先天眼振とは生後早期からみられる眼振の総称です。
狭義の先天眼振、先天周期性交代制眼振、潜伏眼振、眼振阻止症候群、点頭けいれん等があります。
目次
先天眼振
先天眼振の特徴
狭義の先天眼振は生後3〜4ヶ月頃に発症するため乳児眼振とも呼ばれます。
眼振は左右同程度で注視により増悪しますが、動揺視やめまいは伴いません。
視力は0.1〜0.5程度で乱視を合併することが多いです。
先天眼振は感覚性先天眼振と運動性先天眼振の2つに大別されます。
感覚性先天眼振
黄斑低形成など視路に先天的な異常があるために固視が出来ないものです。
眼振の眼球運動に急速相と緩徐相の区別がつかない振子様眼振となることが多いです
原因としては先天黒内障、一色覚、無虹彩、白子症などが挙げられます。
運動性先天眼振
視路障害を認めないものです。
先天眼振の症状
発症初期は大きな水平の往復運動がみられ、次第に振り子眼振となり、1歳頃から律動眼振がみられ始めます。
そして5歳頃までに静止位が確立されるようになると、その静止位の位置によって異常頭位がみられるようになります。
振幅は静止位から離れた方向を見ようとするほど大きくなり、輻輳により振幅が減少します。
また、視運動性眼振(OKN)を行うと生理的な眼振とは逆向きとなる錯倒現象を認めます。
先天眼振の治療
屈折異常や乱視を合併しやすいので屈折矯正を行います。
また、静止位が正面にくるようにプリズムで矯正や斜視手術を行います。
周期性交代眼振
周期性交代眼振とは
周期性交代眼振は120秒前後の周期で眼振の向きが変わる自発性の水平眼振です。
先天眼振だけでなく後天眼振でもみられますが、他の先天眼振と違って動揺視を自覚することが多いです。
周期性交代眼振の原因
原因としては小脳のプルキンエ細胞から前庭神経核で仲介される中枢性GABA作動性短期記憶メカニズムの脱抑制が報告されています。
周期性交代眼振の治療
視力は比較的良好なことが多いです。
眼振振幅の減弱や頭位異常の改善のためには水平4直筋大量後転術が有効です。
潜伏眼振
普段は眼振がみられないのに視力検査などで片眼を遮蔽すると眼振が起こる疾患です。
片眼遮蔽にて、開放眼に向かう律動眼振がみられ、遮蔽眼を変えると急速相の方向が逆転します。
片眼に視覚障害を伴うと、両眼開放下でも潜伏眼振が誘発され顕性潜伏眼振と呼ばれます。
また、潜伏眼振では乳児内斜視や交代制上斜位(DVD)を合併しやすいです。
眼振阻止症候群
眼振のある患者が片眼 or 両眼を内転させて眼振の程度を減弱させ、内斜視となった状態です。
内転眼が固視眼の場合、顔を回して指標を見るのでface turnとなります。
先天内斜視や調節性内斜視との鑑別が必要です。
斜視手術を行ったとしても、眼振を阻止するために再度内斜視となりやすいです。
点頭けいれん
生後早期から3歳頃までに眼振がみられ始め、左右眼で同調整のない眼振を示すのが特徴である。
眼振の他に異常頭位とhead noddingと呼ばれる頭部のうなずきを三徴とする疾患で、うなずきは眼振を打ち消すためと言われています。
点頭けいれんは自然寛解しますが、内斜視や交代制上斜位、弱視を合併することがありますので必要に応じて弱視治療を行います。
ときに視神経や視交叉部の視神経膠腫などの中枢神経病変を伴っている場合がありますので、他の神経学的異常所見があるような症例では頭部MRIによる精査を行うことが大切です。