神経眼科

視神経炎について

典型的視神経炎の特徴

典型的視神経炎は15〜45歳の比較的若い女性に多く発症します。

症状は急激な片眼性の視力低下と、眼球運動時痛です。

眼科検査では患眼でRAPDが陽性となり、フリッカー値の低下や中心暗点などの視野欠損を認めます。

視神経に炎症が起きている状態で上下左右を向くと、視神経が引き伸ばされて痛みが出ます。これが眼球運動時痛のメカニズムです。

フリッカー検査は視神経障害に特異度が高く、視力低下が出る前からフリッカー値は下がります。

 

回復期には、視力の回復より遅れてフリッカー値が戻ってきます。視神経炎を疑ったとき・経過を追うときに非常に有用な検査です。

 

フリッカー検査の詳細は中心フリッカー検査(CFF)の記事も参照ください。

前部視神経炎と球後視神経炎

視神経炎は、視神経乳頭の腫脹を伴う前部視神経炎(視神経乳頭炎)と、乳頭腫脹を伴わない球後視神経炎に分かれます。

球後視神経炎では眼底が正常に見えるので、RAPD・フリッカー・視野で視神経の障害をみつけにいくことが大切です。

MRIは必須

頭部MRIでは、STIR法で罹患した視神経の高信号を確認できます。

さらにFLAIRで側脳室周囲に脱髄病変を認めることがあり、その場合には多発性硬化症(MS)を疑う必要があります。

視神経炎だけだと思っていても他の病変が隠れていて、MSの一症状として視神経炎が出ていることもあるので、MRIは必須です。

また、単純MRIでの高信号は治療後にも残ることがあるので、再発のときは造影MRIを撮るほうが望ましいです(初発でも、私は腎機能がよければ造影を撮ることが多いです)。

抗体検査を必ず出す

視神経炎を診たら、抗アクアポリン4(AQP4)抗体と抗MOG抗体を提出します。

日本の全国調査では、非感染性の視神経炎531例のうち、抗AQP4抗体陽性が12%、抗MOG抗体陽性が10%でした[1]。それぞれおよそ10人に1人です。グループごとの特徴は次のとおりです[1]。

抗AQP4抗体陽性抗MOG抗体陽性両方陰性
割合12%10%77%
女性84%51%64%
乳頭腫脹34%76%46%
眼球運動時痛53%77%46%
治療前に指数弁以下53%25%22%
治療後も指数弁以下22%5%8%

抗AQP4抗体陽性は女性に多く、治療しても視力が戻りにくい。抗MOG抗体陽性は乳頭腫脹と痛みが目立つ一方で、治療後の視力は良好です。

抗AQP4抗体陽性の視神経炎は視力予後が悪く、治療方針も変わります。視神経脊髄炎(NMO)の記事も参照ください。

抗MOG抗体は、MSとも抗AQP4抗体陽性の視神経脊髄炎とも異なる脱髄疾患(MOG抗体関連疾患:MOGAD)の目印になる抗体です。視神経炎のほか、急性散在性脳脊髄炎や脊髄炎として発症し、1回きりで終わることも再発を繰り返すこともあります[2]。

抗MOG抗体陽性の視神経炎には、次のような特徴があります[2]。

  • 両眼同時の発症が多い(31〜58%。MSに伴う視神経炎では5%未満、抗AQP4抗体陽性では13〜37%)
  • 発症時の視力低下は強いことが多いが、ステロイドで速やかに回復することが多い
  • ステロイドを減らしている途中や中止した直後に再発することがある。再発性の視神経炎は30〜50%でみられる
  • MRIでは、視神経の前方に長く広がる病変や、視神経周囲の鞘の造影効果がみられる

2023年の国際診断基準[2]では、次の3つをすべて満たすとMOGADと診断します。

 

(A) 視神経炎などの中核となる脱髄症状がある (B) cell-based assayで血清の抗MOG抗体が陽性 (C) MSなど、よりよく説明できる診断が除外されている

 

抗体価がはっきり陽性なら (A)〜(C) だけで診断できます。低い陽性のときは、抗AQP4抗体が陰性で、支持所見を1つ以上満たすことが必要です。視神経炎の支持所見は両眼同時の発症、視神経の長さの50%を超える病変、視神経周囲の鞘の造影効果、乳頭浮腫の4つです。

治療はステロイドパルス

治療は基本的にステロイドパルス療法です。

後で紹介するONTTで、ステロイドパルスは視力の回復を早めるものの、最終的な視力は無治療と変わらないという結果が出たため、無治療で経過を見ていた時期もありました[3]。

しかし抗AQP4抗体の存在がわかり、陽性例では早期にしっかり治療するべきだということがわかってきました。

そのため現在は、

  1. 入院時に抗体検査を提出する(結果が出るまで1週間以上かかる)
  2. 結果を待つ間にステロイドパルスを行う
  3. 抗AQP4抗体が陽性なら、追加のステロイドパルスや血漿交換を考慮する

という流れが一般的です。

ステロイドパルスで効果が不十分なときの次の手は、血漿交換と免疫グロブリン大量静注療法(IVIg)です。保険の扱いが異なるので注意が必要です[4][5]。

  • 血漿交換:ステロイドが効かないMSの急性増悪には保険適用があります(一連につき月7回まで・3か月間)。NMOSDの急性増悪にも使われますが、NMOSDに対しては保険適用外です
  • IVIg:2019年から「視神経炎の急性期(ステロイド剤が効果不十分な場合)」に保険で使えるようになりました。原則として抗AQP4抗体陽性の患者が対象です。ステロイドパルスが無効・不十分なときや、合併症で2回目のパルスや血漿交換が難しいときに、400mg/kg/日を5日間点滴します

視神経炎は再発を繰り返したりMSへ移行したりすることもあるので、治療後のフォローでも注意が必要です。

有名なトライアル:ONTT

視神経炎を学ぶうえで外せないのが、Optic Neuritis Treatment Trial(ONTT)です[3]。

ONTTでは急性視神経炎の患者457人を、以下の3つの治療群に無作為に分けました。

  1. プレドニゾロン 1mg/kg/日を14日間内服
  2. ステロイドパルス(メチルプレドニゾロン 1g/日を3日間)のあと、プレドニゾロン 1mg/kg/日を11日間内服
  3. 経口プラセボを14日間内服

対象は、症状が出てから8日以内の片眼の急性視神経炎で、RAPDと視野欠損がある18〜46歳の患者です。平均年齢は32歳で、77%が女性でした。

結果は次のとおりです。

  • ステロイドパルス群では、特に視野の回復が有意に早かった
  • 6か月後もパルス群は視野・コントラスト感度・色覚がわずかに良かったものの、視力は3群で差がなかった
  • プレドニゾロン内服のみの群はプラセボ群と比べて改善に差がなく、視神経炎の再発はむしろ多かった(相対危険 1.79)
  • 追跡期間(6〜24か月)中に多発性硬化症と診断された割合は、どちらのステロイド群もプラセボ群と有意な差はなかった

「視神経炎をプレドニゾロン内服だけで治療してはいけない」と言われるのは、この結果が根拠です。

ONTTではほかにも、どのような症状や視野欠損パターンがあったか、MSへ移行するリスク因子は何かなど、色々と調べられています。興味がある人は原著を読んでみてください。

ONTTの限界

ただし、ONTTに含まれたのは片眼発症の患者だけで、両眼発症のタイプは除外されています。対象は46歳までなので、高齢発症の患者も含まれていません。

つまり、抗AQP4抗体陽性のような予後の悪い視神経炎は、ほとんど含まれていなかった可能性があります。

ですので、「ONTTで視力は変わらなかったから無治療でよい」とはならず、先ほど書いたようにステロイドパルスを行いながら抗体の結果を待つのが無難だと思っています。

ONTTは古い論文ですが、視神経炎を学ぶうえで非常に参考になります。

眼科の各領域には何度も取り上げられる有名なstudyがありますが、教科書の解説が論文の主旨からずれていることも多々あります。できれば原著を読む癖をつけることをおすすめします。

まとめ

  • 若い女性の急な片眼の視力低下と眼球運動時痛。RAPD陽性とフリッカー低下が典型的な視神経炎。
  • 典型例に見えても、抗AQP4抗体・抗MOG抗体の測定を忘れずに
  • 治療はステロイドパルス。効果不十分な場合は抗体の結果次第で他の治療が必要となることもある。

参考文献

[1] Ishikawa H, Kezuka T, Shikishima K, et al. Epidemiologic and Clinical Characteristics of Optic Neuritis in Japan. Ophthalmology. 2019;126(10):1385–1398. PMID 31196727.

[2] Banwell B, Bennett JL, Marignier R, et al. Diagnosis of myelin oligodendrocyte glycoprotein antibody-associated disease: International MOGAD Panel proposed criteria. Lancet Neurol. 2023;22(3):268–282. PMID 36706773.

[3] Beck RW, Cleary PA, Anderson MM, et al. A randomized, controlled trial of corticosteroids in the treatment of acute optic neuritis. The Optic Neuritis Study Group. N Engl J Med. 1992;326(9):581–588. PMID 1734247.

[4] 帝人ファーマ. 「献血ベニロン®-I」の効能・効果追加承認を取得(2019年12月20日). https://www.teijin-pharma.co.jp/pressrelease/2019/20191220.html

[5] 日本神経学会(監修). 多発性硬化症・視神経脊髄炎スペクトラム障害診療ガイドライン2023. 医学書院; 2023. p.102–103(検査・治療などの保険適用)、血漿浄化療法・IVIgの項. https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdf/koukasyo_nmosd_2023.pdf

ぐちょぽいの外来経験を全部詰め込んだ本ができました!
興味のある方は、ぜひこちらからチェックしてみてください👇

こちらの記事もおすすめ!