷直後ではなく1ヶ月後あたりです。
c. 外傷性視神経症の中でも前部と後部の障害があり、前部の障害では乳頭浮腫をきたします。
しかし、典型的な眉毛外側の障害による視神経症では後部の障害で、急性期でも視神経乳頭は正常ですのでこれは正解にしませんでした。
d. 網膜神経線維層欠損が起こるのも時間がたってきてからです。
e. 急性期から見られるので重要な所見です。特にアルコール酩酊状態での外傷など自覚的所見があてにならない時には、RAPDの有無しか手がかりが無い場合もあります。外傷患者では散瞳前にRAPDを全例見る癖をつけると良いと思います。
73問:動脈炎性虚血性視神経症
答えはe
a. 正しいです。
b. 男女比は1:2〜3程度です。
c. その通りです。多核巨細胞がみられるため、巨細胞性動脈炎と呼ばれます。
d. その通りです。
e. 無治療では50〜95%の確率で僚眼にも発症しますのでこれが誤りです。
74問:小児の外転神経麻痺
答えはb
小児の外転神経麻痺の原因は、一番多いのは外傷で、その次が脳腫瘍です。
内斜視だと思っていた症例に隠れていることがあるので注意が必要です。
75問:眼球運動
答えはa, b
眼球運動には反射性と随意性、共同性と非共同性、滑動性と衝動性の眼球運動が存在します。
a. 共同性というのは両眼が同じように動くことを指します。上下左右を見るときなどがこれに該当します。それに対して輻輳や開散は左右の眼が別々の方向に動きますので非共同性眼球運動に分類されます。
b. 反射性眼球運動は名前の通り反射的に起こる眼球運動で、自分の意思での眼球運動とは違います。視運動性眼振や前庭動眼反射性などが含まれます。
c. 前庭動眼反射は不随意な動きですが、左右の眼は同じように動きますので共同性です。
d. サッケードは速い動きで、衝動性眼球運動のことです。
e. パスートはゆっくりの滑らかな動きで、滑動性眼球運動のことです。
76問:落屑症候群
答えはd
これは明らかにdが答えとわかると思います。豚脂様角膜後面沈着物はサルコイドーシスなどの肉芽腫性ぶどう膜炎でみられる所見です。
その他の選択肢はいずれも落屑症候群の特徴的な所見ですので、知らないものがあれば覚えておきましょう。
77問:濾過胞感染
答えはc
文献によると約2%のようです。その他の手術の術後と比べて圧倒的に眼内炎リスクが高いので、術後時間が経っていても異常があればすぐに受診いただくように説明が必要です。
参考文献:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24424248/
78問:選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT)
答えはd
ぶどう膜炎症例では炎症を惹起してしまうため適応ではありません。
79問:小児緑内障
答えはe
診断基準は以下の通りです。
眼軸は関係ないと思われたかもしれませんが、高眼圧により角膜径が大きくなるだけでなく、眼軸も伸びることがあります。
小児緑内障の診断基準(2項目以上)
- 眼圧が21mmHgより高い(全身麻酔下であればあらゆる眼圧測定法で)
- 陥凹乳頭径比(cup-to-disc ratio:C/D比)増大の進行、C/D比の左右非対称の増大、リムの菲薄化
- 角膜所見(Haab線または新生児では角膜径11mm以上、1歳未満では12mm以上、すべての年齢で13mm以上)
- 眼軸長の正常発達を超えた伸長による近視の進行、近視化
- 緑内障性視神経乳頭と再現性のある視野欠損を有し、視野欠損の原因となる他の異常がない
小児緑内障疑いの診断基準(1項目以上)
- 2回以上の眼圧測定で眼圧が21mmHgより大きい
- C/D比増大などの緑内障を疑わせる視神経乳頭所見がある
- 緑内障による視野障害が疑われる
- 角膜径の拡大、眼軸長の伸長がある
80問:OCT
答えはb
ラーニング・エフェクトはOCTではなく視野検査に影響するものです。
81問:緑内障点眼の合剤
答えはd
a. ミケルナ®️
b. アイラミド®️
c. アイベータ®️
d. ビマトプロストはルミガン®️のことで、これを含む合剤はありません。
e. アゾルガ®️
82問:自動視野計
答えはd
a. 周辺部は見えづらいので感度の変動が大きいです。
b. 閾値が上昇すると感度は低下します。
c. 偽陽性が多いと感度は上昇します。
d. エスターマンテストは単一輝度の閾上刺激ですので正しいです。
e. サイズⅢが用いられます。
83問:鈍的眼外傷
答えはe
Purtscher網膜症は眼以外の鈍的外傷でみられる疾患で胸腹部圧迫や頭部外傷でみられます。
この疾患が眼以外の外傷で起こるというのは頻出ですので抑えておくようにしてください。
黄斑円孔や毛様体解離が鈍的外傷でみられるのは有名です。
外傷により角膜の変形や内皮が虹彩や水晶体と接触することで障害を受けます。
Schwartz症候群は裂孔原性網膜剥離に伴い高眼圧をきたす疾患で、鈍的外傷でも起こります。
84問:眼内異物
答えはa
眼内に入った鉄は酸化されて眼球内に広がり、視細胞や網膜色素上皮が障害され、眼球鉄症と呼ばれます。
進行すると視野障害が広がり、フラッシュERGでもフラットとなってしまうので早期摘出が望ましいです。
鉄片異物が疑われる時はMRI禁忌ということも重要ですので覚えておいてください。
85問:薬剤と副作用
答えはe
a. ニボルマブやイピリムマブ、ペンブロリズマブなどの免疫チェックポイント阻害薬は原田病のようなぶどう膜炎を起こします。
b. エルゴタミン製剤と網膜静脈閉塞についてはうまく関連性を見つけられなかったのですが、一応平成28年度に1例報告があるようです。これを答えにして良いのか微妙ですがeが明らかに誤りですのでこちらは正解選択肢としました。
参考:https://www.pmda.go.jp/files/000231679.pdf
c. シルデナフィルでは青視症をきたす他に虚血性視神経症を起こし、網膜色素変性症に禁忌ですので合わせて覚えておいてください。ちなみにジギタリスでは黄視症となり、ゴッホの作品では黄色が多用されているのはこれのせいではないかと言う説があるそうです。
d. タモキシフェンによる黄斑浮腫ではFAGで漏出がないのが特徴です。
e. クロロキンと網膜分離については特に関連がないのでこれが答えだと思います。
86問:生物学的製剤
答えはc
アダリムマブ(ヒュミラ®)は非感染性の中間部、後部、汎ぶどう膜炎に適応です。
他の選択肢の未熟児網膜症に対するラニミズマブ(ルセンティス®)や血管新生緑内障に対するアフリベルセプト(アイリーア®)は比較的最近適応となったトピックスですので来年以降も狙われる可能性があるのでしっかり覚えておきましょう。
87問:副腎皮質ステロイド
答えはb, e
ステロイドの副作用対策としては、20mg/dayを4週間以上投与することが予想される時はST合剤(バクタ)を併用します。これはニューモシスチス肺炎予防で、発症してしまうと命に関わるので必ず忘れないようにしてください。
骨粗鬆症についてはステロイド性骨粗鬆症ガイドラインで、スコア3点以上に予防内服をします。
具体的には3ヶ月以上の投与の場合、7.5mg/dayで3点を超えます。ですのでステロイドを長期使用する場合には基本的に併用が推奨されるように思います。
ステロイド性骨粗鬆症ガイドライン:http://jsbmr.umin.jp/guide/pdf/gioguideline.pdf
他にはNSAIDsを併用している患者では胃潰瘍予防にPPIを併用します。
ガスターなどのヒスタミンブロッカーは頻用されていますがエビデンスには乏しいようです。
88問:房水産生を抑制
答えはb
a. レスキュラ®のことでPG関連薬です。
b. β阻害薬なので正しいです。
c. 副交感神経刺激なので主経路促進です。
d. デタントール®のことでα1阻害薬です。
e. グラナテック®のことでROCK阻害薬です。
・主経路促進
副交感神経刺激薬
ROCK阻害薬
EP2受容体作動薬
・副経路促進
PG関連薬
α1阻害薬
α2刺激薬
EP2受容体作動薬
・房水産生抑制
β阻害薬
炭酸脱水酵素阻害薬
α2刺激薬
89問:後発白内障
答えはe
90問:白内障術後眼内炎
答えはc, d
a. 急性術後眼内炎では術後6週以内の発症で、特に1週間以内が多いです。
b. 弱毒菌では眼痛がないこともあり、否定できません。
c. その通りです。
d. アクネ菌は遅発生眼内炎の代表的な起因菌の一つなので正しいです。ちなみに昔はpropionibacterium acnesと呼ばれていましたが、cutibacterium acnesに名称がかわりました。どちらも同じものを指します。
e. 表皮ぶどう球菌は弱毒菌ですので予後は悪くありません。
91問:術後フレア
答えはb, d
落屑症候群では術後炎症が強く出やすかったり、術後高眼圧になりやすかったりというのはしばしば経験すると思います。
網膜色素変性症でも術後炎症が出やすく、前嚢収縮も起こりやすいです。チン氏帯脆弱やCMEをきたすことも併せて覚えておくと良いです。
92問:角膜疾患に対する治療法
答えはb
a. 眼瞼内反症に対する手術です。
b. 角膜周辺部潰瘍に対して、潰瘍に隣接する結膜を切除する術式です。
c. 外直筋不全麻痺や先天眼振などに行う手術です。
d. 先天眼振に対する術式です。
e. 眼窩内腫瘍に対して、眼窩の骨を一部外して腫瘍を摘出する術式です。
93問:結膜嚢
答えはb
結膜嚢内に保持できる液量は25〜30μlです。
涙液が7μlほど入っていて、点眼1滴(30〜50μl)入れば十分結膜嚢内を満たす計算になります。
94問:角膜遷延性上皮欠損
答えはa, d
瞼板縫合は重症例に対して行います。
治療用コンタクトレンズは摩擦を回避しますし、疼痛予防にも有効です。
PTKも有効ではありますが、保険適応外なので答えにはしませんでした。
角膜移植はやりすぎです。
95問:角膜移植
答えはb
a. 脳死判定だけでなく、死後でも角膜提供は可能です。
b. その通りです。
c. ドナーの情報は個人情報なので知らせません。
d. 1週間以内に使用する必要があります。
e. 遺族の同意でも可能です。実際は死後にご遺族の同意でアイバンクに登録いただく例が多いようです。
96問:角膜内皮移植(DSAEK)
答えはa, b
c, dについては移植片挿入前に用いる手技で、フリリンガリングは全層角膜移植などで用いる器具です。
97問:線維柱帯切除術後のレーザー切糸
答えはd
アブラハムレンズはYAGで使うレンズです。
術後1週間レーザー切糸を行ってはいけないということはありません。
- 赤色光
- 照射時間0.1〜0.2秒
- 照射サイズ50〜100μm
- 出力100〜300mW
98問:強膜内陥術
答えはa, c
下液排液は強膜側から切開をいれて下液を抜くので深く切りすぎると網膜穿孔しますし、血管を傷つけると網膜下出血の原因となってしまいます。
99問:緑内障治療
答えはa
a. その通りです。白内障手術併用眼内ドレーンについては学会から文書が出ているので一読しておくと良いと思います。
参考文献:https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/resources/member/guideline/iStent_2020.pdf
b. ビスコカナロトミーは線維柱帯切開術と同じ流出路再建術です。
c. 毛様体を不可逆に破壊してしまうので眼圧コントロールが難しいです。
d. 線維柱帯切除術は最も眼圧下降効果が大きいです。
e. 何度も行うことが出来ます。
100問:硝子体手術
答えはc, e
a. 外傷性黄斑円孔は自然回復することがあるのですぐに手術は行いません。
b. RVOに対する黄斑浮腫は抗VEGF薬の硝子体内注射を行います。
c. PDRに対する牽引性網膜剥離では手術を行うので正しいです。
d. MPPEに対しては基本的に手術は行いません。
e. 内境界膜下出血では手術で改善が期待できます。