どんな病気か

レーベル遺伝性視神経症(LHON)は、20歳前後の男性に好発します。患者の8〜9割が男性です。

片眼の亜急性の視力低下で発症し、数週〜数か月の間隔をあけて、もう片眼も視力低下が始まります。

視野検査では中心暗点や盲点中心暗点が多いです。視力は悪くても指数弁〜0.01程度までで、光覚弁なしになることはまれです。

両眼のゴールドマン視野。どちらも周辺の視野は保たれ、中心に小さく濃い暗点がある
Macular thickness changes in a patient with Leber’s hereditary optic neuropathyより引用(CC BY 4.0・一部改変)

両眼の視力低下で受診した40歳女性の初診時のゴールドマン視野です。周辺の視野は保たれ、両眼に小さく濃い中心暗点を認めます。

片眼発症で視力に左右差があっても、対光反射が比較的保たれるのが特徴で、RAPDが陰性になることもあります。フリッカー値も、視力の割に保たれることが多いです。

 

RAPDやフリッカー値に異常がないからといって視神経疾患を否定せず、視野検査や、場合によってはVEPを行って視神経障害を疑うことが大切です。

私自身も、心因性視力障害疑いの小児で、VEP で片眼の P100 潜時の延長を認めたことから視神経障害の可能性が高まり、レーベル遺伝性視神経症の診断に至った症例を経験しました。

眼底所見

急性期には、乳頭が赤く熟したように充血し、その周りに微細な血管拡張や蛇行を来すのが特徴です。

早期のレーベル遺伝性視神経症の両眼の眼底写真。両眼とも乳頭が発赤し、縁が不明瞭で、周りの血管が蛇行している
Recognizing Leber’s Hereditary Optic Neuropathy to avoid delayed diagnosis and misdiagnosisより引用(CC BY 4.0・一部改変)

発症早期の両眼の眼底です。両眼とも乳頭が発赤し、腫れた神経線維層で乳頭の縁が不明瞭になり、周りの血管が蛇行しています。

乳頭は充血して腫れているように見える割に、乳頭浮腫はなく、蛍光眼底造影でも漏出はありません。ここが視神経炎との鑑別のポイントです。

乳頭が腫れて見えるのは乳頭周囲の神経線維層が腫れているためで、乳頭の縁が不明瞭でなくても、OCT で撮影すると腫脹しているのが確認できます。

早期のレーベル遺伝性視神経症の両眼の視神経乳頭の OCT。厚みの地図で両眼とも乳頭の周りが厚く、平均 RNFL 厚は右眼 154 µm・左眼 174 µm
Recognizing Leber’s Hereditary Optic Neuropathy to avoid delayed diagnosis and misdiagnosisより引用(CC BY 4.0・一部改変)

上の眼底と同じ時期の OCT です。乳頭周囲の網膜神経線維層の平均の厚さは右眼 154 µm・左眼 174 µm で、ほとんどの区画が白く表示され、正常範囲より厚くなっています。

発症から数か月で乳頭は萎縮し、耳側あるいは全体が蒼白になります。

乳頭所見が正常のレーベル遺伝性視神経症もあるので注意です。

両眼の眼底写真。乳頭も網膜も正常に見える
Macular thickness changes in a patient with Leber’s hereditary optic neuropathyより引用(CC BY 4.0・一部改変)

上の視野の40歳女性の初診時の眼底です。乳頭は正常に見え、蛍光眼底造影でも異常はありませんでした。

遺伝形式

その名のとおり遺伝性の病気で、ミトコンドリア遺伝(母系遺伝)です。

ミトコンドリアDNAは母親からしか受け継がれないので、母親が変異をもっていれば子どもは男女とも変異を受け継ぎ、父親からは伝わりません。それでも、変異をもつ人が全員発症するわけではありません。発症するのは、変異をもつ男性で約半数、女性で約1割と言われています(報告によって男性の20〜60%、女性の4〜32%と幅があります)[1]。

男性ではかなり高い割合で発症するので、診断したときは遺伝カウンセリングの体制のもとで、ご家族にも病気と遺伝のことを説明するようにしています。

遺伝子変異

遺伝子変異は専門医試験でも問われたことがあるので、覚えておくとよいと思います。

  • 11778
  • 3460
  • 14484

この3つがメインで、外注検査でもこの3つをセットで調べてくれるものが多いです。特に11778変異が日本人家系の約90%を占めます。[2]

僕はしょーもない語呂合わせで覚えてるので、よかったら使ってください。

「イナバ 三四郎 の 医師しわしわ」

変異の種類で予後も違います。視力が回復する可能性は、11778変異で4%と低く、3460変異で22%、14484変異で37%と報告されています[3]。

この3つがすべて陰性でも、まれな変異や新しい変異の可能性があるので、レーベル遺伝性視神経症は否定できません。

発症に影響する因子と合併症

発症に影響する因子として、喫煙、アルコール、栄養障害、頭部外傷などが報告されています。なかでも喫煙は、発症と進行のリスクになることが証明されています[4]。患者さんやご家族に「気をつけることは?」と聞かれたときは、禁煙・節酒を中心に説明します。

また、心伝導障害を合併していることがあるので、循環器内科にも相談しておくとよいです。

治療

残念ながら、確立した治療はありません。

コエンザイムQ10の誘導体であるイデベノンは、欧州では2015年に、青年・成人のレーベル遺伝性視神経症による視覚障害の治療薬として承認されています[5]。国内では有効性が示されつつあるものの、まだ研究段階です。海外では、ミトコンドリア遺伝子の遺伝子治療の治験も行われています[4]。

まとめ

  • 若い男性に片眼ずつ起こる視力低下。視力の割に対光反射が保たれる
  • 乳頭は充血して見えるが浮腫・蛍光漏出はない
  • 主な変異は11778(日本人の約9割・回復しにくい)。禁煙・節酒を指導

参考文献

[1] 江本博文, 清澤源弘, 藤野貞. 神経眼科―臨床のために 第3版. 医学書院; 2011. p.126.

[2] 特集:視神経症のよりよい診療. MB OCULISTA. 2014;(13):44. 全日本病院出版会.

[3] 中馬秀樹(編). 専門医のための眼科診療クオリファイ7 視神経疾患のすべて. 中山書店; 2011. p.175.

[4] 難病情報センター. レーベル遺伝性視神経症(指定難病302)(令和8年10月更新). https://www.nanbyou.or.jp/entry/4660

[5] European Medicines Agency. Raxone (idebenone). https://www.ema.europa.eu/en/medicines/human/EPAR/raxone

この記事の英語版(poisensei.com):Leber Hereditary Optic Neuropathy (LHON): Signs, Genetics and Treatment

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