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眼内リンパ腫について
眼内リンパ腫はほとんどがB細胞リンパ腫で、中枢神経に原発する中枢神経系リンパ腫と、全身性の悪性リンパ腫が眼内転移する2パターンがあり、中枢神経原発のものが90%程度です。
眼内リンパ腫は上記の通り、しばしば中枢神経リンパ腫を併発しますので疑った際には頭部造影MRI検査を行うことが望ましいです。
原因不明のぶどう膜炎として加療されることも多く、仮面症候群とも呼ばれます。
ぶどう膜炎の仮面を被った悪性リンパ腫的な意味で、仮面症候群の原因となる他の疾患としては白血病や転移性ぶどう膜腫瘍などが挙げられます。
眼内リンパ腫の所見
前眼部所見
前眼部炎症所見は軽度ですが角膜後面沈着物が大小不同で辺縁が尖ったような形状をしているのが特徴的です。
しかしサルコイドーシスのような豚脂状となることもあるのであくまで参考所見です。
後眼部所見
ベール状と呼ばれる硝子体混濁は最も多くみられる所見で、硝子体混濁がはっきりしない症例でも前部硝子体を細隙灯で観察すると硝子体内浮遊細胞を認めることがあります。
硝子体混濁や硝子体内cellは他のぶどう膜炎と違って大型となる傾向(病理で観察するとほとんどがびまん性大細胞性B細胞リンパ腫のため)にあり、OCTで黄斑部を撮影した際にも硝子体出血よりも大型の混濁が観察出来ることがあります。
他の所見としては網膜に多発性の黄白色滲出斑がみられ、徐々に癒合したり隆起したりしてきます。
この黄白色病変はFAGでは脈絡膜蛍光ブロックによる低蛍光となり、自発蛍光では過蛍光となります。また、OCTでは網膜色素上皮下の浸潤病変として観察できる場合があります。
しかしこの浸潤病変も必発ではなく、リンパ腫細胞の浸潤によって血管炎を起こしたりと多彩な所見を呈する症例があるので、原因不明のぶどう膜炎として治療されてしまうことが多々あります。
眼内リンパ腫の診断
当たり前ですが診断のためにはまず疑うことが大切です。
特にステロイド治療に反応しないぶどう膜炎では常に本症を鑑別に入れる必要があります。
悪性リンパ腫と言えば高齢者に発症するイメージがありますが、若いと40歳頃から発症し得ると言われていますので要注意です。
ちなみに眼内悪性リンパ腫にステロイド(内服やテノン嚢下注射)を使うと一時的に良くなることもあるのですが、一時的に改善したとしても病変が無くなることはありません。
ですので比較的経過が長い例、非典型的な所見を呈する例もあるので改善しないぶどう膜炎では常に鑑別に入れておく必要があります。
眼内リンパ腫を疑う場合には硝子体生検を行い IL6、IL10を測定します。
眼内リンパ腫ではIL-10の値が上昇しますので、IL-10/IL-6比が高値であれば強く疑います。
硝子体生検を行った際に病理細胞診も行いますが、眼内リンパ腫であったとしてもしばしばclassⅢと判断されることがあります。その場合には複数回の硝子体生検を行ったりセルブロック法(コンステカセット内の硝子体液を遠心分離してホルマリンに漬けて HE 染色や免疫染色をする方法)を行うことで検査感度を上げることができます。
眼内リンパ腫の治療
中枢神経リンパ腫を併発する例には全身治療として高用量のMTX療法を行いますので、内科との連携が重要です。
眼内の病変に対してはMTX(400μg/0.1ml)の硝子体注射を行います。
硝子体内注射の具体的な投与例を以下に示します。
- 1週間2回を4週間
- 1週間1回を4週間
- 1ヶ月1回を8〜12ヶ月