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解剖の勉強について
解剖の勉強はとりあえず自分で書いてみるのが一番大切だと思っています。
あとは、ただ覚えるだけでなく専門医試験などで問われる所は臨床的にも重要な解剖が多いと思いますので一つずつ解説しますので絵を見ながら読んでいただければ幸いです。
眼を栄養する血管(上から見た図)
沢山の眼動脈の分枝がありますが、一番大切なのは網膜中心動脈と毛様体動脈です。
毛様体動脈は大きく下記の3つにわかれます
- 短後毛様体動脈
- 長後毛様体動脈
- 前毛様体動脈
動脈の名前の覚え方
- 短後毛様体動脈は眼の後から眼内に入ってその周囲を栄養する短い血管
- 長後毛様体動脈は眼の後から眼内に入って前の方まで伸びて虹彩を栄養する長い血管
- 前毛様体動脈は外直筋の中を通って眼の前方から眼内に入る血管
動脈輪について
眼の動脈はは2つの動脈輪をつくります。
動脈輪というのはWillisの動脈輪などのように虚血になると困る所に作られます。
眼では房水を作るための虹彩と視神経が最も大切です。
虹彩では前毛様体動脈と長後毛様体動脈が一緒に大虹彩動脈輪を作ります。
視神経では短後毛様体動脈が篩状板のところでZinn-Haller動脈輪を作ります。
臨床的にはこの短後毛様体動脈の虚血が起こると虚血性視神経症となってしまいます。
また前毛様体動脈は各外眼筋の中を通っていますので斜視手術の際に一度に3つ以上の筋を切ると虹彩虚血を引き起こすため注意が必要です。
眼を栄養する血管(正面から見た図)
前毛様体動脈は外直筋の中を通って眼内に入ります。
その際に基本的に外直筋部は1本だけで、その他上直筋、内直筋、下直筋には2本ずつありますので、片目には計7本存在します。
また直筋の付着部から輪部までの距離は少しずつ違っていて、ざっくりと内直筋から時計回りに5, 6, 7, 8mmとらせん状になっています(ティローのらせん)。
上斜筋は上直筋の付着部から3.5〜7mm後方、下斜筋は外直筋付着部から10〜12mm後方に付着します。
筋付着部の知識は斜視手術やバックルの位置决めでも必要になります。
上述しましたが前毛様体動脈があるので斜視の手術で直筋を切るのは同時に2つまでにする必要があります。
専門医試験でも、出題者にもよりますが解剖の問題では臨床的にこの解剖が分かっていないと、この疾患の理解ができない、手術が出来ないなどの出題意図が読み取れる問題が多い印象がありますのでそこまで考えると理解しやすいかと思っています。
結膜の血管
眼球の後ろから入って前へ伸びる長後毛様体動脈と、外直筋の中を通って前から眼に入る前毛様体動脈が虹彩の根本で大虹彩動脈輪を作ります。
前毛様体動脈の分枝が結膜輪部の所で輪部動脈係蹄を作り、前結膜動脈となります。
また、外側眼瞼動脈と内側眼瞼動脈の分枝として後結膜動脈が出ます。
そして、球結膜と瞼結膜の接合部辺りでこの二つの結膜動脈が吻合します。
つまり、眼瞼結膜や眼球結膜の充血は外側から眼球へ入ってくる後結膜動脈の炎症波及がメインです。
それに対して、毛様充血は眼の奥から入ってくる前毛様体動脈や前結膜動脈の炎症が原因となるのでぶどう膜炎や眼内炎などの眼の奥から炎症が起こるような疾患で見られます。
何となく毛様充血がある時はヤバイ病気で、結膜炎などの表面の軽い炎症では結膜充血だけが起きるというイメージがあると思いますが、このように血管の走行と分布を把握することで病態把握が出来ます。
参考文献
眼の解剖については上記の書籍が最もまとまっており、見やすいように感じました。
ブログの内容以上に知識を深めたい方は是非ご一読ください。