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ステロイドの副作用について
ステロイドだけでなくどんな薬においてもですが、処方するからには、ただ漫然と投与するのでなく、どのような利点があるのか、どのような副作用が考えられるのか、薬物相互作用の影響はどうか、やめ時はいつかといったことを常に考える必要があります。
ステロイドの主な副作用と発症時期
- 開始当日から:
不眠、抑うつ、食欲亢進 - 数日後から:
高血圧、高Na, 低K、浮腫 - 2〜3週後から:
副腎抑制、耐糖能異常、高コレステロール、創傷治癒抑制、ステロイド潰瘍 - 1ヶ月後から:
易感染性、中心性肥満、ニキビ、無月経、多毛 - 1ヶ月以上後から:
紫斑、皮膚線条、皮膚萎縮、ステロイド筋症 - さらに長期:
大腿骨頭壊死、圧迫骨折、骨粗鬆症、白内障、ステロイド緑内障
ステロイドには上記のような様々な副作用が存在します。
副作用を考える上では投与開始からどれくらいで、どのような症状が出始めるかを把握することが重要です。
副腎抑制について
3週間以上ステロイドが投与されている患者では副腎がネガティブフィードバックで抑制されており、急にステロイド内服をやめてしまうと副腎不全で最悪ショックなど重篤な症状を引き起こします。
ですので何よりも処方する際には患者への説明が大切です。
また、私は個人的に長期ステロイド処方するような患者さんには災害時などの備えとして2週間程度予備で渡しておくこともあります。
骨粗鬆症について
長期的な合併症として有名ですが、ステロイド開始から3ヶ月で骨塩量が最も減ると言われています。
プレドニン5mg/day以上を3ヶ月以上使用する閉経後女性 or 50歳以上男性にピスホスホネート製剤を使用すると覚えておくと良いと思います。
ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドラインはこちらから参照ください。
大腿骨頭壊死について
プレドニン15mg/day以上がリスクで、特にステロイドパルスなど初期に大量にステロイドが投与された場合にリスクが高くなります。
その他にはアルコール依存やSLEなどの併存があるとリスクが高くなります。
こちらに関してもビスホスホネート製剤が使用されます。
ですのでステロイドパルスを行い、長期内服を行うような原田病や抗AQP4抗体陽性視神経炎などではビスホスホネート製剤は必須です。
糖尿病について
ステロイドではインスリン抵抗性が増すために糖尿病や肥満となります。
空腹時血糖は正常範囲のこともあるので注意が必要です。
また、ステロイドの影響で過食となることもあるため、糖尿リスクが高い方は定期的な血糖モニターと治療が必要です。
感染症について
ステロイドによる感染症としてはニューモシスチス肺炎がも最も重要です。
ニューモシスチス肺炎の予防についてはバクタ(ST合剤)の記事をお読みください。
その他の感染症についても容量依存性にリスクが高くなります。
ただ、不思議なことに免疫抑制剤の併用を行っても感染リスクは上昇しなかったという報告もありますので、ステロイドがなかなか減らせない症例ではだらだらと継続するのではなく免疫抑制剤の検討が望ましいかと思います。
インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンなども積極的に薦めるべきです。
ステロイド潰瘍(胃潰瘍)について
ステロイド潰瘍の予防のためにはガスターなどのH2阻害薬ではなく、プロトンポンプインヒビター(PPI)の投与が必要です。
ステロイド治療の全例へのPPI予防投与は不要ですが特に65歳以上でNSAIDsとの併用を行う場合にリスクが高くなるためその場合には併用がよいかと思います。
高齢者ではバイアスピリンを飲んでいる方も多いのでその場合にもPPIの併用が必要です。
その他の注意事項
この記事で述べた以外にもステロイドには様々な副作用がありますので、副作用対策としては、可能な限りステロイドを漸減するのが大前提です。
そして感染予防のためのスタンダードプリコーション指導など、基本的なことが非常に効果がありますので面倒くさがらずキチンと指導するのも処方する側の責任だと思います。