どんな病気か

エタンブトールは、結核や非結核性抗酸菌症(MAC症など)の治療に使われる抗菌薬です。

エタンブトール視神経症では、内服を始めてから1か月〜2年ほど経ってから、徐々に両眼の視力障害や視野障害が出てきます。2か月以内に起こることは少なく、発症までの期間は平均7か月です[1]。

治療開始から1年以上経ってから発症することもあるので、こちらから狙って内服歴を聞く必要があります。

 

特に非結核性抗酸菌症は高齢者に多く、原則2か月で終える結核の治療と違って、エタンブトールを1年以上、ときには再発のたびに繰り返し飲み続けることがあるので、最近はエタンブトール視神経症の増加が問題になっています。

発症しやすいのは、次のような場合です。

  • 投与量が多い(1日25mg/kg以上で起こりやすい)
  • 投与期間が長い
  • 腎機能障害がある(エタンブトールは腎排泄なので、重症化しやすい)
  • 高齢、低体重、糖尿病、高血圧

現在の標準量は1日15mg/kg(上限750mg)です[5]。15mg/kg以下では発症は比較的まれですが、この量で発症した症例も報告されています[4]。

症状と所見

視力障害は両眼とも同程度のことが多いので、その場合はRAPD陰性になります。

視野障害は中心暗点が典型的です。両耳側半盲になることもあるので、視交叉病変との鑑別が必要です。ハンフリーなどの静的視野で比べると、両側の耳側の感度低下が強い例が多いです[2]。

そのほか、フリッカー値の低下や色覚異常も認めます。色覚異常は、視力が下がる前から出ることもあります。

眼底所見は基本的に正常ですが、軽度の乳頭腫脹を認めることもあります。進行すると視神経萎縮になっていきます。

初期は眼底が正常なので、高齢者では白内障による視力低下と誤診されやすいです。視力低下の割に水晶体の混濁が軽いときは、内服歴を確認しましょう。

発症のメカニズム

エタンブトールは脂溶性の薬剤で、視神経へ移行して神経毒性を生じます。

さらにエタンブトールには、鉄・銅・亜鉛に対するキレート作用があります。亜鉛が欠乏すると、ミトコンドリアの呼吸機能が落ちて神経障害につながると考えられています。

特に視交叉は亜鉛の含有量が少ないため、亜鉛が欠乏すると視交叉が障害され、両耳側半盲が起こると考えられています。

治療

治療は、まずエタンブトールを中止することです。これに勝る治療はありません。

そのうえで、

  • 神経を栄養するビタミンB12の内服
  • 亜鉛欠乏があれば亜鉛の内服(採血で亜鉛もチェックします)

を行います。

ステロイドは効果が期待できず、結核などの感染症を悪化させるおそれがあるので使いません。

エタンブトールを中止してから、6〜8週間程度で視力が回復し始めることが多いです。

中には1年ほどかけて回復するものもあり、中止してから3か月程度は病状が進行することもあります。

 

事前に患者さんに説明しておかないと「治療が間違っているのでは」と思われてしまうので注意です。

中止が遅れて視力が0.1以下まで下がった症例は予後不良です[4]。だからこそ早期発見が大切です。

早期発見のために

2022年に、日本結核・非結核性抗酸菌症学会・日本眼科学会・日本神経眼科学会の3学会が合同で「エタンブトール(EB)による視神経障害に関する見解」を出しました[3]。眼科医として押さえておきたいのは次の点です。

  • 投与前に、処方医の紹介状を持って眼科を受診してもらい、視力検査・細隙灯顕微鏡検査・眼底検査で投与に支障がないかを判断する。視神経炎などの視神経の病気がある患者さんには、原則として使わない
  • 投与中は、自覚症状がなければ1〜3か月ごとに眼科で評価する
  • 眼科では、矯正視力の検査は必須で、視野検査も行う。必要に応じてフリッカー検査も行う。色覚検査(石原式)やアムスラーチャートも早期発見に役立つ
  • 患者さんには、毎朝、片眼ずつ、同じ距離で新聞やスマートフォンの文字を読み、前日より見にくくなっていないかを確かめてもらう。見にくくなったら、まず内服を中止して眼科を受診してもらう

投与前の診察では、緑内障などもともとある視神経の病気も確認しておきましょう。投与中に視力や視野が下がったときに、エタンブトールによるものかを判断しやすくなります。

呼吸器内科からの検査依頼は今後も増えると思いますので、ぜひ覚えておいてください。

まとめ

  • 内服中の両眼の視力低下を見たら、年単位前からでも内服歴を聞く
  • 治療はまず中止。中止後3か月ほどは悪化しうると先に伝える
  • 投与前と投与中(1〜3か月ごと)の眼科チェックと、毎朝の片眼ずつのセルフチェックで早く見つける

参考文献

[1] 大路正人, 後藤浩, 山田昌和, 野田徹(編). 今日の眼疾患治療指針 第3版. 医学書院; 2016. p.806.

[2] 特集:視神経症のよりよい診療. MB OCULISTA. 2014;(13):68. 全日本病院出版会.

[3] 日本結核・非結核性抗酸菌症学会, 日本眼科学会, 日本神経眼科学会. 「呼吸器内科医がエタンブトール投与に際して行うべき眼科的副作用対策」について. 日本眼科学会雑誌. 2022;126(3):109–110.

[4] 厚生労働省. 重篤副作用疾患別対応マニュアル 網膜・視路障害(平成21年5月・令和元年9月改定). https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/resources/news/m_484_1.pdf

[5] 日本結核・非結核性抗酸菌症学会(編). 結核診療ガイドライン2024. 南江堂; 2024. p.45.

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