ぶどう膜炎

ヘルペス虹彩炎について

ヘルペス虹彩炎とは

片眼性高眼圧を伴う急性肉芽種性虹彩毛様体炎が典型的で、原因としては単純ヘルペスウイルス(HSV)水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)が考えられます。原因ウイルスによって多少臨床像が変わります。

眼炎症学会から2016年度の大規模なぶどう膜炎疫学調査が行われており、このヘルペス虹彩炎の頻度は上昇してきています。現在全体の6.5%を占めており3番目に多いぶどう膜炎となっております。

ちなみに主要な順位は以下の通りです。
1位:サルコイドーシス
2位:原田病
3位:ヘルペス虹彩炎
4位:急性前部ぶどう膜炎
5位:強膜ぶどう膜炎
6位:ベーチェット病

ヘルペス虹彩炎は2002年は5位でしたが今回順位を上げています。ヘルペス増加については近年前房水のPCRが増えていますのでこれまで原因不明だったものに診断がつくようになってきた影響を考えています。
どちらにせよ割と多いのでしっかり覚えておくと良いと思います。

ちなみに過去に3大ぶどう膜炎と言われたベーチェット病は2002年は3位でしたが、現在6位まで下がっています。

ヘルペス虹彩炎の所見

ヘルペス虹彩炎の眼病変は基本的に前眼部の肉芽種性ぶどう膜炎です。
豚脂様角膜後面沈着物(KP)高眼圧前房内炎症などがみられます。
KPは比較的整然と大き目のKPがみられますが、初期は白色なのですが時間がたつと茶色っぽい色素性KPとなるのが特徴的です。

また、VZVの虹彩炎では経過中に虹彩萎縮を伴うことがあります。
虹彩萎縮は虹彩全体の萎縮ではなく、一部が扇状に萎縮します。

VZVはHSVと違って神経の軸索だけでなく髄鞘も破壊しながら炎症が広がるので、身体に出た場合には痛みが強くなりますし、虹彩炎では虹彩萎縮や麻痺性散瞳を起こしたりと組織破壊が強い傾向にあります。

ヘルペス虹彩炎の診断

診断のためには前房水からHSVやVZVのウイルスをPCRで証明します。
ここで注意としては、涙液にはsheddingといって正常な状態でもHSVやVZVなどのウイルスが微量に検出されることがあり、PCRで増幅すると陽性で出てしまいます。
ですので前房水を抜く際には陰圧をかけたまま前房から針を抜いて涙液が混入するようなことがないように注意してください。検査の方法次第で偽陽性の原因になってしまいます。

いつも言ってますが検査については常に感度と特異度を考慮するのが大切で、少しでも偽陽性を減らす努力も大切だと思います。

ヘルペス虹彩炎の治療

ヘルペス実質炎の治療と同じく、ステロイドにより免疫応答を抑えつつ、ヘルペスウイルスが活性化しないように抗ウイルス薬を併用します。
すぐに治療を止めると再発してしまうので、3ヶ月程度かけてゆっくりと漸減します。
以下に治療の1例を載せておきます。

アシクロビル5回、リンデロン6回 → 2週間
アシクロビル3回、リンデロン4回 → 4週間
アシクロビル2回、リンデロン1回 → 2週間
アシクロビル1回、フルメトロン0.1%2回 → 2週間
アシクロビル1回、フルメトロン0.1%1回 → 4週間

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