こんにちは!眼科医ぐちょぽいです!
本日はVEPの仕組みや読み方についてまとめていきます。
目次
視覚誘発電位(VEP)について
VEPは視覚への刺激に対する大脳皮質の活動の信号を記録する検査です。
脳の一次視覚野の中心にある鳥距溝では固視点、つまり中心視野からの刺激伝わり、その位置につけた電極により波形を得ます。
VEPで異常を認める疾患
中心視野を評価できるため主に黄斑疾患や視神経疾患で異常所見が見られます。具体的には黄斑円孔や黄斑変性では振幅が減少するのに対して、視神経炎等では潜時の延長を認めます。
黄斑疾患では、黄斑部の異常により神経に伝えられる刺激の量自体が減少してしまうことで振幅の減少を認めます。
これに対して視神経障害では脱髄により神経伝導速度が低下するため、潜時の延長を認めます。
VEPの誘発方法
VEPの誘発方法には以下の2つがあります
- フラッシュ刺激
- パターン刺激
フラッシュ刺激について
ERGのフラッシュ刺激と同じ光で測定するVEPです。
こちらはパターンと比べると簡易的な検査で、ERGを測定する機械で一緒に測れるようになっていることもあります。
波形については後述のパターンVEPと似たV字型の波形が得られますが、振幅や潜時には個人差が大きいので他者と比べることは出来ません。
しかし、同一患者で左右差をみることで視神経などの障害の存在を他覚的に評価することが出来ます。
簡便なこと以外に、パターンVEPが出来ないほど視力が低下した症例や、固視が出来ない小児や認知症患者でも測定できる等の利点があります。
パターン刺激について
上記がパターンVEPの正常波形と、刺激用指標です。
このような格子縞の模様を一定時間ごとに反転させながら固視してもらいながら波形を測定します。
上記波形では下側をプラスとして記載されており、N75, P100, N145と言う波形があります。この数字は刺激から波形が出るまでの潜時で、例えばP100なら潜時が100m秒となります。
最も大きい陽性波形であるP100は振幅は個人差があるものの、潜時は個人差が少なく再現性が高いため正常値の指標として使用されます。
上記の刺激用指標の縞模様の大きさを変更することにより、他覚的に視力を測定することもできます。各々のチェックは正方形であり、1辺の長さを視角で表します。
チェックが鮮明に見えていなければ振幅は低下し、潜時も延長しますので指標のサイズを変えて何度か測定することで大まかな視力を評価することが出来ます。測定時には屈折矯正をきちんと行うことも必要です。
詐盲や心因性視覚障害では自覚的視力検査で視力低下があったとしても、VEPは正常です。稀に心因性では正常症例よりも振幅が大きくなることもあるとの報告もあります。
また、弱視眼では弱視の程度に応じて反応が低下します。
VEPの波形を読むのはなれていなければ難しいと思いますが、潜時と振幅の左右差を比べるのが大切です。
そしてP100の潜時の延長の有無で視神経の障害を確認します。
私自身も、心因性視力障害疑いの小児症例(視野障害はやや再現性に乏しく眼底正常、対光反射正常)でVEPで片眼のP100潜時延長を認めたことから、視神経障害の可能性が高まり、レーベル遺伝性視神経症の診断に至った症例も経験しました。
心因性視力障害を疑った場合には必ずこのような他覚的検査を用いて他の疾患を除外することが大切だと思います。
それでは本日はこの辺で。