ぶどう膜炎

急性網膜壊死(ARN)について

急性網膜壊死(ARN)とは

桐沢型ぶどう膜炎とも呼ばれるこの疾患はHSVもしくはVZVによって引き起こされるぶどう膜炎で、典型例は免疫正常な成人に起こる片眼性肉芽種性ぶどう膜炎です。

急性網膜壊死(ARN)の所見

前眼部所見

肉芽腫性ぶどう膜炎を呈しますので豚脂様KPを伴う虹彩毛様体炎を認めます。
前房内炎症やデスメ膜皺壁なども強いことが多いです。

初期には虹彩毛様体炎が先行しますので、前部ぶどう膜炎だと思っていても遅れて網膜所見が発生することがあるので定期的な眼底検査が必要です。

後眼部所見

網膜周辺部顆粒状黄白色病変を認めるのが特徴です。この白い病変部は壊死により菲薄化しており時間とともに癒合・拡大していきます。

ウイルスに対する強い免疫応答が起こっていることから硝子体混濁も来します。

この急性網膜壊死や細菌性眼内炎などの感染性のぶどう膜炎では網膜動脈への閉塞性血管炎が起こります。
それに対してサルコイドーシスなどの自己免疫性のぶどう膜炎では静脈炎がメインです。
(網膜壊死でも静脈炎も起こることはありますが、サルコイドーシスなどで動脈の血管炎が起こることは非常に稀です)

そして上記を反映して、ERG検査を行うと動脈の障害があるとフラッシュで陰性型flatに近い形になるのに対して、静脈炎のみの症例では律動様小波の消失が見られるのみのことが多いです。
静脈炎が重度であれば陰性型となることもありますが、flatになることはほとんどありません。

急性網膜壊死は視力予後の悪い疾患で治療の遅れが命取りとなってしまう疾患の一つです。
特に壊死した網膜は菲薄化により裂孔になりやすく高率に裂孔原性網膜剥離を伴います。

急性網膜壊死(ARN)の診断

前房水検査や、手術時の硝子体からPCR検査でHSVやVZVが証明されれば確定診断となります。
しかし、治療の遅れが致命的となるので疑わしい時は結果を待たずに下記の通り治療開始することが大切です。

急性網膜壊死(ARN)の治療

ステロイド抗ウイルス薬がメインで閉塞性血管炎があれば抗血小板薬も併用します。
具体的な処方例は以下の通りです。

  • ステロイド 0.5〜1.0mg/kg
  • アシクロビル 10mg/kg 8時間毎
  • バイアスピリン 100mg

また網膜剥離予防に早期にバックル硝子体手術を行うべきだとも言われており、近年は硝子体手術が行われることが多いです。

典型例は片眼性ですが、片眼の治療後から時間がたってもう片眼に発症することもあるので慎重な経過観察が必要です。

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