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薬剤性角膜上皮障害について
点眼薬によって角膜上皮障害を引き起こすことがあります。
主な原因としては点眼薬に使用されている防腐剤である塩化ベンザルコニウム(BAC)によるものと、点眼薬自体によるものがあります。
薬剤性角膜上皮障害の原因点眼
- 塩化ベンザルコニウム(BAC)などの防腐剤
- 緑内障点眼(βブロッカー、PGなど)
- 抗菌薬(特にアミノグリコシド)
- 抗真菌薬
- 抗ウイルス薬
- NSAIDs
- 点眼麻酔
薬剤性角膜上皮障害の所見
薬剤毒性による角膜障害ではいくつかの特徴的な所見があります。
delayed staining
薬剤性角膜上皮障害ではフルオレセインで染色してからしばらく時間がたつと、delayed stainingと呼ばれるフルオレセインが角膜内に染み込んだ様な所見を認めます。
薬剤によって角膜最表層上皮のバリアー機能の障害があり、透過性が亢進することで引き起こされます。
ハリケーン角膜症
角膜上皮障害が慢性化すると上皮の障害を代償しようと周辺から中心への上皮細胞の移動が活発となり、渦巻きのような上皮障害となります。これをハリケーン角膜症と呼びます。
他にも渦巻き状に角膜に沈着物を認める疾患としてアミオダロン角膜症やFabry病などもありますので併せて覚えておくと良いと思います。
epithelial clack line
上皮障害がひどくなった場合には上皮細胞の移動によって代償しきれなくなり、角膜中央近くにひび割れ状の角膜上皮障害を認めることがあります。
これをepithelial crack lineと呼びます。
偽眼類天疱瘡
薬剤毒性では前述のような角膜の障害が起こることがほとんどですが、稀に偽眼類天疱瘡を引き起こすことがあります。
偽類天疱瘡は、眼類天疱瘡と同じく結膜嚢の短縮や瞼球癒着を来しますので、これらの所見にも気をつける必要があります。
薬剤性角膜上皮障害の鑑別疾患
角膜上皮障害(SPK)を認めた時の鑑別としてはドライアイと、この薬剤性角膜上皮障害が挙げられます。
鑑別点としては以下の2点があります。
- ドライアイでは角膜よりも結膜上皮の障害が強い
- 薬剤性角膜上皮障害では角膜の障害のみ
薬剤性角膜上皮障害の治療
治療は基本的に原因薬剤の中止と防腐剤フリーのソフトサンティアなどの人工涙液の頻回点眼によるwash outを行います。