PEHCR とは

周辺部滲出性出血性脈絡網膜症(peripheral exudative hemorrhagic chorioretinopathy:PEHCR)は、高齢者の眼底周辺部、主に耳側に、網膜下や網膜色素上皮(RPE)下の出血と滲出を生じる病気です。 加齢黄斑変性(AMD)の類縁疾患で、黄斑の外で滲出型 AMD と同じことが起きていると考えるとイメージしやすいです。 RPE の下の出血は出血性網膜色素上皮剝離(PED)として黒っぽく盛り上がって見えるので、脈絡膜悪性黒色腫と間違われやすいことが一番の問題です。

PEHCR はどんな人に起こるか

平均80歳前後の高齢者に多く、約3分の2が女性です[1]。 多くは片眼ですが、両眼の例もあり、僚眼の周辺部に自覚症状のない古い病変を認めることもあるので、僚眼の周辺部も観察します。 欧米の報告では白人がほとんどですが、アジア人にもみられ、やや若い例もあります。

病変が黄斑から離れているので自覚症状が少なく、硝子体出血をきたして初めて受診することも多いです。 韓国の43眼の報告では、42%に硝子体出血を認めました[2]。 高齢者の原因のはっきりしない硝子体出血をみたときは、PEHCR も鑑別に挙げる必要があります。

PEHCR の原因

はっきりした原因はわかっていませんが、広い意味では滲出型 AMD が周辺部に起きたものだと私は考えています。 脈絡膜から RPE の下に新生血管が伸び、そこから出血と滲出が起こります。 多くの眼では、その新生血管がポリープ状脈絡膜血管症(PCV)の形をとり、周辺部の PCV が出血源と考えられる例もあります[3]。

新生血管の出どころには2つの考え方があり、眼によってどちらもあり得ます。

  • ドルーゼン由来:典型的な AMD と同じ起こり方です。PEHCR の眼の約半数で、黄斑にドルーゼン・RPE の変化・新生血管を認めます
  • パキコロイド由来:PCV や中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)と同じ起こり方で、厚くうっ血した脈絡膜が病気を起こします。PEHCR の眼では、中心窩の下より、病変のある耳側周辺部の脈絡膜が厚くなっています[4]

病変は厚い脈絡膜も含めて PCV に似ているのに、患者さんは高齢の女性が多く、黄斑にドルーゼンを認めることも多いなど典型的な AMD に似ていて、変わった病気だと思います。

PEHCR の検査所見

眼底所見

病変は耳側に多く、89%が赤道部と鋸状縁の間にありました[1]。下耳側が最も多いです。 眼底では次のような所見が混ざって見えます。

  • 黒赤色のドーム状の隆起(出血性 PED)。腫瘍のように見える部分です
  • その周りの網膜下出血
  • 黄白色の脂質の沈着(硬性白斑)。滲出性網膜剝離を伴うこともあります
  • 出血が網膜を破ると硝子体出血
  • 古い病変の RPE の萎縮・色素沈着・線維化

出血が主体の眼と滲出が主体の眼があり、出血型・滲出型・混合型に分けることもあります。

周辺部眼底のカラー写真3枚。Aは黒っぽく盛り上がった出血性の病変、Bは眼底の端の白っぽく盛り上がった滲出性の病変、Cは暗赤色の出血の横の白い滲出性の病変
Peripheral exudative hemorrhagic chorioretinopathy with and without treatment—clinical and multimodal imaging characteristics and prognosisより引用(CC BY 4.0)

A が出血型、B が滲出型、C が混合型で、矢印が病変です。 出血型は悪性黒色腫に、滲出型は硝子体網膜リンパ腫に似ることがあるので注意が必要です。

超音波検査

B モードではドーム状か台地状の隆起を認めます。 病変の内部の反射の強さはさまざまです。 6割近くの眼で、血の塊とその下の脈絡膜の間に黒い隙間を認め、clot retraction cleft と呼びます[1]。 血の塊が縮んでできるもので、PEHCR を考える大事な所見です。

周辺部の隆起性病変の超音波のBモードとAモード。矢印が病変を指している
Peripheral exudative hemorrhagic chorioretinopathy with and without treatment—clinical and multimodal imaging characteristics and prognosisより引用(CC BY 4.0・一部改変)

左が B モードで、矢印がドーム状の隆起です。右は病変を通る A モードで、病変の内部に高いスパイクを認めます。

OCT

PED の中が血液で満たされ、横に網膜下液や出血を認めることが多いです。 通常の OCT では周辺部まで届かないので、広角の OCT があれば有用です。 黄斑に液・出血・ドルーゼンがないかも確認します。

フルオレセイン蛍光眼底造影(FA)とインドシアニングリーン蛍光眼底造影(ICGA)

FA では出血によるブロックで病変は低蛍光となり、周りの RPE の萎縮部は window defect で過蛍光、滲出部では蛍光漏出を認めます。 FA で新生血管がわかる眼は一部だけです。

ICGA は FA より出血越しに脈絡膜の血管を観察しやすいです。 ICGA で PEHCR 48眼を調べた報告では、69%にポリープ状病巣、50%に異常血管網を認めました[5]。 出血が厚いと隠れてしまい、出血が吸収されてから造影するとわかることもあります。

周辺部の広角ICGA。点線の楕円の中に、枝分かれする異常な脈絡膜血管網が見える
A case of bilateral pachychoroid disease: polypoidal choroidal vasculopathy in one eye and peripheral exudative hemorrhagic chorioretinopathy in contralateral eyeより引用(CC BY 4.0・一部改変)

点線の楕円の中に、周辺部の枝分かれする異常血管網を認めます。 日本大学からの報告で、片眼が PCV、僚眼が PEHCR だったパキコロイドの症例です。

悪性黒色腫との鑑別

PEHCR は悪性黒色腫として紹介されることが多い病気です。 韓国の報告では、56%が最初に脈絡膜悪性黒色腫と診断され、正しく PEHCR として紹介されたのは8%でした[2]。

PEHCR 40眼と悪性黒色腫40眼を比べた報告では、片方の群にしかない所見がありました[6]。

  • PEHCR の群だけ:出血性 PED、超音波の clot retraction cleft、脂質の沈着、両眼の病変
  • 悪性黒色腫の群だけ:表面のオレンジ色素、超音波の choroidal excavation・マッシュルーム形・毛様体への進展

PEHCR の全眼がこの4つのうち少なくとも1つを持っていて、1つだけで最も役に立つのは出血性 PED でした。 例外もあり、PEHCR の3%に choroidal excavation を認めました[1]。 それでも迷うときは造影 MRI も有用で、悪性黒色腫は造影されますが、RPE の下の血液は造影されません。

網膜下の腫瘤が黒く見えるのは血液のことがあります。 血液は数週で色が変わってゆっくり吸収されますが、悪性黒色腫は自然には小さくなりません。

はっきりしないときは、腫瘍の治療の前に経過をみて画像を撮り直すことが大切です。

ほかに網膜細動脈瘤の破裂、血管増殖性腫瘍、転移性脈絡膜腫瘍、滲出型では硝子体網膜リンパ腫も鑑別に挙げる必要があります。

PEHCR の経過と治療

ほとんどの病変は自然におさまる

平均15か月の経過で、89%の病変が安定か縮小しました[1]。 血液は吸収され、RPE の萎縮・色素沈着・平らな瘢痕が残ります。

同じ左眼の広角カラー眼底写真2枚。上は黄斑の耳側に大きなPEDとその周りの暗い出血、下は3か月後で出血が引いている
Peripheral Exudative Hemorrhagic Chorioretinopathy (PEHCR): Diagnostic and Therapeutic Challengesより引用(CC BY 4.0)

(a)受診時で、大きな PED(矢印)の周りに出血を認めます。 (b)治療なしで3か月後で、出血が引いています。

黄斑から離れた自覚症状のない病変は経過観察でよいです。 飛蚊症やかすみが新しく出たら早めに受診するよう伝えておきます。

治療が必要な場合

出血や滲出液が視力に影響しそうな場合に治療を考慮します。 具体的には抗 VEGF 薬の硝子体内注射を行います。 通常の AMD と同様に3回の導入治療で改善することが多いですが、再燃することもあります[7]。 病変が大きいときや網膜下液を伴うときは黄斑に広がりやすく、抗 VEGF 薬で治療した眼では黄斑への広がりが少なかったと報告されています[8]。

硝子体出血が引かないときは硝子体手術を検討します。 84眼の報告では、視力を改善したのは硝子体手術だけでした[9]。 腫瘍を否定できていないときにも、手術で病変を確認できるようになります。

光凝固・光線力学的療法・冷凍凝固も行われてきましたが、光凝固や冷凍凝固の後に中心窩の下まで大量の出血をきたした報告もあります[10]。

まとめ

  • PEHCR は高齢者の耳側周辺部に出血・滲出・PED を生じる、AMD の類縁疾患です。
  • 悪性黒色腫と間違われやすく、出血性 PED・脂質・clot retraction cleft が鑑別に役立ちます。
  • ほとんどは自然におさまり、黄斑に及ぶときは抗 VEGF 薬、引かない硝子体出血には硝子体手術を検討します。

参考文献

[1] Shields CL, Salazar PF, Mashayekhi A, Shields JA. Peripheral exudative hemorrhagic chorioretinopathy simulating choroidal melanoma in 173 eyes. Ophthalmology. 2009;116(3):529-535. PMID 19157563.

[2] Lee H, Choi YJ, Lee SM, et al. Clinical characteristics of peripheral exudative hemorrhagic chorioretinopathy easily misdiagnosed at initial presentation in Korean patients. Sci Rep. 2025;15:30693. PMID 40841816.

[3] Goldman DR, Freund KB, McCannel CA, Sarraf D. Peripheral polypoidal choroidal vasculopathy as a cause of peripheral exudative hemorrhagic chorioretinopathy: a report of 10 eyes. Retina. 2013;33(1):48-55. PMID 22836900.

[4] Mai S, Chen J, Li B, Sun X, Yu X. Peripheral exudative hemorrhagic chorioretinopathy: a comprehensive review of clinical features, differential diagnosis, pathogenesis-related disease spectra, and management. Surv Ophthalmol. 2026 (online ahead of print). PMID 42906862.

[5] Mantel I, Schalenbourg A, Zografos L. Peripheral exudative hemorrhagic chorioretinopathy: polypoidal choroidal vasculopathy and hemodynamic modifications. Am J Ophthalmol. 2012;153(5):910-922. PMID 22310077.

[6] Sodhi GS, Singh N, Wrenn J, Singh AD. Peripheral hemorrhagic chorioretinopathy: differentiating features from choroidal melanoma. Ocul Oncol Pathol. 2023;9(1-2):1-8. PMID 37600851.

[7] Seibel I, Hager A, Duncker T, et al. Anti-VEGF therapy in symptomatic peripheral exudative hemorrhagic chorioretinopathy (PEHCR) involving the macula. Graefes Arch Clin Exp Ophthalmol. 2016;254(4):653-659. PMID 26148802.

[8] Zicarelli F, Preziosa C, Staurenghi G, Pellegrini M. Peripheral exudative haemorrhagic chorioretinopathy: a widefield imaging study. Br J Ophthalmol. 2021;105(10):1410-1414. PMID 32883656.

[9] Vandefonteyne S, Caujolle JP, Rosier L, et al. Diagnosis and treatment of peripheral exudative haemorrhagic chorioretinopathy. Br J Ophthalmol. 2020;104(6):874-878. PMID 31645320.

[10] Kim YT, Kang SW, Lee JH, Chung SE. Peripheral exudative hemorrhagic chorioretinopathy in Korean patients. Jpn J Ophthalmol. 2010;54(3):227-231. PMID 20577857.

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この記事の英語版(poisensei.com):Peripheral Exudative Hemorrhagic Chorioretinopathy (PEHCR): Findings, Imaging and How to Tell It From Melanoma

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