ステロイドについて

ステロイド総論

ステロイドについて

眼科領域でもぶどう膜炎から視神経炎、アレルギー、術後炎など様々な疾患についてステロイドを使用する経験があると思いますが、詳しいことをよくわかっていない先生も中にはいらっしゃると思います。

抗菌薬と同じく、眼科医といえども自分が患者さんに飲ませる薬については薬効や副作用含めてきちんと理解することが重要だと考えていますので、専門医試験には関係ありませんがご一読いただけると幸いです。

ステロイドの効果

ステロイドには大きく分けると以下の3つの効果があります。

  1. 抗炎症効果
  2. 免疫抑制効果
  3. ステロイドホルモンの補充

抗炎症効果

多くのステロイドを使用する疾患ではこの効果を期待して使用されることが多いです。
自己免疫疾患であっても免疫によって引き起こされた炎症によってさらなる炎症性サイトカインが出て、というように負のサイクルとなります。
ですので、まず炎症を止めるのが先決です。

ちなみにステロイドにも特異な相手と苦手な相手がいて

好酸球>リンパ球>単球、マクロファージ>好中球

上記の順に効果があります。
ですのでアレルギーやリンパ球が主体の炎症に効果が強く、細菌感染など好中球主体の場合は炎症を抑えるよりも免疫抑制により増悪を引き起こしてしまいます。

ちなみにステロイドの抗炎症効果は投与から数時間以内に出現するので即効性があります。

免疫抑制効果

ステロイドに免疫抑制効果があるのは皆さんご存じかと思います。
しかし、よく誤解されているのですが免疫抑制効果というのは抗炎症作用と違って効果が発現するまでに2〜3週間かかります。
具体的にはプレドニゾロン20mg/day以上を2〜3週間以上投与しないと効果が出てきません。
つまり、30mgのプレドニゾロンを3日内服して熱が出たとしても基本的に日和見感染症ではありません。

以上のことから原田病や抗AQP4抗体陽性視神経炎では再発予防のために自己免疫を強く抑え込む必要があるので30mg/day以上の高容量のプレドニゾロンが使用されます。

ステロイドホルモンの補充

ステロイドホルモンは生命維持に必須のホルモンですので疾患によっては補充のために内服投与が行われることもあります(眼科ではこの使い方はありません)。

ステロイドホルモンの作用

ステイロイドホルモンには大きく糖質コルチコイド作用(GC)と鉱質コルチコイド作用(MC)があります。

  • 糖質コルチコイド作用(GC) → 抗炎症作用
  • 鉱質コルチコイド作用(MC) → 電解質作用

抗炎症作用だけがほしい場合にはGCが強く、MCが弱いプレドニンなどが使用されます。
そして原発性副腎機能低下症のようにGCとMC両方低下しているような疾患ではGCとMCが同程度含まれるコートリルなどが使用されます。
眼科ではGCの強いステロイドしか基本的に使用しません。

ステロイドを投与しているとネガティブフィードバックでACTHの分泌抑制がかかるのでプレドニゾロン7.5mg/day以上を3週間投与した場合には急速なステロイド中止は行わない方が安全です。
短期の使用の場合では副腎抑制はかかりません。

ステロイド薬の一覧表


実際のステロイド薬と抗炎症作用や電解質作用の一覧表になります。

ちなみにステロイド薬は種類によって力価が違います。
例えばプレドニン5mgとリンデロン5mgでは効果が全く違います。

ヒトが1日のうちで自然と生産するステロイドホルモンの量がプレドニン5mgに相当するとのことで、それに対応する各種ステロイド薬の用量も表に記載しております。

ちなみにほとんどのステロイド薬は1錠が生理的なステロイド産生量と等しくなるように作られています。