ぶどう膜炎

ベーチェット病について

ベーチェット病とは

ベーチェット病はぶどう膜炎の主要な原因の一つで、皮膚や粘膜、消化器、血管、神経など多臓器に障害をもたらす疾患です。

ぶどう膜炎の分類としては両眼性の非肉芽腫性ぶどう膜炎です。
肉芽腫性ではマクロファージなどにより塊をつくるのが基本ですが、ベーチェット病では好中球が主体の炎症で炎症もびまん性で前房蓄膿などもさらさらとなります。

ベーチェット病の症状

基本的に両眼性で再発性の虹彩毛様体炎を繰り返すのが特徴的です。
初期では片眼であったり前房内cellだけの発作でも、再発と寛解を繰り返すうちに症状が揃ってきて診断に至ることもあります。

ベーチェット病の眼所見

前眼部所見

前眼部所見としては、毛様充血や眼痛を伴う虹彩毛様体炎が典型的です。
好中球の炎症がメインの非肉芽腫性ぶどう膜炎なので、KPは微細なことが多く、fibrin析出などは稀です。

30%程度に前房蓄膿を伴いますが体位で移動するサラサラとしているのが特徴です。
前房蓄膿はサラサラなので上記のように二ボーを形成して体位で移動します。
一方で急性前部ぶどう膜炎にみられる前房蓄膿ではフィブリンを含むので中央が盛り上がったような形になっており、体位でも移動しません。

虹彩後癒着や、虹彩前癒着(PAS)を起こすこともありますが比較的稀です。

後眼部所見

網脈絡膜炎が典型的で滲出斑や出血などを伴います。
そしてFAGにてシダ状蛍光漏出と呼ばれる網膜毛細血管からの漏出が特徴的です。

他のぶどう膜炎でも同様の漏出所見を認めることはありますが、ベーチェットでは炎症発作期のみでなく寛解期でと検出されることが多いこと、またベーチェットでは眼底のほぼ全域にわたって漏出所見を認めることが診断に役立ちます。

硝子体混濁はびまん性の混濁のこもが多いです(肉芽種性では塊状の混濁のことが多い)。

また黄斑部は滲出病変に伴うびまん性浮腫や、嚢胞様黄斑浮腫などを起こすこともあります。
黄斑浮腫も前眼部発作と同様繰り返し出現しますので、注意が必要です。

ベーチェット病の治療

急性期の治療はステロイドが基本で、再発予防にはコルヒチンが使用されます。

しかしコルヒチンだけでは再発抑制が出来ない症例もあり、ベーチェット病の再発を何度も繰り返してしまうと、次第に網膜血管は細くなっていき、白線化します。そして色素沈着を伴った網脈絡膜萎縮、視神経萎縮へと至ります。
そうなってしまうと視力予後は悪いので治療コントロールが重要で近年はレミケード®ヒュミラ®などの生物学的製剤が良好な治療成績をあげています。

ベーチェット病の全身症状

眼所見以外の重要な所見としては口腔粘膜のアフタ性潰瘍です。
唇、頬、歯肉、舌などに繰り返し現れるのが特徴でベーチェットのほぼ全例に認めると言われています。
痛みを伴い、食事にも支障をきたします。

皮膚所見としては陰部の潰瘍や、結節性紅斑を伴います。

結節性紅斑は、下腿の伸側が後発部位(手にも出ることあります)ではじめは蚊に刺されたあとのようにプクっと膨らんでいます。その後膨らみは消退して赤みだけが残ります。
ちなみに伸側だけのことが多く、屈側に出ている場合には硬結性紅斑といって結核などによるものを考える必要があります。
余談ですがモーツァルトは6歳の時に溶連菌感染によって結節性紅斑を発症したと報告されていて、これが一番古い結節性紅斑の報告ではと言われています。

ぶどう膜炎を見る際にはこのような皮疹が診断の助けになることはよくありますので、眼科医といえども最低限手足と顔くらいは見る癖をつけると良いと思います。

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