視能訓練士国家試験解説

視能訓練士国家試験 第52回 午前 過去問解説

2022年の視能訓練士国家試験午前の過去問解説をしていこうと思います。

厚生省公開の国家試験過去問と解答はこちらから御覧ください。

第52回午後の解説はこちら。

解説は1〜25番までのみで、全問題の解説は以下の書籍で行っております。
書籍版と電子書籍版がありますが、電子書籍版はkindle unlimited に登録いただいているかたは無料で読むことができます。

目次

1:中毒性視神経症

答えは5

メチルアルコールで視神経障害が出ることは「目散るアルコール」と覚えています。

2:迷走神経反射

答えは1

迷走神経反射では徐脈になり血圧が下がって気分が悪くなります。
仰臥位にしたり、足を挙上することで血圧を保つことができます。

他の選択肢は全て迷走神経を刺激したり血圧を低下させてしまいますので不適です。

3:交感神経刺激薬

答えは4

フェニレフレインは散瞳薬であるネオシネジンのことで交感神経刺激薬です。

4:人口統計

答えは5

これは何となく解けると思いますが、人口は減少気味です。
その他の選択肢は全て正しいです。

5:第3種感染症

答えは5

眼科では第二種の咽頭結膜熱、第三種の流行性角結膜炎、急性出血性結膜炎などが重要だと思います。以下に感染症の一覧を貼っておきます。

  • 第一種:エボラ出血熱、クリミアコンゴ出血熱、痘瘡、南米出血熱、ペスト、マールブルグ病、ラッサ熱、急性灰白髄炎、ジフテリア、SARS、MERS、鳥インフルエンザ
  • 第二種:インフルエンザ、百日咳、麻疹、流行性耳下腺炎、風疹、水痘、咽頭結膜熱(プール熱)、結核、髄膜炎菌性髄膜炎
  • 第三種:コレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症(O-157など)、腸チフス・パラチフス、流行性角結膜炎、急性出血性結膜炎、流行性嘔吐下痢症、溶連菌感染症、マイコプラズマ肺炎、手足口病、EBウイルス感染症など

6:頭部運動の加速度の感知

答えは5

7:神経細胞の細胞体

答えは5

神経というのは細胞体から神経が伸びていって、次の神経の細胞体と繋がりながら脳へ向かっていきます。
網膜の双極細胞から1次ニューロンが伸びて、神経節細胞とつながります。
神経節細胞から2次ニューロンが伸びて、外側膝状体へとつながります。
外側膝状体から3次ニューロンが伸びていきます。

8:脱髄性疾患

答えは2

脱髄が起こると、神経を伝達する速度が落ちて、機能が障害されます。
多発性硬化症や視神経脊髄炎などの脱髄性疾患で、VEPのp100が遅くなるのは速度が落ちるからです。

9:血糖値を下げるホルモン

答えは1

膵臓から出されるインスリンによって血糖値が下がります。
糖尿病ではインスリンが効きにくかったり分泌できなかったりするのでインスリンの注射を行います。

10:無血管の組織

答えは1

見ての通り角膜には血管が無いので透明です。
血管から栄養をもらえないので、房水などから栄養をもらっています。

11:散瞳する薬剤

答えは2

コカインや覚醒剤は散瞳、モルヒネやヘロイン・大麻などは縮瞳します。
有機リンではpin point pupilという針のような縮瞳が有名です。

12:対光・近見反応解離

答えは3

Parinaud症候群では対光反射消失、垂直注視麻痺、輻輳麻痺、輻輳後退眼振などがみられます。対光反射はありませんが近見反応による縮瞳は保たれます。

ちなみに他に対光・近見反応解離を来す疾患としてはAdie症候群やArgylle Robertson瞳孔などがあります。

13:外眼筋の腫大

答えは5

甲状腺眼症、特発性眼窩炎症、IgG4関連眼疾患はMRIで筋腫大を伴う眼球運動障害の鑑別疾患として非常に重要です。
また、眼窩内悪性リンパ腫でも外眼筋腫大を認めますので上記疾患を疑った際にステロイド治療に反応しない時には鑑別に挙げる必要があります。

慢性進行性外眼筋麻痺は筋腫大を伴いません。

14:視能矯正の理念

答えは1

15:外眼筋について

答えは1

  1. 斜筋は常に直筋の下を走行すると覚えます。上斜筋は上直筋の下を走行するので強膜側にありますし、下斜筋は下直筋の下を走行するので下直筋が強膜側になります。
  2. まつわり距離というのは筋肉が眼球に接している距離のことで下斜筋が最も長いです。
  3. 存在します。
  4. Lockwood靭帯は下斜筋と下直筋の間に存在します。
  5. 4直筋の角膜輪部から付着部までの距離は内、下、外、上の順に5→6→7→8mmとなっています。右眼で考えると内直筋から時計回りと覚えます。

16:Heringの法則

答えは3

Heringの法則というのは、例えばむき運動ではともむき筋に対して同じ量の刺激が伝達されるというものです。
例えば右方視では右外直筋と左内直筋に同じ量の刺激が伝達されます。
右外転神経麻痺では右眼を外転させようと強い刺激が伝達され、同量の刺激が内直筋にも伝達されますのでHESS赤緑試験では健眼が大きくなります。

Heringの法則に従わない疾患としては交代性上斜位が有名です。

17:拮抗筋の英語

答えは2

  1. 主動筋
  2. 拮抗筋
  3. 間接はりあい筋
  4. ともひき筋
  5. ともむき筋

18:Goldmann視野計

答えは5

指標面積はⅤ〜0で表現し、数字が大きくなるにつれて指標が大きくなります。

指標輝度については1〜4の数字とa〜eのアルファベットで表現します。輝度についてはNDフィルタを入れることで暗くして調整します。
4eではNDフィルタが入っていない0dBの状態で、数字が一つ減ると5dBのNDフィルタが入ります。また、アルファベットがaに近づくにつれて1dBのNDフィルタが入ります。
この症例では2eなので10dBのNDフィルタが入っていると考えられます。

投影指標の輝度についてはNDフィルタが入っていない状態では1000asbに調整されており、5dBのNDフィルタが入ると0.315倍の輝度となります。
この症例では10dB入っているので、1000×0.315×0.315≒100asbとなります。

19:レンズ

答えは2

問題のレンズは2種類の曲面を持っており、水平方向は r1を半径とする円、垂直方向はr2を半径とする円によって構成されます。
r1=r2であれば完全な球面レンズですが、r1≠r2ですので画像より水平方向がなだらかなカーブを描いているので弱主経線、垂直方向が急なカーブの強主経線となるレンズとなっていると考えられます。
このように弱主経線と強主経線を持つレンズをトーリックレンズと呼びます。

問題画像から円柱のように見えたかもしれませんが、円柱レンズは一方向のみの曲線を持つレンズですので誤りです。水平曲面がr1を半径とする円ではなく直線だったなら円柱レンズと呼びます。

20:ハードコンタクト

答えは5

  1. レンズ径
  2. オプティカルゾーン
  3. 周辺カーブ
  4. 中間カーブ
  5. ベースカーブ

21:1点を識別できる閾値

答えは3

22:視能訓練士の自己マネージメント

答えは3

23:縞視力

答えは1, 4

縞視力はcycles/degreeで測定します。
小数視力 = cycles/degree ÷ 30
上記の計算式より3cycles/degree ÷ 30 = 0.1となります。

24:クロスシリンダー

答えは4

レフ値は S-1.00D C-1.50D Ax180°と考えられます。
クロスシリンダーでは最小錯乱円の位置を網膜面に持ってきます。最小錯乱円位置は等価球面度数で求めることができるので-1.00D+(-1.50/2) = -1.75Dが答えです。

25:コンタクトレンズについて

解無し

この問題は選択肢が全て正しいため解無しと考えられます。

近視矯正の凹レンズではコンタクトよりも眼鏡で像が縮小します。
遠視矯正の凸レンズではコンタクトよりも眼鏡で像が拡大します。

26:調節力

答えは4

27:色覚検査

答えは4, 5

28:上下複視

答えは1, 4

29:Hertel眼球突出計

答えは5

30:心理物理学的検査

答えは1

31:問題指向型診療記録

答えは1

32:縞指標の視力

答えは2

33:小児のオートレフラクトメータ

答えは4

34:固視検査

答えは3

35:管状視野

答えは1

36:遠視患者の眼位

答えは1

37:Hess赤緑試験

答えは2, 4

38:輻輳検査

答えは3

検査は鼻根部ではなく外眼角縁から輻輳が限界になった点までの距離を測定します。
臨床では簡易的に輻輳限界点から角膜頂点までの距離に1.3cmを足したものを目安とすることもあります。

39:角膜屈折力

答えは4

40:検影法

答えは4

41:白内障

答えは1

42:初期緑内障

答えは2, 4

43:ぶどう膜欠損

答えは1

44:色覚異常

答えは4

45:視野障害

答えは5

46:3歳児検診

答えは3

47:涙液分泌減少症

答えは5

48:眼窩底骨折

答えは2

49:サルコイドーシス

答えは3

50:正常眼圧緑内障

答えは5

51:内上転障害

答えは4

52:先天白内障

答えは1

53:弱視

答えは4

54:Duane症候群

答えは5

Duane症候群が外転神経核の欠損により異常神経支配が起こることが原因の疾患ですので、内転時の外直筋異常収縮が原因というのは微妙な表現に思いますが他が誤りですので消去法で選びました。

成人であればEMGで確定診断することができますが、乳幼児には基本的には行なえませんので誤りにしています。

55:先天眼振

答えは4

56:疾患と眼位矯正法の組合せ

答えは4

57:Bangerterフィルタ

答えは3

58:Sagging eye syndrome

答えは3

59:部分調節性内斜視

答えは2

60:融像の遮断

答えは1?

61:光学的補助具

答えは5

62:交代プリズム遮蔽試験

答えは3, 4

63:アトロピン点眼

答えは3

64:交代性上斜位

答えは4

65:AC/A比

答えは1

66:内頚動脈海綿静脈洞瘻

答えは5

右眼の強い充血と外転時の複視、高眼圧を認めることから内頚動脈海綿静脈洞瘻による外転神経麻痺を疑います。
海綿静脈洞の圧が上がることで上眼静脈のうっ滞が起こり、充血や高眼圧を伴ったり、動脈の拍動に合わせて拍動性の眼球突出を認めたり雑音が聞こえたりします。

67:収差

答えは4

68:色覚異常

答えは3

単色が15, 混色が0〜73ですので上記の表を参考に2型2色覚ということがわかります。
パネルD-15では2型色覚異常はDEUTANEと並行な線が2本以上見られますのでcが正解です。

69:右滑車神経麻痺

答えは5

70:網膜色素変性

答えは1, 4

眼底写真ではアーケードの周りに網膜萎縮があり、萎縮部位に一致してFAGではwindow defectによる過蛍光を認めます。OCTでは黄斑部の網膜外層萎縮を認め、EZも不明瞭化しており網膜色素変性として矛盾しません。

  1. 自発蛍光では網膜色素上皮にたまったリポフスチンと呼ばれる物質が光ります。網膜色素変性では網膜が萎縮している場所ではリポフスチンも無いので低蛍光となります。
  2. フリッカー値は錐体細胞が生き残っている場合には低下しません。
  3. ERG検査ではflatとなります。
  4. Goldmann視野計では萎縮部位に一致して輪状暗点を認めます。
  5. 視神経に異常は無いのでRAPDは陰性です。

71:黄斑円孔

答えは1

72:脳腫瘍

答えは4

右後頭葉にリング状の増強効果のある腫瘍を認めます。所見および乳がん治療中であることから転移性脳腫瘍を疑います。
右後頭葉障害ですので左同名半盲が予想されます。

73:水平複視

答えは1

74:眼鏡のプリズム効果

答えは2

近視矯正用の凹レンズでは光学中心よりも外側に偏心すると基底外方のプリズム効果が得られます。遠見では両眼で8⊿の内斜視ですので、片眼あたり4⊿のプリズム効果があればよいです。

プレンティスの公式よりP=hD(P:プリズム(⊿)、h:偏心量(cm)、D:レンズ度(D))
4=偏心量×10
偏心量は0.4

ですので4mmずつ瞳孔間距離を短くすれば良いので66-4-4=58mmとなります。

75:先天眼振

答えは5

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