角結膜疾患

アデノウイルス結膜炎について

アデノウイルス結膜炎について

アデノウイルスの感染では流行性角結膜炎や、咽頭結膜熱(プール熱)などの分類がウイルスの型とともに行われていましたが、最近はアデノウイルス結膜炎とひとくくりにするのが主流です。

アデノウイルスは非常に感染力が強く、乾燥にも強く、エンベロープを持たないのでアルコールにも抵抗性です。

アデノウイルス結膜炎の症状

感染した場合には1〜2週間の潜伏期間を経て眼脂、充血などの症状で発症します。

アデノウイルス結膜炎の検査所見

細隙灯所見

細隙灯では上下眼瞼結膜に濾胞形成を認め、眼瞼縁の点状出血の存在はウイルス性結膜炎に特徴的です。時に偽膜を形成することもあります。
他にも耳前リンパ節腫脹や発熱、咽頭痛などがありますが必発ではありません。

アデノウイルス結膜炎が治る頃以降に、角膜上皮下の混濁を認めることがあります。
これは多発性角膜上皮化浸潤(MSI)と呼ばれ、角膜上皮に潜んだアデノウイルスに対する免疫応答によって生じます。

アデノウイルス結膜炎以外にもクラミジア結膜炎などでも類似の所見を認めることがありますがアデノウイルスにしてはなかなか治らないこと、塗抹検査で好中球優位なこと(アデノでは単核球優位)などで鑑別できます。

アデノウイルス迅速検査

検査にはアデノチェックなどの迅速キットが有名ですが、この検査は感度60%程度、特異度が99%です。
つまり、陰性だからといって否定は出来ないけれど陽性ならほぼ確実に診断が出来る検査です。

どんな検査でも感度と特異度について考えるのは非常に大切です。

検査感度について

感度60%の理由としては、アデノウイルスがたくさんの型があることが影響しています。
昔の教科書では8型が多いとありますが、様々な型が見つかっていて、ウイルス自体も変異を繰り返しており、近年では53, 54, 56型などが多く分離されています。
このようにウイルスがどんどん変異していますが、現行の迅速検査では37型くらいまでしか対応していない検査が多いです(37型までと書いていても54型などで陽性が出ることもある)。

もう一つとしてウイルスの検体採取のやり方でも偽陰性となることがあります。
ウイルスは結膜の細胞の中に隠れいてるので瞼をそっとこする程度ではダメです。
瞼を割とグリグリとこすりとった上で、綿棒を検査用の液につける際にスピッツの壁に綿棒をなんども強くこすりつけて採取した細胞を壊してウイルスを露出しなければ陽性にはなりません。

アデノウイルス結膜炎の治療

治療に関してはこれまではクラビットとフルメトロンの併用が行われていましたが、近年では初期からのステロイドの使用によりウイルス感染を遷延化させる可能性なども指摘されています。
また、クラビットに関しても全例では必須というわけでなく免疫力の弱い小児や高齢者で細菌の混合感染リスクが高い症例に使用するのが良いという意見もあります。

私個人としてはリスクの無い成人ではブロナック単剤、高齢者などではブロナックとクラビットの併用で治療開始し、角膜上皮下浸潤が出現したらフルメトロンを追加するようにしています。

この辺りはコンセンサスが得られていないので私も何が正解かあまりわかっておりません。

その他

学校感染症第3種に指定されています。
医師が感染の恐れがないと認めるまで出席停止となります。

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