後天性卵黄様病巣(AVL)とは

後天性卵黄様病巣(acquired vitelliform lesion:AVL)は、成人の黄斑部の網膜下に黄色い沈着物を認める病態です。 小児や若年者で卵黄様の病変をみたら Best 病を考えますが、AVL は大人になってから、ドルーゼンなどほかの黄斑疾患に伴って生じます。 網膜下液を伴うこともあり、新生血管型加齢黄斑変性(AMD)と間違えやすいので注意が必要です。

Best 病についてはBest 病の記事も参照ください。

なぜ黄色い物質がたまるのか

視細胞の外節は先端から毎日少しずつ脱落し、RPE(網膜色素上皮)が貪食して処理しています。 ドルーゼンや網膜下液などで視細胞と RPE が離れると、脱落した外節が処理されずに網膜下にたまっていきます。RPE の機能が落ちている場合も同様にたまります。 沈着物には外節だけでなく、RPE 由来の色素顆粒、脂肪滴なども含まれると言われています。

AVL の原因となる疾患

視細胞と RPE の接触が悪くなる疾患や、RPE の機能が落ちる疾患が原因となります。

  • 大きなドルーゼンや網膜色素上皮剝離(PED)を伴う AMD
  • cuticular drusen・subretinal drusenoid deposits(SDD)
  • 硝子体黄斑牽引・黄斑上膜
  • 中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)

AVL 90眼の報告では、ほかの眼底異常のない例が最も多く(44%)、次いで cuticular drusen(22%)、新生血管のない AMD(21%)でした。 ほかの眼底異常のない例は、臨床的には成人発症卵黄様黄斑ジストロフィと診断されることが多いです[1]。

ドルーゼンについてはドルーゼンの記事も参照ください。

AVL の検査所見

眼底所見

中心窩付近に、わずかに隆起した黄色い沈着物を認めます。 大きさは乳頭径の1/3程度のことが多く、中心に小さな色素沈着を伴うこともあります。 周囲にドルーゼンを伴うことが多く、片眼のことも両眼のこともあります。

眼底自発蛍光

沈着物に一致して強い過蛍光を認め、眼底写真よりも病変がわかりやすいことが多いです。 萎縮に至ると、その部分は低蛍光となります。

OCT

OCT が診断に最も有用です。 沈着物はRPE の上(網膜下)のドーム状の高反射物質として観察されます。ドルーゼンや PED は RPE の下に沈着するので、OCT で鑑別できます。 沈着物の横に網膜下液を認めても、それだけで活動性の新生血管があるとはいえません。 視力は、中心窩の外境界膜(ELM)と ellipsoid zone(EZ)が保たれていれば良好なことが多いです。

フルオレセイン蛍光眼底造影(FA)

早期は沈着物によるブロックで低蛍光、後期は沈着物の組織染で過蛍光となります。 この後期の過蛍光が黄斑新生血管(MNV)からの蛍光漏出に見えることがあるので注意が必要です。

実際の症例をみてみましょう。

後天性卵黄様病巣の1眼の4種類の画像。カラー眼底写真では黄斑に黄色い沈着物とまばらなドルーゼン。自発蛍光では沈着物が過蛍光。OCT では RPE の上にドーム状の高反射物質。FA では早期に低蛍光、後期に過蛍光

(a)眼底写真では、黄斑に黄色い沈着物を認め、周囲にドルーゼンが散在しています。 (b)自発蛍光では、沈着物に一致して過蛍光です。 (c)OCT では、RPE の上にドーム状の高反射物質を認めます。 (d)FA では、早期はブロックで低蛍光、後期は過蛍光となっています。

OCT angiography(OCTA)

OCTA は造影剤を使わずに血流をみることができるので、病変の下に MNV がないかを確認するのに有用です。

AVL の経過

病変はゆっくり大きくなり、ピークを過ぎると縮小していきます。 Best 病と同じように卵黄期・偽蓄膿期・炒り卵期・萎縮期のような経過をたどることもありますが、必ずこの順に進むわけではありません。 AMD に伴う AVL の約半数は、縮小したあと RPE と網膜外層の萎縮を残したと報告されています[2]。

沈着物が消えても改善とは限らず、その部分の視細胞が失われて萎縮を残すことがあります。

また、AMD に伴う AVL の約8眼に1眼で MNV が生じ、多くは病変が縮小し始めてからでした[3]。

AVL の鑑別

新生血管型 AMD

黄色い沈着物、少量の網膜下液、FA 後期の過蛍光がそろうと、新生血管型 AMD とよく似ています。 MNV のない AVL の網膜下液は自然に増減することが多く、抗 VEGF 薬ではっきりした改善は得られません[4]。

MNV の有無の確認には OCTA が有用です。抗 VEGF 薬を注射しても網膜下液が変わらない場合も AVL を疑います。どちらも単独では MNV を否定できないので注意が必要です。

Best 病・成人発症卵黄様黄斑ジストロフィ

成人発症卵黄様黄斑ジストロフィは、Best 病に似た卵黄様病巣が成人に生じる黄斑ジストロフィで、成人型 Best 病と呼ばれることもあります。40歳以降の発症が多く、孤発例も多いです。 Best 病では EOG で L/D 比低下が特徴的ですが、成人発症卵黄様黄斑ジストロフィでは L/D 比は正常範囲なことが多いです。 いずれも ERG は正常で、眼底所見から両者を鑑別することは難しいです。

EOG についてはEOG の記事も参照ください。

成人発症卵黄様黄斑ジストロフィと AVL も眼底所見だけでは鑑別が難しく、年齢、僚眼の所見、ドルーゼンなどほかの黄斑疾患の有無で判断します。

Best 病成人型AVL
発症小児40歳〜高齢
眼両眼両眼片眼も
他疾患なしなしあり
EOG低下ほぼ正常正常

専門医試験でも、第31回 臨床問題 問24 で64歳男性の黄斑部の卵黄様病巣の症例が出題され、「ERG は正常である」「経過観察を行う」が正解でした。抗 VEGF 薬や光線力学療法の適応ではありません。

AVL の治療

沈着物そのものに対する治療法はなく、経過観察となります。 MNV を伴わない AVL に抗 VEGF 薬の効果ははっきりしません。MNV が生じた場合は抗 VEGF 薬で治療します。

まとめ

  • AVL はドルーゼンなどの黄斑疾患に伴い、成人の網膜下に黄色い物質が沈着する病態です。
  • 自発蛍光で過蛍光、OCT で RPE 上の高反射物質を認め、FA 後期の過蛍光は MNV と間違えやすいです。
  • 沈着物への治療はなく、MNV が生じたら抗 VEGF 薬で治療します。

参考文献

[1] Freund KB, Laud K, Lima LH, Spaide RF, Zweifel S, Yannuzzi LA. Acquired vitelliform lesions: correlation of clinical findings and multiple imaging analyses. Retina. 2011;31(1):13-25. PMID 21102371.

[2] Brinkmann M, Bacci T, Kar D, Messinger JD, Sloan KR, Chen L, Hamann T, Wiest M, Freund KB, Zweifel S, Curcio CA. Histology and clinical lifecycle of acquired vitelliform lesion, a pathway to advanced age-related macular degeneration. Am J Ophthalmol. 2022;240:99-114. PMID 35192790.

[3] Balaratnasingam C, Hoang QV, Inoue M, Curcio CA, Dolz-Marco R, Yannuzzi NA, Dhrami-Gavazi E, Yannuzzi LA, Freund KB. Clinical characteristics, choroidal neovascularization, and predictors of visual outcomes in acquired vitelliform lesions. Am J Ophthalmol. 2016;172:28-38. PMID 27640006.

[4] Juliano J, Patel S, Ameri H. Acquired vitelliform macular degeneration: characteristics and challenges of managing subretinal fluid. J Ophthalmic Vis Res. 2021;16(4):582-591. PMID 34840681.

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この記事の英語版(poisensei.com):Acquired Vitelliform Lesion (AVL): OCT, Autofluorescence and How Not to Mistake It for Wet AMD

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