目次
急性前部ぶどう膜炎とは
急性前部ぶどう膜炎は片眼に急性に虹彩毛様体炎が発症する疾患で、眼痛や視力低下を自覚し、前房にフィブリン析出や前房蓄膿、虹彩後癒着を形成します。
20〜30代の男性に多くみられ、7〜8割が片眼性です。
日本では全ぶどう膜炎の1〜6%を占めると言われています。
原因としてはHLA-B27との関連が指摘されています。
急性前部ぶどう膜炎の所見
前眼部所見
著明な毛様充血、フィブリンの析出や前房蓄膿を伴う非肉芽種性のぶどう膜炎の所見をとります。
非肉芽種性ですが、フィブリンの混ざった前房蓄膿となるのでベーチェットのようなさらさらにはならず、むしろ盛り上がったような前房蓄膿を形成したりします。
KPは非肉芽種性のため微細なものだけで、前房内cellを多く伴います。
虹彩後癒着も起こし、iris bombeとなることもありますが、周辺虹彩前癒着(PAS)が生じるのは稀です。
後眼部所見
後眼部所見は基本的には無いことが多いですが、前部からの炎症波及により軽度の前部硝子体混濁や視神経乳頭の発赤浮腫、黄斑浮腫などを認めることもあります。
急性前部ぶどう膜炎と全身疾患の関連
急性前部ぶどう膜炎は以下の3パターンがあります。
- HLA-B27陽性で全身所見を認めない。
- HLA-B27陽性で全身所見を認める。
- HLA-B27陰性で眼所見のみ。
HLA-B27陽性に関連する全身疾患としては、脊椎関節炎が大切です。
脊椎関節炎は脊椎炎、仙腸関節炎、四肢の関節炎、腱付着部炎を来す疾患の総称です。
またリウマチ因子が陰性なのも特徴です。
脊椎関節炎には以下の4つが含まれます。
1. 強直性脊椎炎
脊椎や仙腸関節を中心に生じる慢性炎症疾患です。
腰部痛や背部痛を認めることが多いですが、四肢の関節炎症状があり朝のこわばりもあるのでリウマチに見えることがありますがリウマチ因子は陰性です。
2. 反応性関節炎(Reiter症候群)
細菌性下痢症またはクラミジア感染から1〜4週間後に起きる急性一過性の膝、足首などの大中関節炎、仙腸関節炎を呈します。
3. 乾癬性関節炎
皮膚疾患の乾癬には2割に関節炎が伴うといわれており、小関節炎(指など)が高頻度です。
仙腸関節炎や脊椎炎の合併も多いですが左右非対称で強直性脊椎炎とは異なります。
爪病変が特徴的で爪剥離症(onycholysis)、または陥凹を認めます。
4. 炎症性腸疾患関連関節炎
潰瘍性大腸炎やクローン病にも脊椎炎などを伴うことがあります。
急性前部ぶどう膜炎の治療
治療はステロイド点眼による消炎と、散瞳薬による瞳孔管理を行います。
虹彩後癒着を起こしやすく、全周癒着があるとiris bombeとなって眼圧上昇を引き起こしてしまいますので散瞳点眼の結膜下注射を行うこともあります。
急性前部ぶどう膜炎を診断する際の注意点
診断の際には前房蓄膿やフィブリンを伴うような疾患を鑑別に考える必要があり、特に内因性眼内炎などは見落とすと不可逆な障害を残すので、必ず頭に置いておく必要があります。
他の鑑別疾患としては以下のようなものが挙げられます。
- 糖尿病虹彩炎
- ベーチェット病
- 梅毒(多彩な所見をとるのでほぼ全てのぶどう膜炎の鑑別に挙がると考えて良いと思います。)
急性前部ぶどう膜炎の原因のHLA-B27は国家試験では強直性脊椎炎の原因という様に習ったと思いますが、それだけでなく様々な原因となることがわかっており、眼以外の症状にも気を配る必要があります。
急性前部ぶどう膜炎の罹患後に脊椎関節炎症状が出現することもありますので、フォロー中に腰や背中の痛みなどが出現した際には注意が必要です。