眼科専門医試験解説

第32回 眼科専門医認定試験 臨床問題 過去問解説

第32回 眼科専門医認定試験 臨床問題の解説をはじめていきます。
公式解答は発表されておりませんので間違い箇所がございましたらお問い合わせ欄もしくはTwitterのDMより指摘いただければ助かります。

問題については以下↓の眼科学会ホームページよりダウンロード出来ます。

専門医試験過去問(日本眼科学会HP)はこちらから

第32回一般問題の解説はこちら。

1問:病理

答えはb, c, e

a. 角膜上皮、ボーマン層、実質の病理だと思います。角膜原発の腫瘍は無いので誤りです。

b. マイボーム腺の病理です、中央の白いところが導管で腺組織から出た分泌物がまだらに見られます。
脂腺癌などが原発します。

c. 視神経の病理だと思います。画像の上から視神経、軟膜、くも膜下腔、くも膜、硬膜下腔、硬膜の順に層状の構造が見られます。
視神経膠腫や髄膜腫などが原発します。

d. 角膜実質、デスメ膜、内皮の病理だと思います。

e. 結膜の病理だと思います。画像の下方の層が疎ではなく、割と密になっているので眼瞼結膜かなと思うのですがあまり自信ないです。
上皮表面には杯細胞も認めます。

2問:cherry red spot

答えはa

画像はチェリーレッドスポットです。
網膜中心動脈閉塞症は皆さんわかると思うのでその他原因となる疾患は以下の通りです。

  • Gaucher 病
  • Niemann-Pick 病
  • GM1ガングリオシドーシス
  • GM2ガングリオシドーシス(Tay-Saches病, Sandhoff病)
  • 異染性白質ジストロフィー

GM2ガングリオシドーシスの中にティーサックスとサンドホフ病が含まれます。

これは語呂合わせで乗り切るしかないので僕なりの語呂合わせ載せておきます。

「チェリーの兄さん、酢酸ゴクリで胃洗浄」
チェリー: チェリーレッドスポット
兄さん: Niemann-Pick病
酢(サク): Tay-Sachs病
酸: Sandhoff病
ゴ: Gaucher病
クリ: ガングリオシドーシス
胃洗浄: 異染性白質ジストロフィー

下ネタ語呂合わせは無いのかとのリクエストを頂いたので別バージョンも考えました。
お好きな方で覚えてください。僕が作りたかったのでは無く、あくまでリクエストがあったので頑張って考えただけですので誤解無きようお願いします!

「チェリーの兄さん、異性のクリにゴシゴシ サック」
チェリー: チェリーレッドスポット
兄: Niemann-Pick病
さん: Sandhoff病
異性: 異染性白質ジストロフィー
クリ: ガングリオシドーシス
ゴシゴシ: Gaucher病
サック: Tay-Sachs病

チェリーレッドスポットは網膜中心動脈閉塞とその他疾患では発生機序が異なります。
上記のような代謝疾患では蓄積した物質が神経節細胞に沈着することにより網膜が白変するのに対して、網膜中心動脈閉塞症では網膜内層の循環障害によって浮腫と白変が起こります。
網膜の栄養は外層は脈絡膜から、内層は網膜から循環されていますが黄斑部には内層が存在しないので循環が保たれている外層は赤く見えるので黄斑部だけが赤く見えます。代謝疾患では黄斑部には神経節細胞がないので黄斑部は赤く保たれます。

3問:外転神経麻痺

答えはc

右外転神経麻痺なので患眼は内斜視となります。
bとcはいずれも右外転障害がありますが、bでは第一眼位の偏位がありません。

4問:線維柱帯の電子顕微鏡画像

答えはd

網目状の構造であり、線維柱帯の電子顕微鏡像です。
白く抜けているところがシュレム管です。

よく似た画像の載っているページを載せておきます。
参照URL:https://entokey.com/functional-morphology-of-the-trabecular-meshwork/

5問:臨床研究

答えはb, e

a. 後ろ向き観察研究です。

b. 観察研究であったとしても基本的に倫理委員会必要です。

c. 箱ヒゲ図です。

d. t検定は2群間の平均値に有意差があるかを求める時に使います。この設問の場合は多重検定が必要です。

e. 箱ヒゲ図の見方を貼っておきます。平均値はこの問題では書いてありませんが70歳以上では最大値が大きく外れ値もあるので中央値よりも平均値は高くなると考えられます。

6問:手術器具

答えはa, b, c

a. 斜視鈎

b. 眼科剪刀

c. 視神経剪刀

d. キャリパー

e. デマル氏開瞼鈎

眼球摘出では特にキャリパーでの測定は行いませんし、デマル氏鈎は使用せずに通常開瞼器を使います。

7問:眼窩内腫瘍

答えはd

MRI T1強調で等信号の内部均一な腫瘍を眼窩内に認め、病理所見ではN/C比の高い細胞を多数認め悪性腫瘍を疑いますので悪性リンパ腫を最も疑います。

非上皮系で核分裂を伴っており、大型の細胞ですのでびまん性大細胞性B細胞リンパ腫を疑います。

選択肢としては血管腫はT1ではlowですし、病理がそもそも違います。
脂腺癌や基底細胞癌は発生部位が違うように思いますし、サルコイドーシスであれば非乾酪性類上皮肉芽腫がわかるような病理像を載せてくれるはずだと思います。

8問:涙小管炎

答えはa, b

抗菌薬点眼で治らない、眼脂を伴う結膜炎というエピソードと、涙点の発赤、腫脹突出とを認めることから涙小管炎を示唆する症例です。

治療は必要に応じて涙点切開をして、涙小管を圧迫して涙石を圧出したり、内視鏡で直接みながら涙石をかき出したりします。

この症例ほど腫れていれば見落とさないと思いますが、長年眼脂がで続けているような患者さんを見た時は一度は涙点を確認する癖をつけると良いと思います。

余談ですが放線菌(Actinomyces)が涙石を作ることが多いですが、培養は難しいので確実に見るためにはグラム染色を行うのが良いです。

9問:結膜乳頭腫

答えはb

結膜から出ておりピンク色で乳頭状の凹凸があるので結膜乳頭腫を疑います。
結膜乳頭腫はあらゆる年代に生じますが20〜30代が多く、37歳という年齢とも矛盾しません。

術後再発はしやすいですが、基本的に単純切除です。
稀に再発時に悪性と診断される症例もあります。
涙点から出ているような場合には涙道内原発の可能性があるので要注意です。

HPV6, 11型感染との関連があり、好発部位は下円蓋鼻側です。
ウイルスを含んだ涙液が流れる経路と関連して鼻側に好発するのではないかという意見もあるようです。
この症例も鼻側ですね。

10問:春季カタル

答えはb, c

小児で充血と痒みがあり、前眼部写真ではHorner-Trantas斑を認めることから輪部型の春季カタルです。

治療はアレルギー点眼と免疫抑制剤点眼がメインで場合によってステロイド点眼を加えた3者併用療法を行います。

日本で売られている免疫抑制点眼はシクロスポリン(パピロックミニ)とタクロリムス(タリムス)点眼の2種類です。

11問:巨大乳頭結膜炎

答えはb

写真をよく見るとコンタクトレンズをつけており、徐々に乳頭が大きくなっており、巨大乳頭となっているのがわかります。

巨大乳頭結膜炎ではコンタクトレンズがずれるという主訴が特徴的で、これを聞いたら必ず翻転して診察が必要です。

12問:ペルーシド角膜変性

答えはe

円錐角膜では中央が突出、菲薄化するのに対して、ペルーシド角膜変性では下方が突出します。
問題の角膜形状解析では、角膜中央下方に縦の低屈折(青色)の部位があり、その周りを下から囲むように高屈折(赤色)の部位が存在します。

これは蟹の爪のように見えるのでcrab claw appearanceと呼ばれ、ペルーシド角膜変性に典型的な所見です。

13問:アデノウイルス結膜炎

答えはa, c

病歴から感染力の強い結膜炎が疑われ、前眼部所見では多発性上皮下浸潤を認めることからアデノウイルス結膜炎と考えられます。

乳幼児では偽膜を形成します。

多発性上皮下浸潤はステロイド点眼で治療します。
アデノウイルス結膜炎後のものが有名ですが、ヘルペスなどの他のウイルス感染後にもみられることがあります。

ウイルス性結膜炎の既往がなく両眼に多発性上皮下浸潤を生じた場合はタイゲソン点状表層角膜炎を疑います。
ちなみに封入体がみられるのはクラミジア結膜炎です。

14問:薬剤性角膜障害

答えはa, b

長期にわたり角膜びらんの経過を受けていたという病歴や所見から薬剤性角膜障害もしくはドライアイが鑑別に挙がります。

鑑別点としてはドライアイでは結膜障害が強く、薬剤性では無いというのが特徴ですがこのスリットではよくわかりません。見える範囲では結膜障害は無さそうです。
またメニスカスもあまり低いようには見えません。

ephtelial crack lineもありそうですしNSAIDs点眼も入っているので薬剤性角膜障害を最も疑います。

まずは点眼の中止と、ソフトサンティアなどの防腐剤フリーの人工涙液でのウォッシュアウトを行います。

15問:緊急処置・加療を要する角膜疾患

答えはb, e

a. 円錐角膜の急性水腫です。昔は緊急で角膜移植をしていたこともあるようですが、現在は基本的に経過観察で2〜3ヶ月ほどで引いてきます。

b. 内皮の接着不良を疑うので、空気の入れ直しなどが必要そうです。

c. 眼窩脂肪ヘルニアなので経過観察でかまいません。整容的に希望があれば手術を行います。

d. 結膜下出血もしくは出血性リンパ管拡張症を疑います。経過観察でよさそうです。

e. Khodadoust lineをがあり、lineよりも下方の角膜の浮腫を認めます。
拒絶反応は術後6ヶ月~12ヶ月に多いですが、術後1年以上経過して発症する例もあります。
拒絶反応の場合は速やかにステロイド頻回点眼とステロイドパルスが必要です。

16問:核白内障

答えはa, c, e

右上のスリット写真で水晶体の中央の強い混濁を認め、核白内障に特徴的な所見です。

白内障は混濁が均一でなく光の透過性にもバラツキがでるので単眼性複視の原因となります。核白内障では水晶体の中央を通る光と周辺部を通る光で屈折率が大きく違うのでズレて見えます。

高次収差は角膜はゆるやかですが、眼球全体では中央で増加しており、水晶体の収差の増加を疑います。

17問:dome shaped macula

答えはa

これは画像一発問題でdome shaped maculaですね。

dome shaped maculaは強度近視眼に合併することが多く、OCTでこのように黄斑部が眼球内側に盛り上がったような見た目になり、時に網膜下液を伴います。
原因は不明ですが黄斑下の強膜が肥厚しており、これが脈絡膜を押し上げていると考えられています。

典型例ではOCTの垂直断でdome型の盛り上がりがあり、水平断では強膜肥厚があるものの黄斑部は平坦となります。
なかには水平断でもdome型になる症例もあります。

18問:癌関連網膜症

答えはa, b

縦隔周囲の肺癌による癌関連網膜症だと思います。

所見としては自発蛍光で黄斑周囲に低蛍光な箇所があり、網膜色素上皮の萎縮を疑います。おそらく通常の眼底所見は異常無しだと思います。

OCTでは網膜外層やEZの萎縮を伴っており、GPでは傍中心暗点が散在します。

症例をまとめると72歳男性の2週間で進行する網膜外層萎縮を伴う視野障害です。

一見眼底が正常に見える人で数週から数ヶ月で進行する両眼性の視力や視野障害を見た時には自己免疫網膜症(AIR)を考える必要があります。
網膜外層萎縮を伴っており、上記に矛盾しません。

本症例では高齢者ですのでAIRの中でも癌関連網膜症(CAR)が疑われ、嗄声の症状から縦隔周囲の肺癌による反回神経麻痺が疑われます。

以上より、CARの診断を確かにするためのERGと、肺癌精査のための胸部CTが必要です。

19問:先天網膜分離

答えはc

眼底写真では黄斑部に車軸状変化があり。OCTで網膜分離を認めます。

網膜分離は網膜の内層と外層の間で分離し、網膜剥離は視細胞層と網膜色素上皮の間で剥がれますので対比して覚えておくと良いと思います。

網膜剥離を合併することもありますが、視力予後が極めて不良であるということは無いと思います。

他の選択肢は全て正しいです。

20問:網膜血管腫状増殖

答えはc

眼底写真だけでAMDの診断は難しいので造影検査所見もつけて欲しいところですが…

眼底に軟性ドルーゼンを伴っており、黄斑耳上側に網膜内層出血を認めます。
この特徴からはRAPを疑います。またOCT所見を見ると軟性ドルーゼンが観察できるのもcのみですのでこれでよいかと思います。

RAPは他のAMDと違って網膜内新生血管を伴うので表層に出血を認めることが多いです。

a. 脈絡膜肥厚とSRFを認め、中心性漿液性網脈絡膜症だと思います。

b. 急峻なPEDを伴っておりPCVを疑います。

c. PEDに嚢胞様黄斑浮腫を合併しているのでRAPを疑います。
通常のAMDでは脈絡膜から新生血管が出るので脈絡膜側から水がたまっているような所見となりますが、RAPでは網膜内新生血管の影響で嚢胞様黄斑浮腫を合併します。

d. type1CNVを伴う滲出性加齢黄斑変性症です。

e. type2CNVを伴う滲出性加齢黄斑変性症です。

21問:網膜芽細胞腫

答えはe

1歳児の右眼の網膜に白色病変があり、もう片眼が網膜全剥離となっているという情報から両眼性の網膜芽細胞腫を疑う問題だと思います。

両眼性なので癌抑制遺伝子のRb遺伝子異常がある可能性が高いので染色体検査を行います。

エコーやCTでは腫瘍内の石灰化を認めます。
また、選択肢にはありませんが両眼性なので、三側性網膜芽細胞腫をみるために松果体部腫瘍の有無も見ておく必要があります。

診断のためにはエコーやCTで腫瘍内の石灰化を確認するのが重要です。
染色体検査は診断のために行う検査ではなく、診断後に行う検査です。

22問:白子症

答えはb

眼底写真では脈絡膜の血管が透過して見えているのが特徴的で、OCTでは黄斑低形成を認めます。

母親の眼底にも色素脱失を認めることから眼白子症です。

脈絡膜血管が透過しているのは網膜の色素が無くなっているせいです。

X劣性遺伝形式ですので男児に多く、保因者である母親の眼底にも色素脱失を伴うのが特徴です。

23問:網膜前出血

答えはc

鼻側網膜に、網膜前出血を認めます。
4ヶ月後には出血は自然吸収されており、引き伸ばされたILMが観察されます。

a. くも膜下出血に伴って硝子体出血が起こる疾患です。
網膜前出血を起こすこともありますが 、SAHを示唆する所見はなさそうです。

b. 後部硝子体剥離に伴い硝子体出血を起こしますが、網膜前出血ではありません。

c. 典型的にはいきんだ際に胸腔内圧が上がり、静脈圧上昇に伴い網膜前出血を起こします。
筋トレでの息止め、飲み過ぎでの嘔吐、出産後など様々な状況での発症が報告されています。
嘔吐後という病歴もこの疾患を示唆していると思います。

d. 胸部や頭部外傷で骨折に伴い空気塞栓や脂肪塞栓が起こることで眼底出血を起こす疾患ですが、外傷歴はありません。

e. 細動脈瘤破裂では網膜前出血を含めた様々な層に出血が及びます。眼底写真では明らかな動脈瘤は見つかりません。

24問:トキソプラズマ

答えはc

これは情報が少ないですが、眼底写真で黄白色滲出斑があり、FAGでは滲出斑の中央が黒くなるcenter blackという所見を示しており、そこからトキソプラズマによるぶどう膜炎を想起させる問題だと思います。

先天性では母子感染で、典型的には両眼性に網膜瘢痕病変を認め、再活性化の際には瘢痕病変の近くに新規病変が出てきます。
再活性化時もトキソプラズマIgMは陰性で、IgGが陽性です。

後天性ではトキソプラズマの終宿主のネコなどからや、生肉を食べての感染が原因で、片眼性に眼底に滲出斑が出てきます。
こちらはIgMもIgGも陽性となります。

どちらの場合もactiveな病変では上記center black所見が特徴的です。

治療はトキソプラズマに効果のあるアセチルスピラマイシンが第一選択で、炎症所見が強い場合はステロイドを併用します。

25問:悪性リンパ腫

答えはd

70歳と高齢女性に発生した、片眼の眼底滲出斑です。
数ヶ月の経過で顆粒状の病変が癒合しながら拡大していることから、悪性リンパ腫を疑います。

サルコイドーシスや急性網膜壊死なども鑑別には挙がりますが、経過が割と緩やかなことや、片眼性のこと、高齢発症のことも考慮すると第一に鑑別すべきは悪性リンパ腫かと思います。
自発蛍光を撮ると滲出斑部分が過蛍光となります。
また、病変部分をOCTで切ると網膜色素上皮下に腫瘍の浸潤が観察出来ることがあります。

診断のためには硝子体生検を行いますが、一度の検査では診断出来ずに何度も生検が必要となることもあります。

26問:結核性ぶどう膜炎

答えはe

眼底写真では白鞘を伴った網膜静脈炎とその周囲の斑状出血を認めます。

FAGでは静脈の白鞘部分に一致して軽度過蛍光となっています。

上記特徴は結核性ぶどう膜炎に特徴的ですのでeが正解だと思います。

ぶどう膜炎では静脈炎のみなのか、動脈炎を伴うかが鑑別点の一つです。
感染性では動脈炎を伴うものが多く細菌性眼内炎や急性網膜壊死などが挙げられます。

一方で結核は感染性ですが静脈炎がメインとなっており、これは結核菌自体が悪さをするわけではなく、結核菌に対する免疫応答がぶどう膜炎の主要な原因だからかもしれません。

27問:脈絡膜骨腫

答えはb

若年女性の片眼性の脈絡膜腫瘍で、disc近くと黄斑部に黄白色病変があることから脈絡膜骨腫を疑います。
眼窩部CTで石灰化を確認します。

123I-IMP-SPECTは悪性黒色腫を見るときに使用することがあります。

28問:高血圧

答えはd

動脈狭小化が強く、硬性白斑を伴っているのでH3だと思います。

なので自動的に答えはdになりますが硬化性変化については、血柱反応はかなり強い印象なのでこれを銅線動脈と判断していいのですかね?
交叉現象はdisc周りを除くとあまりはっきりわからなかったのですが

29問:Duane症候群

答えはa

右眼の外転障害と、左方視時の右瞼裂狭小化があるのでDuane症候群1型ですね。

Duaneは専門医試験でよく見かけますが全体の9割程を占める1型ばかりが出ている印象です。

基本的には外直筋の異常神経支配が起こっており1型では外転神経が外直筋につながっておらず、内直筋へ行く動眼神経が一部外直筋へ繋がってしまっています。
ですので外転しようと刺激を出しても外直筋は反応せず、内転しようと刺激を出すと内転はできますが、一部外直筋も引っ張られるので眼がひっこんで瞼裂狭小化が起こります。

30問:下斜筋過動

右を見た時は正常ですが、左を見た時に右眼が軽度上転しています。
これを下斜筋過動と呼びます。

これは基本的には上斜筋が減弱していることが原因となります。
第一眼位では上下については上下直筋のバランスによって規定されています。例えば上直筋が弱いと下直筋にひっぱられて上斜視となります。

一方で、内転位となった場合には上下直近と上下斜筋の付着方向の違いにより、上下については上下斜筋のバランスによって規定されます。
上斜筋麻痺がある場合には、第一眼位では上下直筋は正常のため上下斜視は顕著ではありませんが、内転位になった場合には下斜筋作用が相対的に強くなるので上転してしまいます。これを下斜筋過動と呼びます。

ですので下斜筋過動の治療には下斜筋を減弱することが必要となります。

実際V型斜視に下斜筋過動を伴うことは多いですが、V型ではそれ以外に筋肉の付着部異常もあるのでこれだけでは説明できませんが、問題を解く上ではざっくりこれでいいと思います。

下斜筋過動があるだけでは手術適応になりませんので、眼位やカバーアンカバーテスト、Bielschowsky、自然頭位の画像や情報がほしい所です。

31問:先天眼振

答えはd

先天眼振にはいくつか種類がありますが、狭義の先天眼振では静止位と言ってある方向を向いていると眼振が出ないという向きがあります。

この子の場合は左方視時が眼振の出ない静止位なのでその状態を保つように異常頭位がみられます。

治療のためには静止位が正面にくるようにプリズム眼鏡を処方したり斜視手術を行います。
この症例では静止位が左側にあるので正面にもってくるためには、右眼にプリズムを基底外方、左眼に基底内方にします。
斜視手術では右内直筋後転と左外直筋後転を行えば静止位を正面寄りに持ってくることができるのでdが答えになります。

等量手術かどうかはあまりわかりませんでしたが、症例によって違うのでは?と思いました。

他には先天眼振は輻輳で改善すること、OKNでは逆向きに眼振が出ること、乱視を合併するのでその矯正も重要なことなどが狙われやすそうなので合わせて覚えておくと良いと思います。

32問:視神経乳頭ドルーゼン

答えはd

視神経乳頭ドルーゼンは、視神経乳頭上や乳頭に埋没したガラス様の構造物を認める先天異常です。

うっ血乳頭のように見えるため偽うっ血乳頭をきたす疾患の一つです。

この症例のように自発蛍光でドルーゼンが光ること、Bモードエコーでは石灰化を認めることなどから診断します。

33問:視神経乳頭黒色細胞腫

答えはc

画像所見より視神経乳頭黒色細胞腫です。
これは先天性の過誤腫で良性腫瘍です。

典型的には片眼性で女性に多く、自覚症状はなく検診で発見されることが多いですが、視野障害を伴う場合があります。

進行はほとんどありませんが、ごく稀に悪性化することもあるので経過観察が必要です。

34問:海綿静脈洞病変

答えはc or e?

前眼部写真ではコイル状に拡張した血管を認め、MRIでは左上眼静脈の拡張と左外斜視を認めます。眼瞼下垂は伴っていないものの、左海綿静脈洞病変による左動眼神経麻痺の存在を疑います。

この症例では動眼神経麻痺を認めますが、この患者にみられる複視の原因で最も頻度の高いのはどれかという問題ですので内頸動脈海綿静脈洞瘻で起こる頻度が高いのは外転神経麻痺になります。

症例問題なので、この患者の場合何が起こっている可能性が高いのかという問題かと考えましたが、どちらが答えかは不明です。

35問:滑車神経麻痺

答えはe

眼底写真、Hess赤緑試験の結果からは左眼の上斜視及び両眼の外方回旋を認めますので両滑車神経麻痺を疑います。

典型的には両側だと両眼上斜視となり、一見眼位は正位にみえますが、この症例では左の方が障害が強いのか上下ズレが出ています。
左だけの障害ではなく、右眼も回旋あるように見えるのですが合ってますかね?

滑車神経は中脳の背側から出てクロスして反対側の上斜筋に伸びていきます。ちょうど脳幹の真後ろに滑車神経が交差するところがあるので頭部外傷でここがやられると両側の麻痺が起こります。

滑車神経麻痺は内方回旋作用があり、右眼では顔を右に傾斜したときに回旋作用が働きます。
麻痺があると内方回旋ができないので、代わりに内方回旋作用のある上直筋がはたらくため患側へ頭部を傾斜すると患眼が上転します。
これを頭部傾斜試験陽性と呼びます。

36問:ICE症候群(進行性虹彩萎縮)

答えはd

画像所見では瞳孔偏位と虹彩萎縮を伴っており、ICE症候群の進行性虹彩萎縮を疑います。

若年成人女性に多く、片眼性なので症例とも合致します。

進行すると眼圧上昇も伴います。これは内皮がシュワルベ線を超えて隅角や虹彩表面にまで進展することにより起こります。

スペキュラー所見の特徴としては、細胞が6角形ではないこと、また、正常では内皮細胞自体は明るく輪郭が暗くなっているのに対し、進行性虹彩萎縮では内皮細胞自体が暗く、輪郭が明るくなっているのが特徴的ですのでdが答えです。

37問:緑内障

答えはd

OCTのマップの画像を上下反転して、網膜菲薄化部位が一致しているdが答えです

38問:プラトー虹彩

答えはc, e

虹彩根部の急峻な立ち上がりと前方湾曲をUBMでみとめますのでプラトー虹彩を疑います。
この症例のように40代と比較的若く白内障の進行もあまりない患者の急性緑内障発作ではプラトー虹彩機序のことが多いです。

暗室では散瞳するので瞳孔ブロックやプラトー虹彩機序を増強し、うつむきにより瞳孔ブロックと水晶体因子を増強することで、眼圧上昇リスクを評価することができます。

虹彩の前方湾曲は瞳孔ブロック機序によりみられます。1枚目の写真は暗室うつむき試験でプラトー虹彩に瞳孔ブロック機序が増強している画像かなと思いましたが、前方湾曲ははっきりしないように思います。

UBMでは毛様体やチン氏帯まで観察することができます。

ちなみにdouble hump signというのは隅角鏡で圧迫した際にみられる所見で、瞳孔縁は水晶体による隆起があり、虹彩周辺部では前方回旋した毛様体による隆起をみとめる所見で、プラトー虹彩でみられます。隅角鏡での所見が有名ですが、UBMでもdouble hump signを観察することができますのでこちらが正解だと思います。

39問:白内障手術併用眼内ドレーン

答えはa, e

iStentの適応についてはあまり僕自身わかっていないのですが消去法でa, eを選びました。

bは隅角結節がありactiveな炎症があるのでまずはその治療が優先です。

cは隅角新生血管を認め、dは広範なPASを認めるのでいずれも適応外かと思います。

40問:両耳側半盲

答えはc

高眼圧や左cuppingはありますが、両耳側半盲もありそうなので下垂体病変の存在を疑います。

視交叉の病変の精査が必要なので頭蓋内精査を行う必要があるので診断のために頭部MRI検査を行います。

下垂体腺腫などの視交叉病変ではOCTで初期には異常はありませんが、神経萎縮が起こると鼻側半網膜のcpRNFLの菲薄化を認めるようになります。OCTは簡便に撮れるので緑内障合併もありそうなので実際の臨床では行うと思いますが、診断に必須ではありませんのでMRIが答えでよいと思います。

41問:眼球破裂

答えはb

眼外傷において、高度な前房出血や低眼圧、血性流涙、眼科手術の既往、CTやエコーでの眼球虚脱がある場合には眼球破裂の可能性を考慮する必要があるかと思います。

この症例では多量の前房出血と低眼圧があるのでまずは強膜裂創の確認で良いかと。

眼球破裂が無くても毛様体解離により低眼圧となることがあり、低眼圧が続き、低眼圧黄斑症が遷延化すると不可逆な視力障害を残すので要注意です。

42問:網膜中心静脈閉塞症

答えはa

静脈にそって斑状、シミ状の出血を認め、静脈の拡張や蛇行を認めることから切迫型の網膜中心静脈閉塞症だと思います。

火炎状出血や軟性白斑は伴っていません。
切迫型では基本的に黄斑浮腫がなければ経過観察で良いのでaが答えだと思います。

43問:層状白内障

答えはa

水晶体の中央部は混濁しておらず、その周りが層状に混濁していますので層状白内障と思われます。

層状白内障は先天性の白内障の一つで、両眼の混濁に左右差がなければ学童期まで待って、不便を感じてから手術をしても予後が良いようです。

44問:トーリックIOL

答えはb

視力やレフのC面の値は角膜乱視+水晶体乱視の値となっています。
白内障手術により水晶体乱視は取り除かれますので、角膜乱視の値を元にレンズを選びます。

この眼では7度が強主経線の倒乱視です。
仮でトーリック計算したものを貼っておきます。

45問:レンズ

答えはd

後発白内障を認めますのでYAG用のdが答えです

aは強膜圧迫子がついており鋸状縁や毛様体観察用のレンズ

bはPRP用の接触レンズ

cはトラベクレクトミー後のレーザー切糸用のレンズ

eはスリーミラーかなと思います

46問:黄斑円孔

答えはa

術後所見では円孔閉鎖が得られていますので、経過観察です。外層も完全に閉鎖するにはもう少し時間がかかります。

47問:網膜剥離

答えはd

上方の網膜が完全に手前側へめくれてしまっている網膜剥離です。
パーフルオロカーボンで網膜を伸ばしながら復位させていく必要があるので、網膜下迷入が特有の合併症で良いのかなと思いました。

48問:硝子体手術

答えはc

マキュエイドで硝子体を可視化しており、部分的にPVDが起こっています。
カッターでひっぱっているように見えるので後部硝子体剥離の作成中の画像だと思います。

49問:pit macular syndrome

答えはe

discにpitを認め、OCTではpitの部分から連なる網膜内層の分離と、その下の漿液性剥離を認めますのでこれはpit macular syndromeです。

治療は硝子体手術です。

50問:網膜細動脈瘤

答えはa, c

網膜細動脈瘤です。
PCを行うと破裂を起こすことがあります。細動脈瘤の出血は網膜の様々な層に及ぶのが特徴で、網膜前や硝子体出血を起こすこともあります。

BRAOを合併しますが、VOの合併は稀です。

ちなみにPCの合併症で網膜色素上皮裂孔もありますが、通常の網膜光凝固と違って細動脈瘤に対するPCでは網膜を焼かないように血管表面を焼くようにしますので網膜色素上皮裂孔は起こりにくいと判断して答えには選びませんでした。

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