こんにちは!眼科医ぐちょぽいです!
本日は私が個人的に一人でも多くの眼科医に知っておいてもらいたいという細菌感染症の考え方の総論的内容をお話したいと思います。
細菌感染症を疑った際にまず第一に考えるべきことは
- どのような免疫状態の患者(免疫抑制、DMなど)で
- どの部位の
- どのような微生物による感染で
- どの抗菌薬を
- どの用量で
- どれくらいの期間投与する
ということです。患者を見た時点である程度上記の内容を埋められるようになるのが理想ですので、私は毎回これを愚直に考えるようにしています。
投与期間などは治療経過によりますので難しいと思いますが他はある程度慣れてくればわかるかと思います。
ですので、感染症!チエナム!みたいなことは最も避けるべきことで、それでたまたま治ればいいですがそれで治らない症例に出会った時に詰んでしまいます。
毎回この考え方が出来ていると特殊な起因菌に対しても適切に対応できるはずだと思います。この記事ではこの考え方の中でも抗菌薬の投与量についてお話したいと思います。
抗菌薬には大きく二つに分けて、濃度依存性のものと時間依存性のものが存在します。
濃度依存性で代表的なものとしてはニューキノロン(クラビット)です。これは濃度が高ければ高いほど抗菌効果が強くなるお薬で、クラビットも500mgを1日1回が標準量かと思います。なのでこのタイプの薬を低容量でだらだらと1日3回飲ませたりするのは意味がありません(昔のクラビットのDIではそのように書いてたようです)。
時間依存性で代表的なものがペニシリンやセフェム系、カルバペネム(チエナム)などです。
これは一定以上の濃度を長時間保つことで抗菌効果が強くなります。特に広域抗菌薬として眼科領域で使用されるチエナムやファーストシンなどは非常に半減期が短いので1日2回の投与量ではほとんど有効な濃度を保ち続けることが出来ません。
時間依存性の中にはアジスロマイシン(ジスロマック)などのように半減期が比較的長いため単回投与で良かったり、1日1回投与で大丈夫なものもあります。
ですのでざっくりと
- 濃度依存なので一気にいっぱい飲んで濃度を上げる薬
- 時間依存なので定期的に3〜4回くらい投与し続ける薬
- 時間依存だけど長い間効果があるので1日1回でいい薬
の3つに分けて考えるとよいかと思います。
本記事の内容で何が言いたいかというと、抗菌薬に関してはDI通りの処方だと全然足りない薬があると言うことです
例
スルバシリン(ユナシン)
DIでは3gを1日2回
実際に必要なのは3gを1日4回
チエナム
DIでは500mgを1日2回
実際に必要なのは500mgを1日4回
もちろん全例にfull doseの抗菌薬が必要というわけではありませんし、腎機能や体格を考慮して量を考えます。
しかし、DI通りのままだとあきらかに効果が弱い場合があるということは知っておいてください。
(ごく軽症の場合は足りない量でも効いてしまうこともあるので、余計に不適切な投与量がまかり通っています。)
これらのことを考慮すると、外来でチエナム1回だけ点滴するなどの治療はナンセンスだとお分かりいただけるかと思います。
投与量については定番ですがサンフォードなどが良書ですが70kgの男性を想定しているそうですので、それは考慮が必要です。 体格に応じた明確な減量の基準は無いのですが、サンフォードでも投与量は少し幅を持って記載しているので小柄な方は少ない方の用量をという形で構わないかと思います。
わからなければ気軽に相談いただければ適宜お答えします!
それでは本日はこの辺で。