検査

ERGの読み方

こんにちは!眼科医ぐちょぽいです!

網膜電図(ERG)の読み方について勉強していきたいと思います。

ERGを読む時は以前の網膜の解剖を思い出しながら考えるのが重要です。 ただ所見を丸暗記するのではなく、網膜のどの部位の障害でどのようなERG所見が出るのかを理解することが出来ると、さらに深くERGを読む事が出来ます。

フラッシュERG

網膜の簡単なシェーマと、網膜の各細胞に対応するERGのフラッシュ波のイラストです。

ERGの中でもフラッシュ波は最も大切な検査となります。
まず初めに下側に出る波がa波、そのあとジグザグの波が律動小波(OPs)、その後に続く上向きに盛り上がる波をb波と呼びます。

それぞれa波は視細胞、OPsはアマクリン細胞、b波は双極細胞に対応しています。

フラッシュERGの異常所見

フラッシュERGの異常所見としてはおおまかに上記3種類に分けられます。

まずOPsの消失ですが、DMや静脈閉塞などで起こることは有名です。
基本的に血管障害などを反映していると言われています。
網膜のイラストを思い出していただきたいのですが、OPsの消失はアマクリン細胞の障害を示唆します。ですのでDMやRVOにより血管閉塞が起こると網膜は内層から順に障害されるので、ERGにおいて最も網膜内層障害を反映するOPsが最初に消失します。

次に陰性型です。
陰性型の定義はa波が出る前の波の位置よりもb波位置が低いということです。
これは基本的にはb波、つまり双極細胞の障害を示唆します。双極細胞に障害を受けるような疾患(先天性停在性夜盲など)でみられます。
また、それだけでなく先ほどのDMやRVOでも病状が進行して双極細胞にまでダメージが及ぶと陰性型を呈します。

そして網膜色素変性症で有名なflatなERGです、これは桿体、錐体細胞両方がやられることで全ての波形が消失してしまいます。

ここで特殊な例として網膜中心動脈閉塞症(CRAO)ではどうなるかを考えてみましょう。
網膜のイラストを見ながら読んでください。
まず、網膜10層のうち網膜の血管により栄養されているのは内境界膜から内網状層までです。
内顆粒層から網膜色素上皮層は脈絡膜から栄養されます。

ここで双極細胞の一部までが内網状層に含まれており、CRAOではここまでの全ての層が虚血により障害を受けます。

ですのでAOではERGのフラッシュはOPsが消失するだけでなくいきなり陰性型となります。

ここで細菌性眼内炎の際になぜERGをとるのかということについても考えてみます。

ぶどう膜炎の基本的な考え方としてサルコイドーシスなどのような自己免疫による異常では網膜の静脈炎が起こります。
それに対して細菌性眼内炎のような感染性のぶどう膜炎では動脈炎が起こります。ですのでCRAOと同じように細菌性眼内炎の病状が悪いと陰性型のERGとなり早急な手術が必要な状態と言えます。

暗順応について

ERGの測定をする時にはじめに暗順応をしっかりしてから桿体応答の検査をすると思います。
この検査では、錐体が反応できないようなわずかな光に対する網膜の反応を見ることで桿体応答のみをみることが出来ます。

それでは非常に弱い光から徐々に光を強くしていくとERGの波形はどうなるのかを考えてみましょう。

まず弱い光では通常の桿体応答がみられ、さらに光を強くしていくと徐々にフラッシュでのa波が生まれて下に切り込んでいき、最終的にフラッシュ波形となります。

フラッシュ応答は暗順応下で測定しますので、波形は主に桿体細胞由来の刺激で構成されています。

しかし桿体細胞がやられるような疾患(小口病や白点状眼底)では、暗順応をしたとしても桿体細胞が反応することが出来ず、錐体細胞のみが反応することでフラッシュでは陰性型のERGとなります。

またERG測定の上で注意なのが、検査前の暗順応をきちんとせずに適当に検査をしてしまった場合、正常例であっても桿体細胞がうまく働かずに陰性型ERGとなることがあります。なので陰性型ERGの鑑別には暗順応不足も考慮する必要があります。

明順応のついて

そして錐体応答とフリッカ応答は錐体の機能を主に反映します(桿体細胞はフリッカのような速い刺激には反応できない)。

ですので桿体細胞が正常で錐体細胞のみがやられる疾患(錐体ジストロフィ、桿体1色覚など)ではフラッシュではa波の減弱が起こり、錐体応答やフリッカ応答がほぼ消失します。

以上のことが理解出来れば、これまでより多くの情報をERG所見から読み取ることが出来るようになると思います。

理解して自分の腹に落ちるようになるまでは大変だと思いますが、理解することで暗記することを出来る限り減らすことが出来ると思います。

今回のテーマだけでなく全ての現象や検査の理屈を含めて解説できるよう心がけていますので、ただでさえ暗記する量が多い試験ですので少しでもお力になれればと思います。

それでは本日はこの辺で。

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