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眼科医のための診断学基礎

この記事では診断学について熱く語りたいと思います。

はじめに

正直眼科の病気は見た瞬間に診断できるようなものも多く、スナップダイアグノーシスに頼りがちなことが多いと思います。

しかし、それで治療がうまくいかない場合や、診断が難しいぶどう膜炎や神経眼科の病気を考える上ではこの診断学の考え方が非常に有用だと思います。眼科領域ではまだまだ広まっていませんが、総合内科などが得意とするところで書籍もたくさんあるので興味がある方は勉強すると大きな武器となることは間違いないです。

この記事では診断仮説の検証に焦点を当てて解説しようと思います。

症例提示

60歳女性
主訴:両視力低下
現病歴:
1週間前から両眼がなんとなくぼやけて見えるようになってきた。

この時点でサルコイドーシスと言えるでしょうか?

皆さんお思いのように確実にサルコイドーシスと言い切ることは出来ませんし、確実にサルコイドーシスでは無いとも言い切れません。

診断学というのは、このサルコイドーシスの可能性が高いか低いかを吟味していく学問で、結局確率論です。

検査所見
細隙灯では両眼性の肉芽腫性のKPを認め、眼底には雪玉状混濁があり、胸部Xpで肺門部リンパ節腫脹がありました。

さて、サルコイドーシスの可能性はどうでしょうか?

最初の病歴だけを聞いた時と比べると可能性はグッと高くなったのではないでしょうか。

検査前確率と検査後確率

上記のように考える時の臨床医の頭の中では、検査前確率検査後確率というものが浮かんでいます。

  • 検査前確率
    検査をする前に見積もった、その患者が疾患を持つ確率
  • 検査後確率
    検査をした後に、検査結果によって検査前確率から変化した、その患者が疾患をもつ確率。

例えばこの患者の場合では、数値は適当ですが、最初病歴を聞いた時点ではサルコイドーシスの検査前確率は10%程度だったとすると、両眼性肉芽腫性ぶどう膜炎を認めると検査後確率は60%程度まであがり、雪玉状混濁により70%になり、肺門部リンパ節腫脹により85%に上昇した。
というように考えられます。

全ての検査には検査前確率を増やしたり減らしたりする効果があり、検査によって増減させる量は異なります。
当たり前じゃないかと思うと思いますが、この考え方は診断学を学ぶ上で非常に重要です。

治療閾値

陽性所見をひたすら集めても100%サルコイドーシスとなることはほとんどありません。
そこで、治療閾値という考え方があります。

このままサルコイドーシスの例で考えると、鑑別疾患としては悪性リンパ腫なども一応考慮しているとしましょう。
そこで初期治療として

  1. ステロイド点眼とテノン嚢下注射
  2. 硝子体生検

上記のどちらを選ぶでしょうか?
①を選ぶことが圧倒的に多いと思います。

この治療法の考え方には患者の被る不利益を考える必要があります。
そもそもステロイド治療よりも手術のほうが侵襲は大きいですし、ステロイド治療をまずやってみて効果が無い場合に改めてリンパ腫の可能性を考えて生検を検討しても遅く無いとおもいます。
逆に内因性眼内炎の可能性も疑うような所見がある場合には、ステロイド治療に踏み切る前に全身精査をしっかり行う必要があります。

このように治療に関しては患者の利益と不利益を天秤にかけて、不利益が少ない場合には治療閾値を下げても良いですし、不利益が大きい場合には治療閾値を高くして診断を確実にしてから行う必要があります。

小難しく書いていますが、上記は誰もが日々当たり前のようにやっていることです。
その質を上げるために一度立ち止まって、今まで診断をする時にどのように考えていたか思い出していただけると嬉しいです。

まとめ

  • 患者が疾患を持つ可能性を吟味していくのが診断学です。
  • 検査前確率と検査後確率を常に考えて検査をすべきです。
  • 治療閾値は利益と不利益によって変動します。
  • そして吟味のゴールは確定診断と除外診断です。

以上で診断学の基礎の基礎のお話しを終わります。
検査後確率などの詳しい%などは適当でいいので、確率を低、中、高ぐらいに分類して考える程度で十分です。

毎回自分の考えている疾患は中ぐらいの確率だな、この検査が陽性だったら確率は高くなるなという風に考えるくせをつけてください。

なんか炎症ある!ステロイド!みたいな考え方は非常に危険ですので、このブログを読んでいただいている皆様はやめていただければ本望です。

参考書籍

診断学に関して割と薄くて読みやすい良著を紹介しておきますので、興味があれば是非。
内科向けの本ですがこの記事の内容がより詳しく書いてあります。

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