眼科専門医試験解説

第34回 眼科専門医認定試験 臨床問題 過去問解説

第34回 眼科専門医認定試験 臨床問題の解説をはじめていきます。
公式解答は発表されておりませんので間違い箇所がございましたらお問い合わせ欄もしくはTwitterのDMより指摘いただければ助かります。

問題については以下↓の眼科学会ホームページよりダウンロード出来ます。

専門医試験過去問(日本眼科学会HP)はこちらから

第34回一般問題の解説はこちらから

1問:眼瞼腫瘍

答えはb

黄色の腫瘤を認めており、病理では細胞異型があり極性の乱れを伴っていることから悪性腫瘍を疑います。

細胞には脂肪成分も認めることから脂腺癌を疑います。

2問:先天異常

答えはc, e

視神経から伸びる索状物を認めており、第一次硝子体過形成遺残を疑います。

視神経上に膜様物が付いているものをBergmeister乳頭と呼び、水晶体側に一部が残存しているものをMittendorf斑と呼びます。

2Bの水晶体後面にも膜様物を認めますのでMittendorf斑を認めます。

3問:コロボーマ

答えはb, e

下方虹彩の欠損を認めます。
これは虹彩コロボーマです。

ぶどう膜は上方から視神経を取り囲むように発生するので、欠損が起こる時はこの症例のように下方にみられます。

他にも脈絡膜や視神経乳頭にコロボーマを認めることもあります。

4問:サルコイドーシス

答えはe

隅角鏡ではPASを認めており、病理では非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を認めることからサルコイドーシスを疑います。

このように結膜円蓋部の硬結を生検するような問題では、眼瞼腫瘍以外にはサルコイドーシスとアミロイドーシスの可能性を考える必要があります。

5問:陽性的中率

答えはb

緑内障50人、緑内障でない950人(有病率5%のため)。
真陽性45人、偽陰性5人、偽陽性190人、真陰性760人となります。

上記の結果をもとに計算すると陽性適中率は45/45+190=0.1914
以上より約20%が答えです。

COVID-19流行により検査感度や特異度に注目が集まりましたので、これからも出題される可能性があります。余裕のある方は尤度比まで覚えておくと良いと思います。

尤度比という言葉は聞き慣れないかもしれませんがざっくりと陽性尤度比が高いと、その検査が陽性になった場合疾病ありの可能性が高まるというイメージでよいです。

6問:涙腺腫瘍

答えはd

右涙腺部に腫瘍性病変があり、眼球を圧排しています。

MRIで内部不均一なことから多形腺腫を疑います。多形腺腫に対しては生検ではなく、全摘出を行います。

7問:接触皮膚炎

答えはe

ヒアルロン酸ナトリウムもしくは塩化ベンザルコニウムによる接触皮膚炎を疑います。治療は被疑薬の中止です。

8問:アトピー患者の角膜炎

答えはc

フルオレセイン染色所見で、広範な上皮欠損を認めます。潰瘍の端をみるとところどころ、ターミナルバルブのように膨らんでいるdendric tailを認めることから単純ヘルペスによる地図状角膜炎を疑います。

9問:春季カタル

答えはb

角膜輪部にトランタス斑を認めることから、春季カタルを疑います。
春季カタルの治療としてはステロイドよりも免疫抑制剤がよく効きます。たまにステロイドと抗アレルギー薬で粘って治らない症例をみますが、恐れずに免疫抑制薬点眼を入れてしまうほうが早く治ります。

ちなみに眼瞼の乳頭を外科的切除する治療もありますが、薬物治療で改善しない場合の治療で著効するとは言いにくいと思います。

10問:異物感

答えはa

角膜耳上側に結膜縫合がしてあり、ちょうど糸にあたる眼瞼結膜のところに乳頭増殖が起こっています。糸が当たっているのが原因と考えられますので抜糸を行います。

11問:角膜脂肪変性

答えはd, e

鼻下側角膜から血管侵入を認めており、続発性の角膜脂肪変性を疑います。

名前の通り脂肪が沈着しており、血管新生に続発して起こります。原因としては角膜実質ヘルペスが最も多いです。

12問:周辺部角膜潰瘍

答えはc

透明帯を伴わない、周辺部潰瘍を認め、リウマチ性もしくはモーレン潰瘍を疑います。

潰瘍縁の突出所見であるoverhanging edgeを認めます。

guttaeはフックス角膜内皮ジストロフィで見られる所見で角膜内皮の疣贅所見です。

lucid intervalは透明帯のことでカタル性角膜潰瘍などでみられます。リウマチ性やモーレン潰瘍では透明帯が無いのが特徴です。

pupillary blockは瞳孔ブロックのことです。この症例は穿孔による浅前房を認めるので瞳孔ブロックは関係ありません。

Vogt’s striaeは円錐角膜でみられる所見です。

13問:周辺部潰瘍

答えはc

下方に透明帯を持たない周辺部潰瘍を認めており、前房が潰れているので角膜穿孔を起こしています。

このような所見を呈するのは関節リウマチや多発血管炎性肉芽腫(GPA)などに伴うものや、モーレン潰瘍などが挙げられます。

選択肢の中では関節リウマチで陽性となる抗CCP抗体が有用です。

14問:老人環

答えはb

老人環を認めます。50歳以下で老人環を見た時は脂質異常症を考える必要があります。

ちなみに問題と同じ写真が「眼科診療クオリファイ25 角膜混濁の全て」の老人環のところに載っています。

15問:Peters奇形

答えはa

角膜中央が混濁しており、内皮、デスメ膜、実質の一部の欠損を認めます。また、周辺部虹彩前癒着も伴っていることからPeters奇形を疑います。

Peters奇形は神経堤細胞の遊走不全により、角膜中央部の内皮、デスメ膜、実質が先天的に欠損して角膜混濁を生じる疾患です。
発生学的に表層外胚葉由来の角膜上皮は正常ですが、神経堤由来の内皮や実質のみが欠損しています。

Peters奇形にはⅠ型とⅡ型が存在し、下記のように分けられます。
この症例は白内障や水晶体偏位は明らかでないのでⅠ型かなと思います。

Ⅰ型
角膜中央部の混濁と周囲の虹彩前癒着を認めるのみ。

Ⅱ型
Ⅰ型の特徴に追加で白内障や水晶体の前方移動といった水晶体の異常も伴うもの。

こちらの記事も併せて参照いただければと思います。

16問:水晶体脱臼

答えはb, d

水晶体の耳側への脱臼偏位を認めますのでマルファン症候群などの全身精査が必要です。

角膜については特に問題ありませんが、水晶体脱臼により、眼球全体の高次収差は増加しています。

17問:白色瞳孔

答えはa

片眼性の先天白内障です。混濁が非常に強く片眼性は予後が悪いので生後6週以内に手術を行い、健眼遮蔽をはじめます。

18問:アムスラーチャート

答えはd

眼底写真と視野は上下反転させると対応させられます。ハンフリーの時と同じ感じで考えると良いと思います。

アムスラーチャートは中心20度を評価できて、10度弱のところに暗点があります。

視神経乳頭部分が20度のところと考えると、dが正しそうです。

19問:近視性脈絡膜新生血管

答えはd

眼底は近視様でOCTでCNVがあり、FAGでは黄斑部にlacker crackを伴っていますので近視性脈絡膜新生血管を疑います。治療は抗VEGF薬です。

20問:黄斑分離症

答えはa

強度近視に伴う黄斑分離症です。治療は硝子体手術ですが、視力も良いので経過観察で良いかと思います。

21問:急性後部多発性斑状色素上皮症

答えはe

急性の両眼性視力低下をきたしており、両眼の眼底には白点を認めます。
OCTでは網膜外層障害があります。
FAGででは早期層で一部の白点は過蛍光ですが、過蛍光となっていない白点部分は低蛍光となっており、後期層では全ての白点が過蛍光となる逆転現象を認めます。

以上のことからAPMPPEを疑います。

APMPPEについてはこちらの記事も参照ください。

22問:pachychoroid neovasculopathy(PNV)

答えはa

OCTでは黄斑部耳側のRPEの盛り上がりがあり、OCTAでは同部位にNVを認めるためtype1 CNVと考えられます。

脈絡膜肥厚も認めますのでpachychoroid neovasculopathy(PNV)と考えられますが滲出性変化を伴っていないですし視力も良いので経過観察で良いと思います。

23問:先天停在性夜盲

答えはd

夜盲の自覚があり、さらに視力の軽度異常も伴っていることからon型、off型双極細胞がどちらも障害される不全型先天停在性夜盲を疑います。

不全型先天停在性夜盲は眼底の異常所見を伴わず、視野も正常ですが双極細胞の障害によりフラッシュERGは陰性型となります。

24問:結節性硬化症

答えはb

結節性硬化症に伴う網膜星状膠細胞過誤腫を認めます。
腫瘍に対しては特に治療などは存在せず、経過観察します。
眼球摘出はやりすぎなのでこれが誤りです。

他の選択肢はいずれも正しく、結節性硬化症はしばしば出題されるので選択肢の内容が変わって出されても解けるようにしておきましょう。

25問:サイトメガロウイルス網膜炎

答えはb

ステロイドとメトトレキサートにより免疫抑制状態の患者に発症したサイトメガロウイルス網膜炎です。
眼底写真では後極部の血管に沿って網膜出血と黄白色滲出斑が扇状に広がる、後極部血管炎型を呈しています。
治療はガンシクロビルです。

サイトメガロウイルス網膜炎についてのまとめ記事も参照していただければと思います。

26問:脈絡膜骨腫

答えはa

若年女性の視神経近傍に存在する黄白色腫瘍で、OCTでは脈絡膜部に腫瘍性病変を認め、腫瘍と接する網膜色素上皮の萎縮を認めます。
FAGでは網膜色素上皮の萎縮によるwindow defectで過蛍光となっており、IAでは腫瘍は低蛍光ですが腫瘍内の血管構造が過蛍光となっております。

以上の特徴から脈絡膜骨腫を疑いますので、眼窩部やエコーで石灰化を調べることで診断に有用です。

27問:結核性ぶどう膜炎

答えはb, e

血管閉塞による網膜出血と静脈炎を伴うぶどう膜炎で結核性ぶどう膜炎による網膜血管炎を疑います。
細菌性眼内炎は非肉芽腫性ですが、結核性ぶどう膜炎は結核菌に対する免疫応答が病態ですので肉芽腫性を呈し、この症例のように豚脂様KPを伴います。

診断のためには結核の検査が必要ですので、胸部CTやインターフェロンγ遊離試験を行います。

28問:不等像視

答えはe

これはニューアニセイコニアテストで、不等像視のテストです。
正視に近い方の目に緑ガラス、反対眼に赤ガラスを装用させて、この二つの半円の見え方を比べます。

29問:Duane症候群

答えはa, e

第一眼位で左外斜視があり、左眼の内転制限と内転時の眼球陥凹を伴っていることからDuane症候群の2型を疑います。

Duane症候群は女性に多く、次第に筋肉が拘縮してくるので牽引試験陽性となります。
複視の悪化は左眼外直筋の拘縮により第一眼位での外斜視悪化が疑われますので、外直筋後転で第一眼位を改善します。

30問:先天上斜筋麻痺

答えはd

第一眼位で左眼の上斜視と外斜視を認め、右方視では左眼の下斜筋過動を認めます。
また、両眼開放下ではわかりにくいですが右側へhead tiltしています。以上のことから左先天滑車神経麻痺が疑われます。

左眼が外方回旋しており、左へ頭部傾斜することで上下偏位が増大します。

31問:視神経炎

答えはe

眼球運動時痛が強く、乳頭炎型をとる視神経炎は抗MOG抗体陽性視神経炎の特徴です。抗AQP4抗体陽性視神経炎では球後視神経炎をとることが多いです。

32問:右同名半盲

答えはe

右同名半盲をきたすのは左視索以降の病変で、その中でRAPDが陽性となるのは視索病変のみです。視交叉では交差成分が非交差成分よりも多いために視索病変では反対側のRAPDが陽性となります。

MRI画像で左視索障害が起きているのはeになります。

33問:動眼神経麻痺

答えはe

左眼の眼瞼下垂と上転、内転、下転障害を認めていることから動眼神経麻痺を疑います。

MRI, MRAで左IC-PC動脈瘤を認めます。

34問:緑内障

答えはc

視神経乳頭陥凹拡大を認め、上下ともにNFLDがあり、特に下方のNFLDに一致して乳頭出血を認めます。

下方視野の障害を認めており、上方のNFLDと一致していると考えられます。

NTGとしてはいきなり点眼開始ではなくベースライン眼圧の測定だと思いますが、選択肢のなかではcしか無いように思います。

35問:緑内障点眼

答えはd

右眼の濾胞を認め、アレルギー性結膜炎を疑います。
緑内障点眼でアレルギーを起こしやすいものとしてはブリモニジン(アイファガン)やリパスジル(グラナテック)などが挙げられます。

36問:視神経乳頭陥凹

答えはb

ぱっと見では視神経乳頭陥凹拡大があるように見えますが、大乳頭ですので相対的に大きく見えるだけというのが出題者の出題意図かと思います。眼圧は正常範囲、OCTではGCCの菲薄化を認めず、隅角所見も視野も問題ありません。
実際の臨床では定期的な検査を僕だったらやってしまう気もしますが、3ヶ月後視野検査はやりすぎだと思いますし、追加検査無しが答えでよいかと思います。

37問:膨化白内障

答えはa

膨化白内障となっており、それによる隅角閉塞が起こっていますので白内障手術を行います。

38問:隅角検査

答えはd

dの箇所が隅角底です。

39問:線維柱帯切除術

答えはa, d

線維柱帯切除術後のレーザースーチャーライシスに使用するレンズを選ぶ問題です。
頻出なので覚えておきましょう。

40問:涙道障害

答えはa, c

写真より下眼瞼の涙小管障害を疑います。
涙小管障害があるままで放置すると涙道がふさがってしまうので早急な手術をして、涙小管内にチューブを通してきちんと涙小管を再建する必要があります。

41問:shaken baby syndrome

答えはc, d

眼底からはshaken baby syndromeを疑い、全身にも虐待を疑う所見がありますので全身の精査や頭蓋内検査、成長発育曲線の評価などを行います。
経過観察は禁忌で医師が介入してあげなければ子供の命に関わります。

42問:IA

答えはe

IA中に後嚢破損している写真です。
その場合は手を止めて、粘弾性物質を前房内注入します。

43問:小眼球症

答えはa

眼軸が15.38mmしかありませんので小眼球症です。
水晶体に対して眼球が小さいため浅前房や瞳孔ブロックなどを起こしやすいです。
強膜や脈絡膜は肥厚しますのでaが誤りです。

44問:角膜移植

答えはb

内皮型拒絶反応に伴うkhodadoust lineを認めるように思います。

45問:Hurler症候群

答えはd

Hurler症候群では基本的に内皮障害を伴いませんし、小児ですので拒絶反応なども考慮すると全層角膜移植よりも深部層状角膜移植が望ましいように思います。

第26回臨床15番で類題が出ていますので、併せて確認しておくと良いかと思います。

46問:斜視手術

答えはc

斜視鉤がかかっているのは下斜筋です。
下斜筋は上転、外転、外方回旋作用があり、下直筋の眼窩側を走行します。

47問:悪性緑内障

答えはb

健眼と比較すると術後眼の前房が浅くなっているにも関わらず高眼圧となっていることから悪性緑内障を考えさせる問題かと思います。

リークなどで前房が浅くなっているのであれば眼圧は下がっているはずです。

まずはアトロピンなどの毛様体麻痺機能のある点眼を行い、改善しなければYAGなどのレーザー加療、それでも改善しないようであれば硝子体手術を行います。

48問:加齢黄斑変性症

答えはb

中心窩からはずれたところのCNVで、視力良好な高齢者ですのでCNVの直接凝固を考えました。
抗VEGF薬の硝子体内注射注射もありな気はしますが、黄斑下に新生血管が無いので適応的にどうかと思いました。

49問:網膜前出血

答えはe

二ボーを伴う出血を認めますので、これは網膜前出血です。
また網膜前出血の上下の眼底を見ると網膜の色が濃くなっている所があるので、網膜下出血も合併しているようです。

網膜前出血もあるので治療は硝子体手術でよいかと思います。

50問:黄斑円孔網膜剥離

答えはa

初診時のOCTより黄斑円孔網膜剥離を認めます。
術後所見で黄斑円孔の閉鎖が得られていますので。周辺部の網膜剥離が残存していても経過観察で下液が吸収されていくのを待ちます。

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