ぶどう膜炎

サイトメガロウイルス網膜炎について

サイトメガロウイルスについて

サイトメガロウイルスはヘルペスウイルスの一種で基本的に免疫抑制患者において再活性化することで全身に様々な異常を引き起こします。

AIDSの合併症としてが有名で、臓器移植後や化学療法後など様々なシチュエーションで問題となり、網膜にも網膜炎を引き起こします。

ちなみに虹彩炎や角膜内皮炎もサイトメガロウイルスが原因となりますが、こちらは免疫正常でも起こるので注意が必要です。

前眼部ではヘルペスウイルスや緑膿菌、真菌感染など免疫正常では他臓器では病原性を持つことが少ないようなものでも角膜炎や虹彩炎を引き起こします。
これは他臓器と比べて角膜には血管が無く免疫機構も違うことが関係していると考えています。

前眼部と違って網膜は血流も豊富で他臓器と同じような条件のため上記のような感染症は免疫抑制によって引き起こされることが多いです(急性網膜壊死だけは例外)。
この原則を覚えておくと原因の鑑別の助けになるかと思います。

サイトメガロウイルス網膜炎の検査所見

網膜所見

サイトメガロウイルス網膜炎は網膜所見に応じて以下の3つに分けられます

  1. 周辺部顆粒型
    網膜周辺部に白色顆粒状の滲出斑が扇状に見られます。
    病状がすすむと白色病変は癒合、拡大しながら大きくなっていきます。
  2. 後極部血管炎型
    後極部の血管に沿って網膜出血と黄白色滲出斑を生じ、cottage cheese with ketchupと呼ばれます。
    病変は周辺に向かって扇状に広がることが多いです。
  3. 樹氷状血管炎型
    大血管を中心に網膜血管が樹氷状に白鞘化します。
    1, 2と比べてこちらは非常に稀で、CMV自体が原因というより免疫反応によってこのような所見が得られるとも言われています。

網膜以外の所見

網膜以外の所見としては
前眼部の炎症所見は無いか軽度なことが多いです。
硝子体混濁についても初期は軽度なことが多いです。

同じヘルペスウイルスが原因の急性網膜壊死と比べると進行も緩徐で、硝子体混濁や前房内炎症所見も軽度なのが特徴です。

サイトメガロウイルス網膜炎の特徴

黄斑近傍に病変が出なければ自覚症状もほとんどなく、眼科定期受診や真菌感染精査のために眼底検査を依頼された時に偶然見つかることもあります。
サイトメガロウイルス網膜炎患者は「視力も良くて眼底も綺麗に見えるけど何か白い病変ある!」というようなイメージです。

サイトメガロウイルス網膜炎を発症する患者は免疫抑制状態にあるので、強い免疫応答を引き起こすことができないので、前眼部炎症や硝子体混濁は軽度なことが多いです。

ですので経過中に免疫機能が回復してくれば強い硝子体混濁などを引き起こすこともあります。また進行が緩徐なのも同様の理由です

一方急性網膜壊死ではウイルスが引き起こす免疫応答により激しい炎症が起こり、激しい勢いで病変も拡大します(だからステロイドを併用します)。

サイトメガロウイルス網膜炎の治療

治療は抗CMV薬のガンシクロビルなどの内服や眼内注射を行います。

治療への反応性は良好なことが多いですが、治療開始後2週間ほどは効いていても病巣が拡大することがあるので焦らずに経過を見る必要があります。

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